生き別れの兄が魔法使いだった

小倉みち

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第3章

学校

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「おはよー、花」

「おはよ」


 朝。

 いつも通り憂鬱な月曜日が始まる。


 死んだ魚のような目をした生徒たちが、群れをなして校舎に入っていく。

 みんな猫背で、ぼんやりと霞んだ顔。


 月曜日の絶望に彩られたそれが、この国における日常風景だ。


 その中には当然、私も含まれている。


「ふわぁ……」

 友人の真奈美が大きく欠伸をした。

「いやもう、マジで眠い。なんで月曜日なんかあるんだろう」

「本当それ。眠いよねぇ」


 私も真奈美に釣られて欠伸をする。


「そう言えばさ、昨日のメール見た?」

「昨日?」

「やっぱり見てないか」


 真奈美は苦笑する。

「えっ、マジ? なんか送って来てたの?」


 私は慌ててスマホを取り出し、メールの欄を確認する。


 ――確かに来てた。

 時刻は昨日の深夜。


 この世界に戻って来てからみたいだ。


「明日の数学のもしかしたら当たるかもしんない。ごめんだけど、ここの答え教えてくれない?」


 というメッセージ。


 完全に寝てたせいか、全く気づかなかった。


「ごめんごめん」

 私は謝罪する。

「昨日ちょっと忙しくてさ。夜送ってくれたんだよね? 気づかなかった」

「えっ、夜? 昼に送ったんだけど」

「えっ」


 もう一度メールを見る。

 が、時間はさっきと変わっていない。


 なんだろう。

 通信障害でもあったっけ?


 ……あっ。

 そう言えば私、異世界にいたわ。


 あそこ、そもそも電波ないからメールも電話もやり取り出来ないの、すっかり失念してた。


「あーごめん。電波の届かないところにいて」

「花、昨日何してたの?」

「えーっと、兄のところに隔離されてて。あまりにも田舎過ぎて、ちょっと電波繋がんないんだよね」

「兄? 花ってお兄ちゃんいたんだ?」

「うんまあ。離れて暮らしてたんだけど」

「へぇ」


 これはヤバいな。

 完全にネックだ。


 真奈美は全然気にしてないみたいだけど、今後こういうことがあったら普通に困る。

 下手すれば、友人関係に軋轢が生じるかもしれない。

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