行方不明だった元婚約者が戻ってきたので、浮気三昧な現婚約者を捨てることにしました

小倉みち

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 私は廊下に出て、そのまま早歩きする。


 玄関から外へ出ようと思ったが、ちゃんと道順を覚えておらず、何度も同じ道を通っているような気がして、結局諦めた。

 近くに中庭があったので、代わりにそこへ立ち入らせてもらう。


 中庭は事務室と同じくシンプルだった。

 真っ白な小石が敷き詰められ、中央に細い木が植え付けられている。

 美しさを演出するためというものではなく、狭い場所に無理やり作った、おかしな雰囲気があった。


 私はその庭に設置されたベンチに座る。


 泣ける場所を見つけて安心したのか、私の目からはとめどなく涙が溢れ出てきた。


 ハンカチを取り出し、目に当てる。

 真っ白なレースの布は、たちまち灰色に染まっていった。


 ああ。


 私は嘆いた。


 これからどうしよう。


 一体私は、何に頼って生きていけば良いのか。


 婚約者のリアムは、きっとジニーを選ぶだろう。

 あの天真爛漫で世間知らずな彼女を選ぶのだろう。


 彼は、私を捨てることはしないはずだ。

 そうしたいと思っても、私たちの家の関係が崩れてしまう。


 だけど、これから先、彼が私を顧みることはないと思う。


 ジニーか、そうでないほかの女性が、きっと死ぬまで私の悩みの種なのだ。


 現実逃避。

 そう、私は現実逃避していたのだ。

 リアムの代わり、理想の婚約者の役割を勝手にランスに押し付けてしまっていたのだ。


 両親は、ランスは、私の浅はかさに気づいているだろうか。


 今は、合わせる顔がない。



「あの……」

 ふと声がして、私は瞬時に顔を上げた。


 泣きじゃくって気づいていなかったのだが、私の目の前に、先ほど案内してくれた局員が心配そうな顔で立っていた。


「大丈夫ですか?」


 私は慌てて涙を拭い、微笑む。


「ええ、大丈夫です。お見苦しいところをお見せしてすみません」


 局員は立ち去ろうとしなかった。


 おそらく、私を放置しておけないと思ったのだろう。


 ただ、この空間に気まずい空気が流れる。


「ど、どうでしたか?」


 先に口を開いたのは、向こうだった。

「えっ」

「彼に会ったのでしょう? お話出来ましたか?」

「え、ええ。まあ……」


 私は濁すことしか出来ない。

 ただ察しが良いのか、それとも予想していたのか、局員は話を続けた。


「驚いたでしょう。彼のこと」

「ええ……」


 否定する必要はない。

 私は素直に頷いた。


「保護した時もそうでした――なんというか、横暴な人間だと」

「そう、ですね……」

 私は答えた。


 だが、私は昔のランスのことを知っている。

 だから、目の前にいる彼のようにきっぱりとそのようなことは言えなかった。


「私たちが最初にみなさんを案内した時、少し申し訳なく思いました。期待されていらっしゃるようで。でも、彼を責めないで上げてください。彼は長い間不遇の日々を過ごしていたんです。ああいうふうに、性格が荒んでしまうのも無理はないでしょう」

「そうですね」


 私は頷いた。


「確かに、そうですね。私はランスに悪い意味で期待しすぎていました――今のランスを、ちゃんと受け入れたいと思います」

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