このときをずっと待っていました ~あなたたちを全員ざまぁしてやりますわ~

小倉みち

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婚約破棄

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「「「「は!?」」」」


 驚く4人。


 完全に初耳らしい。


「う、嘘をつけ! そんなはずは」

「いえ、本当ですわ。そんなどうでも良い嘘、私つきませんもの。ねえ、みなさん」


 そう言って私は、周囲に視線を向ける。


 貴族たちはみな、大きく首を縦に振った。


 まるで、事前に示し合わせていたかのような、揃った動きであった。


「ほら、みなさんのところにも、その報告がいっているみたいですわ」

「それは嘘だ!」

 と、父親。

「嘘ですよ。嘘に決まっているでしょう、殿下。なぜなら、我が家には届いていません」

「そうですわ、殿下」

 母も言葉を重ねる。

「大方、ディーナが適当な嘘をついて、みなさんに手紙を送りつけたのよ。国王陛下の名前を騙って――ああ、なんて罪深い子どもなんでしょう!」

「申し訳ありません、皆様方。どうか、この馬鹿な娘を許してあげてください!」


 騒ぎ立てる両親。

 彼らに冷たい視線を送る貴族たち。


 私はため息をつく。


 私と王子を婚約破棄させたいと、先ほど声を大にしておっしゃっていたこの人たち。

 それなのに、どうして既に婚約破棄をしているという点に、そこまで慌てているのだろうか。


 本来求めていたそれが成しえているのであれば、彼らの目的は達成したはず。


 本来であれば、驚いたり、拍子抜けしたりすることはあれど、あんなふうに焦る必要はない。


 それなのに、なぜ彼らはあそこまで、

「嘘だ」

「ありえない」

 と、叫ぶのか。


 現時点で、私とヘンリー王子が婚約しているという事実を必要としているのか。


 ――それはつまり。


 殿下と私が既に婚約破棄、つまりは赤の他人であっては困るからだ。


 今回の事件の概要は、私が妹のマリーを虐めているということ。


 要するに、あくまで家の中の問題である。

 今巻き込まれている貴族たちには、全くもって関係のないことだ。


 それを堂々と他の貴族や王族の眼前でさらけ出し、恥をかきまくっている存在こそが、私の家族である。


 しかし、それを公の問題にすることが出来る1つの切り札があった。


 それは、私が殿下の婚約者であること。


 王子の婚約者の問題は、内々だけで片付けることは許されない。

 王族は公であり、その婚約者も公でいなければならない。


 彼らは、「王子の婚約者」が問題を起こした、という筋書きにすることで、私を貴族総出で袋叩きにしたいと考えていたのだろう。


 だが今、彼らの作ったストーリーは瓦解した。


 既に私と殿下の婚約が破棄されている今、彼らの目論見は大きく外れたのだ。


 彼らはただ、自分たちの醜態を嬉々としてさらけ出す、とんでもなく愚かな家族として、貴族から捉えられている。


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