生き別れの兄が魔法使いだった

小倉みち

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プロローグ

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 世の中って、本当に不平等だと思う。


 正しいことをすれば、良いことをすれば、きっと幸せになれるって人は言うけれど。

 常にそうではないことを、私はこの17年間でしかと思い知らされた。


「花ちゃん……」


 私は後ろを振り返る。


 近所のおばさんたちが、私に同情の視線を送っている。


「花ちゃん」


 彼女たちは、私と視線が合うなり、ボロボロと大粒の涙を流した。

「花ちゃんっ……、花ちゃんっ……」

「可哀想にっ」

「まだ高校生なのにねぇ」


 このおばさんたち、根は良い人なんだろうけどな。

 けど、身内が泣いてないのに、その身内の前でよく泣けるわね。

 可哀想って、何よ。


 私は自分でもびっくりするくらい冷静に、おばさんたちが濡らす床を見つめた。


 あーあ、これ、染みになんないかな。

 多分この家、私の持ち物になるんだから。

 勝手に汚さないでほしいよね。


 ていうか、凄いよね。

 齢17歳で、自分の家が持てるなんて。

 大金持ちじゃん。


 お父さんとお母さんのことだから、私にそれなりのお金を残していると思うし。

 多分、高校くらいは卒業できる。


 大学はどうしよう。

 もし奨学金はもちろん貰うけど。

 バイトで生活費と授業料ってちゃんと賄えるかしら。


 あれ?

 でも、子どもが一人暮らしって出来るんだっけ?


 多分、こんな状況に置かれた子どもにしてはすごく冷静なんだと思うけど。


 それでも、頭の中は荒波みたいにぐちゃぐちゃだった。


 今どうでも良いことが、ぐるぐると頭の中で駆け巡っている。


「花ちゃん……?」

 固まって動かない私に向かって、おばさんたちは恐る恐る声をかける。


「どうしたの? 大丈夫?」


 私は首を横に振り、おばさんたちに、

「近所の皆さんが来ていただけて、両親もとても喜んでいると思います」

 と、形ばかりのお礼を言い、もう一度両親の方を向く。


 お葬式だった。

 私の両親の。

 数日前、交通事故に巻き込まれて死んだ両親の。


 遺影の両親は、にこにこと微笑んでいた。

 私の記憶の中の両親も、いつも朗らかな笑みを浮かべていた。


 私はその笑顔がとても好きだった。

 だけど、今は――。


 みんなが泣き荒ぶ中、その元凶である2人はにこにこと笑っている。


 それが滑稽に思えた。

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