このときをずっと待っていました ~あなたたちを全員ざまぁしてやりますわ~

小倉みち

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証拠

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「公爵令嬢マリーが、その両親に暴力を振るわれましたわ! 今」


 私は、先ほど目の前に起こったことを丁寧に説明した。

「親が子どもに暴力を振るうなんて、しかもそれを公然の場で行うなんて」


「まあ、信じられないわ」

「ありえない!」


 貴族たちの間から、そんな声が聞こえる。


「あっ」

 両親の顔が、土気色に染まる。


「みなさん御覧に入れましたか?」


 私は抑揚をつけて、まるで演説をするように周囲に語りかけた。


「これはれっきとした虐待ですわ! この公爵夫妻は、今皆様の目の前で、自分の娘に暴力を振るったのです!」


「最低……」

「子どもに暴力を振るうだなんて」

「子どもはこの国の財産だぞ」


「ち、違う!」

 先ほど、マリーの頭を叩いた父が叫んだ。

「さっきのは、娘のしたことを咎めようと」


「ほう」

 と、国王陛下。

「咎めようとして、娘の頭を叩いたのか?」

「ほかに方法があったはずでは?」

 と、私も追随する。


「というか、今私の両親はとても焦っておられるみたいですわ」

 私は陛下に向かって言った。

「つまり、表に出していた仮面が剥がれた状態――あれが、私の両親の本性みたいですわ」


「ち、違います!」

「違う!」


 2人は同時に否定する。


 しかし、目の前で確かに起こった事態。

 彼らがいくら叫ぼうとも、否定しようとも。


 その証拠が覆ることはない。


「この期に及んでなおも否定するだなんて」

「本当、まさしくと言う感じね」


 くすくすと、人々が笑う。


「というか、もしかして」

「自分たちが虐待していたのに、それを長子である公爵令嬢ディーナに押しつけてたってことじゃない?」

「あり得るわ」


 どんどんどんどん、自分たちの不利な方向に進んでいく。


 両親は、完全に八方塞がりだった。


 ――すると。

「そ、そうなんです。ええ、そうですわ!」

 母親の手を強引に振りほどいたマリーが叫んだ。

「私は、家族から暴力を振るわれておりました! 私は被害者ですわ」


「ちょっと!」

「おい!」


 彼女を怒鳴りつける両親。


 ……なるほど。

 切り捨て作戦に入ったわけね。


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