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案内状

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 そんなある日のこと。


 珍しく、私に手紙が届いた。


「では、確かにお渡ししましたので」

 冷淡な顔の執事はそう言うと、すぐに私の部屋から出ていった。


 私はその手紙の主を確認する。

 
 細かな装飾の施された、金色の押印。

 これは、王家の紋章だ。


 王家からだなんて、一体なんの用なのだろうか。


 私は一応第二王子の婚約者だが、ほとんど存在をなかったことのようにされてしまっている。


 本来であれば、王子の婚約者として出席しなければならないような行事さえ、1回も呼ばれたことがない。


 その理由を聞いたことは一度もないけれど、返ってくる答えなら簡単に想像出来る。


 きっと私の婚約者は、ゴミを見るような目つきでこう言うだろう。


「お前みたいなおぞましい婚約者を、誰が公の場で出すか」


 私の代わりに、一体誰が「婚約者」を務めているのかは知らない。

 だけどその人は、少なくとも私よりも遥かに美しい人なのだろう。


 嫌なことを思い出し、私はさらに気分が悪くなった。


 大きくため息をつき、思い切って手紙を開ける。

 手紙と、数週間後に開催されるパーティの案内状だった。


 そこに書かれていたのは、たったの1行。


「パーティには絶対に参加しろ」


 それだけ。


 その乱暴な字には見覚えがあった。


 私の婚約者のものだ。


 予想通り、手紙の最後には彼の名前が書かれていた。


 私は首をかしげる。


 どうしたというのだろうか。

 あんなに私がパーティに出席するのを嫌がっていた殿下直々に、そう言われるなんて。


 嫌な予感がした。


 何か裏がある気がする。

 あの男が私にアクションを取るときは、たいてい侮辱か嘲笑が目的。


 案内されたパーティは、明らかに何かの罠であるような雰囲気を醸し出している。


 しかし、断ることは許されない。

 誘ってきたのは、私の婚約者だ。


 断れば、婚約者に対して不義理だと罵られるのだろう。


 それに、王族の「命令」を無視するわけにもいかない。


 ……憂鬱だわ。


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