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話③

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「一体全体、誰があんたのことを好きって言ったかしら?」

 私は出来るだけ怒りを抑えて冷静に尋ねようとした。


 だが、その声が若干震えていることに気づく。

「い、言われてはいないが」

「言ってないわよね。なら、どうしてそんなふうに思うわけ?」

「言われてはないけど、わかる。君の気持ちは」

「は?」

「だって俺たちは幼馴染だ。長い間一緒に過ごしてきた仲だ。だから、俺にはわかる。本当は、君は俺のことが好きなんだ。だけど君はその気持ちが破れて悲しんでいる。だから君は俺に怒っている。そうだろ?」


 なんだろう。

 本当に腹が立つ。


 今すぐこの目の前のアホを殴り飛ばしてやりたい。


 令嬢じゃなきゃ、公爵家の人間じゃなきゃ、絶対やってた。


「……返事がないってことは、そういうことなんだな」

 ユーリは、私が無言なのを見て確信したらしい。


 満足げに頷いた。


「やっぱり、君は俺のことが好きなんだ。……気にしなくても良い。今、俺とヒメナは恋愛をしている。だが、結婚するのは君だ。君は今、俺とヒメナに対する嫉妬で怒り狂っていることだろう。夜も眠れないのだろう。だけど、安心してほしい。僕と結婚するのは君だ。ヒメナじゃない」


 唖然としている私の手を取り、ユーリは手の甲にキスをした。

 その動作が自分に酔っていてナルシストで、ともかく気持ち悪くてゾッとした。


「心配しなくても良い。ウェンディ。婚約のことに関しては、俺から両親に掛け合ってみるよ。大丈夫だ。俺は君のためなら両親に殴られるのだって平気だ」


 ユーリはそう言って、屋敷から立ち去った。


 私はあっけにとられて、しばし口を開けたままその場に突っ立った。


 
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