本当に愛しているのは彼女だと、旦那様が愛人を屋敷に連れてきました

小倉みち

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序章

結婚初日

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 良い関係性だと思っていた。


 私とダニエルは、本来の身分こそ大きく違えど、貴族同士の婚約関係。

 恋愛関係ほど蜜ではないけど、お互いを大切に思い合う中だと。


 きっと結婚しても、子どもが生まれても、穏やかな日々を送ることが出来るだろう。


 そう思っていた。


 ――しかし。

 そんな、これからの幸せに心を躍らせていた私に向かって、ダニエルは耳を疑うような言葉を言い放った。


「僕には、ほかに愛する人がいる」


 結婚初夜のこと。

 これから夫婦としてやっていくというときに、彼ははっきりとそう言った。


「あ、愛する人……?」


 青天の霹靂だった。


 衝撃的な事実を突きつけられ、私は動揺する。


「ああ。君も知っての通り、僕は君と婚約する前、1人の女性を愛していた」

 ダニエルは言う。

「彼女と僕は、相思相愛だった。しかし彼女とは、僕の両親と国王陛下の力によって、無理やり引き裂かれてしまったんだ」


 もちろん、よく知っている。

 それが前提で、私とダニエルは婚約したのだ。


 ダニエルに、その女性のことをきっぱり諦めてもらうために。


「それでもなお、僕は彼女を愛している。君じゃなく、彼女だけを」


 だから君を愛することが出来ない、とダニエルは言った。


「ええっと……」


 私は困惑気味に尋ねる。

「つまり、愛人ということですか……?」

「その呼び方は辞めてくれ」


 彼は顔をしかめる。

「彼女と僕は、運命の関係なんだ。確かに正妻は君だが、彼女は僕のやましい心による産物じゃない。ちゃんと愛し合っている」


 だからそれを「愛人」と呼ぶのでしょう。

 そう思ったが、口には出さなかった。


 それよりも、さらに大きな爆弾を投げつけられたからだ。


「彼女と僕には、もう子どももいる」
 
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