5 / 16
婚約破棄
しおりを挟む
「「「「は!?」」」」
驚く4人。
完全に初耳らしい。
「う、嘘をつけ! そんなはずは」
「いえ、本当ですわ。そんなどうでも良い嘘、私つきませんもの。ねえ、みなさん」
そう言って私は、周囲に視線を向ける。
貴族たちはみな、大きく首を縦に振った。
まるで、事前に示し合わせていたかのような、揃った動きであった。
「ほら、みなさんのところにも、その報告がいっているみたいですわ」
「それは嘘だ!」
と、父親。
「嘘ですよ。嘘に決まっているでしょう、殿下。なぜなら、我が家には届いていません」
「そうですわ、殿下」
母も言葉を重ねる。
「大方、ディーナが適当な嘘をついて、みなさんに手紙を送りつけたのよ。国王陛下の名前を騙って――ああ、なんて罪深い子どもなんでしょう!」
「申し訳ありません、皆様方。どうか、この馬鹿な娘を許してあげてください!」
騒ぎ立てる両親。
彼らに冷たい視線を送る貴族たち。
私はため息をつく。
私と王子を婚約破棄させたいと、先ほど声を大にしておっしゃっていたこの人たち。
それなのに、どうして既に婚約破棄をしているという点に、そこまで慌てているのだろうか。
本来求めていたそれが成しえているのであれば、彼らの目的は達成したはず。
本来であれば、驚いたり、拍子抜けしたりすることはあれど、あんなふうに焦る必要はない。
それなのに、なぜ彼らはあそこまで、
「嘘だ」
「ありえない」
と、叫ぶのか。
現時点で、私とヘンリー王子が婚約しているという事実を必要としているのか。
――それはつまり。
殿下と私が既に婚約破棄、つまりは赤の他人であっては困るからだ。
今回の事件の概要は、私が妹のマリーを虐めているということ。
要するに、あくまで家の中の問題である。
今巻き込まれている貴族たちには、全くもって関係のないことだ。
それを堂々と他の貴族や王族の眼前でさらけ出し、恥をかきまくっている存在こそが、私の家族である。
しかし、それを公の問題にすることが出来る1つの切り札があった。
それは、私が殿下の婚約者であること。
王子の婚約者の問題は、内々だけで片付けることは許されない。
王族は公であり、その婚約者も公でいなければならない。
彼らは、「王子の婚約者」が問題を起こした、という筋書きにすることで、私を貴族総出で袋叩きにしたいと考えていたのだろう。
だが今、彼らの作ったストーリーは瓦解した。
既に私と殿下の婚約が破棄されている今、彼らの目論見は大きく外れたのだ。
彼らはただ、自分たちの醜態を嬉々としてさらけ出す、とんでもなく愚かな家族として、貴族から捉えられている。
驚く4人。
完全に初耳らしい。
「う、嘘をつけ! そんなはずは」
「いえ、本当ですわ。そんなどうでも良い嘘、私つきませんもの。ねえ、みなさん」
そう言って私は、周囲に視線を向ける。
貴族たちはみな、大きく首を縦に振った。
まるで、事前に示し合わせていたかのような、揃った動きであった。
「ほら、みなさんのところにも、その報告がいっているみたいですわ」
「それは嘘だ!」
と、父親。
「嘘ですよ。嘘に決まっているでしょう、殿下。なぜなら、我が家には届いていません」
「そうですわ、殿下」
母も言葉を重ねる。
「大方、ディーナが適当な嘘をついて、みなさんに手紙を送りつけたのよ。国王陛下の名前を騙って――ああ、なんて罪深い子どもなんでしょう!」
「申し訳ありません、皆様方。どうか、この馬鹿な娘を許してあげてください!」
騒ぎ立てる両親。
彼らに冷たい視線を送る貴族たち。
私はため息をつく。
私と王子を婚約破棄させたいと、先ほど声を大にしておっしゃっていたこの人たち。
それなのに、どうして既に婚約破棄をしているという点に、そこまで慌てているのだろうか。
本来求めていたそれが成しえているのであれば、彼らの目的は達成したはず。
本来であれば、驚いたり、拍子抜けしたりすることはあれど、あんなふうに焦る必要はない。
それなのに、なぜ彼らはあそこまで、
「嘘だ」
「ありえない」
と、叫ぶのか。
現時点で、私とヘンリー王子が婚約しているという事実を必要としているのか。
――それはつまり。
殿下と私が既に婚約破棄、つまりは赤の他人であっては困るからだ。
今回の事件の概要は、私が妹のマリーを虐めているということ。
要するに、あくまで家の中の問題である。
今巻き込まれている貴族たちには、全くもって関係のないことだ。
それを堂々と他の貴族や王族の眼前でさらけ出し、恥をかきまくっている存在こそが、私の家族である。
しかし、それを公の問題にすることが出来る1つの切り札があった。
それは、私が殿下の婚約者であること。
王子の婚約者の問題は、内々だけで片付けることは許されない。
王族は公であり、その婚約者も公でいなければならない。
彼らは、「王子の婚約者」が問題を起こした、という筋書きにすることで、私を貴族総出で袋叩きにしたいと考えていたのだろう。
だが今、彼らの作ったストーリーは瓦解した。
既に私と殿下の婚約が破棄されている今、彼らの目論見は大きく外れたのだ。
彼らはただ、自分たちの醜態を嬉々としてさらけ出す、とんでもなく愚かな家族として、貴族から捉えられている。
13
あなたにおすすめの小説
私が嫌いなら婚約破棄したらどうなんですか?
きららののん
恋愛
優しきおっとりでマイペースな令嬢は、太陽のように熱い王太子の側にいることを幸せに思っていた。
しかし、悪役令嬢に刃のような言葉を浴びせられ、自信の無くした令嬢は……
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
年に一度の旦那様
五十嵐
恋愛
愛人が二人もいるノアへ嫁いだレイチェルは、領地の外れにある小さな邸に追いやられるも幸せな毎日を過ごしていた。ところが、それがそろそろ夫であるノアの思惑で潰えようとして…
しかし、ぞんざいな扱いをしてきたノアと夫婦になることを避けたいレイチェルは執事であるロイの力を借りてそれを回避しようと…
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
幼馴染が夫を奪った後に時間が戻ったので、婚約を破棄します
天宮有
恋愛
バハムス王子の婚約者になった私ルーミエは、様々な問題を魔法で解決していた。
結婚式で起きた問題を解決した際に、私は全ての魔力を失ってしまう。
中断していた結婚式が再開すると「魔力のない者とは関わりたくない」とバハムスが言い出す。
そしてバハムスは、幼馴染のメリタを妻にしていた。
これはメリタの計画で、私からバハムスを奪うことに成功する。
私は城から追い出されると、今まで力になってくれた魔法使いのジトアがやって来る。
ずっと好きだったと告白されて、私のために時間を戻す魔法を編み出したようだ。
ジトアの魔法により時間を戻すことに成功して、私がバハムスの妻になってない時だった。
幼馴染と婚約者の本心を知ったから、私は婚約を破棄します。
【12話完結】私はイジメられた側ですが。国のため、貴方のために王妃修行に努めていたら、婚約破棄を告げられ、友人に裏切られました。
西東友一
恋愛
国のため、貴方のため。
私は厳しい王妃修行に努めてまいりました。
それなのに第一王子である貴方が開いた舞踏会で、「この俺、次期国王である第一王子エドワード・ヴィクトールは伯爵令嬢のメリー・アナラシアと婚約破棄する」
と宣言されるなんて・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる