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第3章
疲労
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月曜日は、かなり疲れる。
考えても見てほしい。
平日5日間、毎日朝から夕方まで出ずっぱりで頭や体力を消費し続けているのに、たった2日間でその分の疲労を解消出来るとか本当にそう思えるのだろうか。
学生もそうだし、社会人だって死んだような顔で町を歩いているのに。
うちの担任の女性教師なんて、
「面倒くさい」
みたいな疲れ切った顔で教室にやってくる。
月曜日があまりにも嫌なせいか、声が小さ過ぎて全然聞き取れない。
まあ、担任の言うことなんてほとんどみんな聞き流してるから、別に良いんだけど。
ただまあ、私は普段よりも多少月曜日が楽しみではあった。
ほんの少しだけだが。
そう、数学の時間だ。
あのクソみたいに眠くてだるい授業は、まさかの5時限目。
学校は私たちを寝させにかかっているのではないだろうかと思うくらい、マジで最悪な時間帯。
しかし、今日の私は一味違う。
バーナードに、しっかりと数学の基礎を叩きこんでもらったのだ。
おかげで、あの林という最悪な先生に、
「なんで解けないんだ? だいたいお前たちのクラスはな――」
と、わけのわからない理屈で全体責任になるという戦犯にならずに済んだ。
私はクラスの中でも、比較的大人しい性格。
あまり目立たないタイプの生徒が、教室で必要以上に教師から怒鳴られている様は、想像するだけで鳥肌だ。
……まあ、結局別の生徒が問題に答えられなかったせいで、威圧感たっぷりの説教から逃れることは出来なかったが。
「……マジで疲れたぁ」
「本当、それ」
数学が終わった後の休み時間、私は真奈美と愚痴を言い合った。
「あの先生、わけわかんないこと言ってないで授業進めれば良いのに」
「マジでそれな。授業が進まないって私らにキレるけど、そもそもそれって林がずっとキレてるから遅くなってるだけじゃん」
「わかる――あー、次って現文だっけ?」
「そうそう。公民と入れ替わったんでしょ? 寝れるわー」
「寝るな(笑)」
私たちが談笑していると、
「マジだりぃよな。林」
と、クラスの男子――武田君が絡んできた。
この男は、クラスの中でも騒がしいグループに属している。
スクールカースト上位勢のおかげが、先ほどの林先生の怒りの元凶が彼であっても、武田君本人に生徒たちからバッシングが来ることはない。
羨ましいよ、まったく。
「あんな問題解けるわけないってのに」
「あはは」
私は苦笑した。
武田君とは、そんな世間話をする関係じゃないんだけど。
急にどうしたんだろう。
「つーか、星野さん」
武田君は私に言った。
「さっきの問題、よく解けたな」
「あー……」
武田君が言っているのは、先ほど私が林先生に当てられた問題のことだ。
感覚的に、クラスメイトたちが解いたものよりも難しかった気はする。
「まあ、まぐれだけど」
「嘘だぁ。前まで、俺と同じくらい数学出来てなかったじゃん」
クソッ。
まさか関わりのない武田君にまでそう思われていたとは。
「もしかして、塾通い始めたとか? どこ?」
「いや、塾なんて言ってないよ。そんなお金ないし……」
というところまで言ってしまい、そのせいで武田君と真奈美の顔が同情で歪んでしまう。
ちょっと後悔。
「兄の知り合いが得意で。昨日見てもらったんだよね?」
「あの田舎住まいの?」
と、真奈美。
「そうそう。暇だったから」
「へぇ。羨まし」
武田君は身体をくねらせる。
「ねぇ、星野さん。お兄さんの知り合いにあわせてよぉ。数学教えてほしいぃ」
「あはははは」
本気で言っているのか、いや、絶対そうじゃないな。
ふざけてるし。
私はただ苦笑いして、その場をやり過ごした。
考えても見てほしい。
平日5日間、毎日朝から夕方まで出ずっぱりで頭や体力を消費し続けているのに、たった2日間でその分の疲労を解消出来るとか本当にそう思えるのだろうか。
学生もそうだし、社会人だって死んだような顔で町を歩いているのに。
うちの担任の女性教師なんて、
「面倒くさい」
みたいな疲れ切った顔で教室にやってくる。
月曜日があまりにも嫌なせいか、声が小さ過ぎて全然聞き取れない。
まあ、担任の言うことなんてほとんどみんな聞き流してるから、別に良いんだけど。
ただまあ、私は普段よりも多少月曜日が楽しみではあった。
ほんの少しだけだが。
そう、数学の時間だ。
あのクソみたいに眠くてだるい授業は、まさかの5時限目。
学校は私たちを寝させにかかっているのではないだろうかと思うくらい、マジで最悪な時間帯。
しかし、今日の私は一味違う。
バーナードに、しっかりと数学の基礎を叩きこんでもらったのだ。
おかげで、あの林という最悪な先生に、
「なんで解けないんだ? だいたいお前たちのクラスはな――」
と、わけのわからない理屈で全体責任になるという戦犯にならずに済んだ。
私はクラスの中でも、比較的大人しい性格。
あまり目立たないタイプの生徒が、教室で必要以上に教師から怒鳴られている様は、想像するだけで鳥肌だ。
……まあ、結局別の生徒が問題に答えられなかったせいで、威圧感たっぷりの説教から逃れることは出来なかったが。
「……マジで疲れたぁ」
「本当、それ」
数学が終わった後の休み時間、私は真奈美と愚痴を言い合った。
「あの先生、わけわかんないこと言ってないで授業進めれば良いのに」
「マジでそれな。授業が進まないって私らにキレるけど、そもそもそれって林がずっとキレてるから遅くなってるだけじゃん」
「わかる――あー、次って現文だっけ?」
「そうそう。公民と入れ替わったんでしょ? 寝れるわー」
「寝るな(笑)」
私たちが談笑していると、
「マジだりぃよな。林」
と、クラスの男子――武田君が絡んできた。
この男は、クラスの中でも騒がしいグループに属している。
スクールカースト上位勢のおかげが、先ほどの林先生の怒りの元凶が彼であっても、武田君本人に生徒たちからバッシングが来ることはない。
羨ましいよ、まったく。
「あんな問題解けるわけないってのに」
「あはは」
私は苦笑した。
武田君とは、そんな世間話をする関係じゃないんだけど。
急にどうしたんだろう。
「つーか、星野さん」
武田君は私に言った。
「さっきの問題、よく解けたな」
「あー……」
武田君が言っているのは、先ほど私が林先生に当てられた問題のことだ。
感覚的に、クラスメイトたちが解いたものよりも難しかった気はする。
「まあ、まぐれだけど」
「嘘だぁ。前まで、俺と同じくらい数学出来てなかったじゃん」
クソッ。
まさか関わりのない武田君にまでそう思われていたとは。
「もしかして、塾通い始めたとか? どこ?」
「いや、塾なんて言ってないよ。そんなお金ないし……」
というところまで言ってしまい、そのせいで武田君と真奈美の顔が同情で歪んでしまう。
ちょっと後悔。
「兄の知り合いが得意で。昨日見てもらったんだよね?」
「あの田舎住まいの?」
と、真奈美。
「そうそう。暇だったから」
「へぇ。羨まし」
武田君は身体をくねらせる。
「ねぇ、星野さん。お兄さんの知り合いにあわせてよぉ。数学教えてほしいぃ」
「あはははは」
本気で言っているのか、いや、絶対そうじゃないな。
ふざけてるし。
私はただ苦笑いして、その場をやり過ごした。
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