生き別れの兄が魔法使いだった

小倉みち

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第1章

大人

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 私は何度も目を擦って、目の前の事実が本当に事実か確認する。


 しかし、やはり虐めている側は小学校低学年の男子で、虐められている側は成人男性だった。


 何やってんだろう。

 あの人。


 あの程度の子どもの力なら、私でもどうにか出来ると思うんだけど。


 子どもに暴力を振るいたくないという気持ちの表れなのか。

 いや、そうに決まっている。


 そうじゃなきゃ、あんなにボコボコにされても抵抗しないわけが――。


「辞めて! 辞めてくださいよ!」

「ギャハハハハハハハ!」

「バーカ、バーカ!」

「死ね!」


 ……口が悪いなあ。

 どこで覚えてくるんだろうか。


 でも、私が小学生のときとそう変わらないか。


 あのくらいの年で、なぜか汚い言葉をマスターする子どもたちは一定数いた気がする。


「痛い、痛い、痛いよお!」

「ざまあみろ!」

「このクソ野郎!」

「さっさとくたばれ!」


 男の声が、どんどん涙ぐんでいく。


 それに気づいた子どもたちが、どんどんどんどん調子に乗っていく。


「痛い、痛いってばっ」


 彼が腕を伸ばし、子どもたちの足を掴もうともがいた。


 しかし、気づいた男子のうちの1人がその足を踏んだ。

 その痛みでまた男は悲鳴をあげる。



 ……あーあ。

 なんか、めちゃくちゃ可哀想になってきた。


 なんかこう、本当に可哀想。


 それに、そろそろ彼らを止めなくちゃいけない。


 あのくらいの年の子って、喧嘩でもなんでもそうだけど、誰かが止めないと歯止めが利かなくなる。


 でも私が単身で止めようとしても、こっちに攻撃が向かってくるかもしれないっていうのは嫌だし。


 ――そうだ。


 私は咳払いして声を若干高くした。


「あれ!? 山田さんちの奥さんじゃないですか! お久しぶりですぅ。そうだ、ちょうどここに公園がありますし、ここでお話でもしていきませんかぁ!」


「げっ。山田のババアかよ」

「あいつ、マジで怖えんだよな」

「さっさとずらかろうぜ!」


 ドタドタという足音が、公園から遠ざかっていった。


 ……ごめんなさい。

 山田の奥さん。


 彼女はこの界隈で、トップクラスに怖いババアとして有名だ。

 私も何度か叱られたことがある。


 そのババアの権力を笠に着て、私は小学生を公園から追い出すことに成功した。


 低木の陰から彼らがいなくなったのを確認すると、私はその男に恐る恐る近づく。


「あ、あの……」


 しくしく泣いている男の身体を揺さぶった。

「大丈夫ですか?」


 男は泣きながら答える。

「大丈夫じゃないですぅ……っ」

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