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電話
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私はユーリが屋敷を去ってから、我慢出来ずにマーサに電話をした。
「どうしたの?」
昼寝でもしていたのか、彼女の声は少し眠そうだった。
「それが、さっきまでユーリがこの屋敷に来てたのよ」
「は? なんで?」
「仲直りしよう、だってさ」
私は一部始終をすべて彼女に伝える。
「……」
「それで、あいつが私の手の甲にキスしたのよ」
「……手、洗った?」
「洗ったわ。擦り過ぎて手の甲が真っ赤になっちゃったけど。ちょっとヒリヒリする」
「……気持ち悪、あいつ」
マーサは吐き捨てるように言った。
「頭おかしいんじゃないの」
「おかしいというか、私がユーリのこと好きだって信じてやまないみたいね」
「それが頭おかしいのよ――あなたの言動を知ってて、それを知ったうえで、自分のことが好きだって言ってんでしょ」
「そう、それに私とヒメナが仲良く出来るはずだって」
「なんで?」
「……ヒメナと私が、ユーリを好きだという共通点があるから、っていうのが彼の理論よ」
「凄まじい考え方ね」
マーサは嘆息した。
「それで、あれの件は言ってきて来なかったの?」
「あれって、パトリックの件のことよね?」
「ええ、そう」
私は首を横に振る。
電話越しの彼女には見えていないけど。
「いいえ、何も言わなかったわ」
「本当に何も?」
「ええ――一応警察に疑われたくないから、ボイスレコーダーで全部の内容は録音してるけど」
「まあそれは大事よね。私たちが、犯人はユーリじゃないのかって言いだしたのに、隠れて会ってたりなんかしたらめちゃくちゃ疑われるわよ」
「それにしても」
私は壁にもたれかかる。
「なんでこんな目に合わなくちゃならないのかしら、私たち。毒事件に巻き込まれるなんて」
「えー、まずはパトリックと深く関わるようになったから、ね」
「その理由は、ユーリがヒメナと浮気したからか……」
あーあ。
結局あの男のせいか。
全部。
私はあいつと金輪際関わりたくないのに。
どうしてこうなるのか。
「それより、あの話がないってことは変ね」
と、マーサ。
「もしかして、あの2人が犯人じゃないかもしれないわよ」
「かもね――でも、それは警察が調査することよ。私たちじゃない」
「ウェンディ、かなり疲れてるみたいね」
「うん」
私は首を縦に振った。
「今日はもう寝たら良いわ。明日も学校があるし」
「そうね。そうする――話を聞いてくれてありがとう」
「どういたしまして。じゃあね。また明日」
「うん。バイバイ」
私はそう言って、通話を切った。
「どうしたの?」
昼寝でもしていたのか、彼女の声は少し眠そうだった。
「それが、さっきまでユーリがこの屋敷に来てたのよ」
「は? なんで?」
「仲直りしよう、だってさ」
私は一部始終をすべて彼女に伝える。
「……」
「それで、あいつが私の手の甲にキスしたのよ」
「……手、洗った?」
「洗ったわ。擦り過ぎて手の甲が真っ赤になっちゃったけど。ちょっとヒリヒリする」
「……気持ち悪、あいつ」
マーサは吐き捨てるように言った。
「頭おかしいんじゃないの」
「おかしいというか、私がユーリのこと好きだって信じてやまないみたいね」
「それが頭おかしいのよ――あなたの言動を知ってて、それを知ったうえで、自分のことが好きだって言ってんでしょ」
「そう、それに私とヒメナが仲良く出来るはずだって」
「なんで?」
「……ヒメナと私が、ユーリを好きだという共通点があるから、っていうのが彼の理論よ」
「凄まじい考え方ね」
マーサは嘆息した。
「それで、あれの件は言ってきて来なかったの?」
「あれって、パトリックの件のことよね?」
「ええ、そう」
私は首を横に振る。
電話越しの彼女には見えていないけど。
「いいえ、何も言わなかったわ」
「本当に何も?」
「ええ――一応警察に疑われたくないから、ボイスレコーダーで全部の内容は録音してるけど」
「まあそれは大事よね。私たちが、犯人はユーリじゃないのかって言いだしたのに、隠れて会ってたりなんかしたらめちゃくちゃ疑われるわよ」
「それにしても」
私は壁にもたれかかる。
「なんでこんな目に合わなくちゃならないのかしら、私たち。毒事件に巻き込まれるなんて」
「えー、まずはパトリックと深く関わるようになったから、ね」
「その理由は、ユーリがヒメナと浮気したからか……」
あーあ。
結局あの男のせいか。
全部。
私はあいつと金輪際関わりたくないのに。
どうしてこうなるのか。
「それより、あの話がないってことは変ね」
と、マーサ。
「もしかして、あの2人が犯人じゃないかもしれないわよ」
「かもね――でも、それは警察が調査することよ。私たちじゃない」
「ウェンディ、かなり疲れてるみたいね」
「うん」
私は首を縦に振った。
「今日はもう寝たら良いわ。明日も学校があるし」
「そうね。そうする――話を聞いてくれてありがとう」
「どういたしまして。じゃあね。また明日」
「うん。バイバイ」
私はそう言って、通話を切った。
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