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第4章
試食
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ウル殿下の開始の合図とともに、チョコレート試食会が開始された。
続々と集まる各国の商人たちと、その妻。
彼らは私と殿下にそれぞれ挨拶をした後、気の赴くままにテーブルに飾られたチョコレートを試食する。
始め、彼らは困惑しているふうだった。
「これが、チョコレートですか……」
「初めて見ましたよ」
「なんというか、凄く茶色いですね」
「細かな装飾がなされていますが、これは本当に食べることが出来るんですか?」
そう疑問に思うのも無理はない。
今回のチョコレートは、彼らにとっては未知の食材。
しかも、色は茶色。
お世辞にも、見た目はほかのお菓子みたいに美味しそうであるとは言えない。
「ええ、もちろんです」
私は笑顔で答える。
「私も食べましたが、凄く美味しかったですよ。甘くてほんのり苦くて、まるでオーケストラの奏でる旋律のような、美しい味です」
「なるほど……。ブローディア国の姫がそこまでおっしゃるなら」
どうやら、ブローディア国王女という肩書には、かなりの信頼がおかれているらしい。
「ねぇ、あなた!」
妻が、興奮した声で自分の夫に声をかける。
「これ、美味しいわ! 食べてみてちょうだい」
彼女の手のひらには、コック長が「天の川」をイメージして作ったという試作品が乗せられていた。
「ああ」
商人は頷く。
「わかった――では、妻が読んでおりますので失礼いたします」
「ええ、ごゆっくりどうぞ」
試食会の開催時間、私と殿下はホストらしく挨拶や試食品の手配に忙しく、実際の試食会の手ごたえがどうなのか知る由もなかった。
しかしその試食会が終了し、お土産に好きな商品を無料で彼らに手渡した際、
「素晴らしいお菓子でした」
「きっと我が国でのヒット商品となるでしょう」
「ぜひまた買いに来ますわ」
「貿易出来ないのが残念ですが」
「また近いうちにお伺いします。そのときはぜひ、詳しい商談をいたしましょう」
と、かなり気に入った様子を見せていた。
まあ、ブローディアのせいでいろいろ表で動くことの出来ない中、チョコレートがパイナップルと同じくらい売れるかどうかについて不安はありつつも、今回の試食会はおおよそ成功ということで幕を閉じたのであった。
続々と集まる各国の商人たちと、その妻。
彼らは私と殿下にそれぞれ挨拶をした後、気の赴くままにテーブルに飾られたチョコレートを試食する。
始め、彼らは困惑しているふうだった。
「これが、チョコレートですか……」
「初めて見ましたよ」
「なんというか、凄く茶色いですね」
「細かな装飾がなされていますが、これは本当に食べることが出来るんですか?」
そう疑問に思うのも無理はない。
今回のチョコレートは、彼らにとっては未知の食材。
しかも、色は茶色。
お世辞にも、見た目はほかのお菓子みたいに美味しそうであるとは言えない。
「ええ、もちろんです」
私は笑顔で答える。
「私も食べましたが、凄く美味しかったですよ。甘くてほんのり苦くて、まるでオーケストラの奏でる旋律のような、美しい味です」
「なるほど……。ブローディア国の姫がそこまでおっしゃるなら」
どうやら、ブローディア国王女という肩書には、かなりの信頼がおかれているらしい。
「ねぇ、あなた!」
妻が、興奮した声で自分の夫に声をかける。
「これ、美味しいわ! 食べてみてちょうだい」
彼女の手のひらには、コック長が「天の川」をイメージして作ったという試作品が乗せられていた。
「ああ」
商人は頷く。
「わかった――では、妻が読んでおりますので失礼いたします」
「ええ、ごゆっくりどうぞ」
試食会の開催時間、私と殿下はホストらしく挨拶や試食品の手配に忙しく、実際の試食会の手ごたえがどうなのか知る由もなかった。
しかしその試食会が終了し、お土産に好きな商品を無料で彼らに手渡した際、
「素晴らしいお菓子でした」
「きっと我が国でのヒット商品となるでしょう」
「ぜひまた買いに来ますわ」
「貿易出来ないのが残念ですが」
「また近いうちにお伺いします。そのときはぜひ、詳しい商談をいたしましょう」
と、かなり気に入った様子を見せていた。
まあ、ブローディアのせいでいろいろ表で動くことの出来ない中、チョコレートがパイナップルと同じくらい売れるかどうかについて不安はありつつも、今回の試食会はおおよそ成功ということで幕を閉じたのであった。
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