ヤンデレ王子とだけは結婚したくない

小倉みち

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第1章

庭園

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 彼らが向かった先には、なんとなく察しがついていた。


 パーティ会場を出た少し先に、庭園があった。

 色とりどりの花々が育てられている、それはそれは美しい庭園らしいのだが。


 今は季節外れなので、人もいず閑散としている。


 面倒な大人や邪魔な使用人たちのいない、事を進めるにはうってつけの場所だと考えるのだろう。


 10歳の嫌味ったらしい子どもの考えることなど、たかが知れている。


 私は大人たちの目をかいくぐって、とりあえず庭園に向かうことにした。


 令嬢たちの思惑に乗せられた感じはすごく腹が立つけど。


 マクシミリアン殿下の婚約者として。

 中身は大人である立場として。


 こういう面倒な処理も、しなくちゃいけない。

 今も、そしてこれからもずっと。


 婚約破棄するかされるまで、永遠に。


 本当、ますます原作の悪役令嬢ハリエットに同情してしまう。


 こんなストレスだらけの環境でよく生活出来てたなあ。

 ……まあ、出来てなかったんだから処刑されたんだけど。


 子どもの養育環境としては、全く相応しくない場所だわ。


 今は生き残るのが最優先だけど、もし結婚して子どもを産むことになったら、貴族籍から抜けることも視野に入れておいた方が良いかもしれない。


 ――気を取り直して。


 すっかり緑1色で人気のない庭園を、私は忍び足で進む。


 手には、一応持ってきた魔法石。

 なんの機能も持たない石ころだけど、ここにうまく魔力を注げば、映像や音声を記録することが出来るらしい。


 ログを見るためのゲーム上の設定として、こういうものがあった。

 同じ世界観なら、多分私でも出来るだろう。


 何かの役に立つかもしれないと、ずっと忍ばせておいたのだ。


 10年後くらいに、

「王子を虐めた」

 なんていう悪評を立てられたとき、証拠を見せるために使えるだろうと思っていたけれど。


 意外とこういう場合にも役立ちそうで良かった。

 


 
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