夫と親友が、私に隠れて抱き合っていました ~2人の幸せのため、黙って身を引こうと思います~

小倉みち

文字の大きさ
3 / 5

会場

しおりを挟む
 定期的に開催される、王妃陛下主催のパーティ。


 彼女にとってはお遊びみたいなものでも、我々貴族にとってそうではないのは確かだ。


 貴族であることのプライドを保つため、毎度毎度高級な贈り物を王妃に用意する。

 同じドレスを着れば、

「貧乏人」

 と、揶揄されるため、パーティ毎に新作のドレスを準備しなければならない。


 貴族にとっても王家にとってもかかる金銭は馬鹿にならないから、確かにジェフリーの言う通りではある。


 しかし、みんな意地になって莫大な金銭を湯水のように使う――そういうパーティ会場に、私たちは足を踏み入れた。


 煌々と眩しい会場に入ると、すぐ誰かが近づいてきた。


「ティアナ、ジェフリー!」

 明るい声で、私たちの名前を呼ぶ美しい令嬢――親友のブレンダだ。

「久しぶりね!」

「ブレンダ!」

 学園にいたころのようにはしゃぎながら、私も彼女に近づいた。

「久しぶりね! 元気にしてた? 仕事は順調?」

「もちろん元気よ。仕事も順調。ありがたいことにね」

 ブレンダは微笑む。

「毎日楽しいわ」


 今度は、ブレンダはジェフリーの方へ顔を向ける。


「久しぶりね、ジェフリー。あなたはどう?」

「ああ、まあ」

 ジェフリーは苦笑いする。

「まあ、普通かな」

「そう。とりあえず元気そうで良かったわ」


 彼女はいつも楽しそうだ。


 それもそのはず。


 学園を卒業してからというもの、ブレンダは念願かなって近衛兵になった。

 この世界では、女性が武術に秀でることを、あまり良しとしない。


 彼女の両親も周りもその意識があり、それゆえに近衛兵志願を大反対したそうだ。


 それを押し切って自分を夢を叶えた彼女は、毎日が本当に楽しいといったふうな様子。


 彼女は忙しいらしく、なかなか会う機会はないけれど。


 そんな親友のことを、私は誇らしく思っている。


「今日は近衛兵としてじゃなく、公爵令嬢として来たのね」

「ええ、そうよ――それがね、お父様とお母様が、

『いい加減相手を見つけろ』

 って」


 彼女は肩を竦めた。


「パーティで誰か探せって言うの。今まで一度も相手なんてほしいと思ったことないけど」

「そうなのね」


 彼女は公爵家の1人娘だ。

 ご両親も、跡継ぎがほしいのだろう。


「私に出来ることがあれば、なんでも相談してね」

 私は言った。


「……本当?」

「ええ、もちろんよ。だって親友じゃない」

「……そうね。私たち、親友だものね。うん、ありがとう」


 彼女の少し強張ったような笑顔。


 そのときは気にも留めなかったけれど。

 すぐに、私はその意味に気づくことになる。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

強面夫の裏の顔は妻以外には見せられません!

ましろ
恋愛
「誰がこんなことをしろと言った?」 それは夫のいる騎士団へ差し入れを届けに行った私への彼からの冷たい言葉。 挙げ句の果てに、 「用が済んだなら早く帰れっ!」 と追い返されてしまいました。 そして夜、屋敷に戻って来た夫は─── ✻ゆるふわ設定です。 気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

〖完結〗もうあなたを愛する事はありません。

藍川みいな
恋愛
愛していた旦那様が、妹と口付けをしていました…。 「……旦那様、何をしているのですか?」 その光景を見ている事が出来ず、部屋の中へと入り問いかけていた。 そして妹は、 「あら、お姉様は何か勘違いをなさってますよ? 私とは口づけしかしていません。お義兄様は他の方とはもっと凄いことをなさっています。」と… 旦那様には愛人がいて、その愛人には子供が出来たようです。しかも、旦那様は愛人の子を私達2人の子として育てようとおっしゃいました。 信じていた旦那様に裏切られ、もう旦那様を信じる事が出来なくなった私は、離縁を決意し、実家に帰ります。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 全8話で完結になります。

【完結】妻の日記を読んでしまった結果

たちばな立花
恋愛
政略結婚で美しい妻を貰って一年。二人の距離は縮まらない。 そんなとき、アレクトは妻の日記を読んでしまう。

愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。 そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。 相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。 トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。 あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。 ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。 そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが… 追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。 今更ですが、閲覧の際はご注意ください。

貴方の事なんて大嫌い!

柊 月
恋愛
ティリアーナには想い人がいる。 しかし彼が彼女に向けた言葉は残酷だった。 これは不器用で素直じゃない2人の物語。

貴方なんて大嫌い

ララ愛
恋愛
婚約をして5年目でそろそろ結婚の準備の予定だったのに貴方は最近どこかの令嬢と いつも一緒で私の存在はなんだろう・・・2人はむつまじく愛し合っているとみんなが言っている それなら私はもういいです・・・貴方なんて大嫌い

処理中です...