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相談と不安
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「お父様、お母様。いらっしゃいますか? セシリアです」
私は彼らの部屋をノックした。
慌てているから、ちゃんとした挨拶は抜きにする。
「すみません、ちょっと至急ご相談したいことがございまして」
ややあって、承諾の声が聞こえた。
「どうした? 入ってこい」
「失礼します」
私は出来る限り優雅さを消さないで素早く扉を開ける。
扉の先では、私たち姉妹のものよりも少々大きい間取りの部屋で、夫婦は各々好き勝手なことをしていた。
お父様は書斎机で何やら書き物をしており、お母様はお父様から少し離れたソファで、のんびりと編み物をしていた。
私はスタスタとお父様の前にやって来る。
「どうしたんだ?」
私は深呼吸をして言った。
「マリアンヌの様子がおかしいのです」
「いつものことではないのですか?」
お母様が後ろから口を挟む。
「そう言うわけではないのですよ」
私はそれに答えた。
「先程、マリアンヌが挨拶もせずに、急に私の部屋に飛び込んできました」
ハッハッハとお父様は笑った。
「あの子はいつもすごいことをしでかすな」
「笑いごとじゃないのです。いつもは最低限のマナーはちゃんと守っていますよ」
マリアンヌに少々甘いところのある両親はまさかという顔をして首を振っていた。
これだから、長女は割を食うのよね。
私は嘆息し、具体的に説明をし始める。
「マリアンヌが私の部屋にやって来て、こう言ったんです。
『私はヒロインで、お姉様は悪役令嬢。この世界は乙女ゲームなの。私は転生者だからそれを知っているわ。だから、お姉様の婚約者を頂戴』
と」
「「婚約者……?」」
二人とも不思議そうな表情を浮かべる。
「セシリア、あなたには婚約者はいないはずよ」
「そうなんですよ、それをマリアンヌもわかっているはずなんです。なのにどうして、そんなわけのわからないことを」
「ふむ」
私の丁寧な訴えに、ようやくお父様は耳を傾けてくれた。
「確かに、マリアンヌは自分が転生者であると言ったんだな?」
「はい。私の家庭教師も聞いていますから。証拠はちゃんとあります」
「うーむ。この世界で転生者というのは特段珍しいことではない。前世の記憶を持つ者もいるからな。もしかすると、マリアンヌの前世は異世界かもしれない」
「異世界、ですか?」
「ああ。それを急に思い出し、マリアンヌは混乱したのではないか?」
「そうよ、そうに決まっていますわ」
お母様はお父様の話に同調した。
「セシリア、マリアンヌの様子をきちんと見てくれないかしら? 記憶の混乱で性格が変わってしまったのなら、うちでしっかり療養しないといけないもの」
お母様にそう言われ、私は頷く他なかった。
「わかりましたわ。私は長女ですもの。マリアンヌのことをきちんと見ますわ」
平和ボケした両親は納得したようだが、私は一抹の不安を消せないでいた。
記憶の混乱で性格が急に変わってしまったのなら、どうしてあんなに元気なのだろうか。
私が良く聞く前世の記憶が復活しましたみたいな話は、大抵その記憶を頭が処理しきれずに倒れたり、熱が出たりするものだけれど。
私の義妹には、そんな様子は毛頭感じなかった。
私は彼らの部屋をノックした。
慌てているから、ちゃんとした挨拶は抜きにする。
「すみません、ちょっと至急ご相談したいことがございまして」
ややあって、承諾の声が聞こえた。
「どうした? 入ってこい」
「失礼します」
私は出来る限り優雅さを消さないで素早く扉を開ける。
扉の先では、私たち姉妹のものよりも少々大きい間取りの部屋で、夫婦は各々好き勝手なことをしていた。
お父様は書斎机で何やら書き物をしており、お母様はお父様から少し離れたソファで、のんびりと編み物をしていた。
私はスタスタとお父様の前にやって来る。
「どうしたんだ?」
私は深呼吸をして言った。
「マリアンヌの様子がおかしいのです」
「いつものことではないのですか?」
お母様が後ろから口を挟む。
「そう言うわけではないのですよ」
私はそれに答えた。
「先程、マリアンヌが挨拶もせずに、急に私の部屋に飛び込んできました」
ハッハッハとお父様は笑った。
「あの子はいつもすごいことをしでかすな」
「笑いごとじゃないのです。いつもは最低限のマナーはちゃんと守っていますよ」
マリアンヌに少々甘いところのある両親はまさかという顔をして首を振っていた。
これだから、長女は割を食うのよね。
私は嘆息し、具体的に説明をし始める。
「マリアンヌが私の部屋にやって来て、こう言ったんです。
『私はヒロインで、お姉様は悪役令嬢。この世界は乙女ゲームなの。私は転生者だからそれを知っているわ。だから、お姉様の婚約者を頂戴』
と」
「「婚約者……?」」
二人とも不思議そうな表情を浮かべる。
「セシリア、あなたには婚約者はいないはずよ」
「そうなんですよ、それをマリアンヌもわかっているはずなんです。なのにどうして、そんなわけのわからないことを」
「ふむ」
私の丁寧な訴えに、ようやくお父様は耳を傾けてくれた。
「確かに、マリアンヌは自分が転生者であると言ったんだな?」
「はい。私の家庭教師も聞いていますから。証拠はちゃんとあります」
「うーむ。この世界で転生者というのは特段珍しいことではない。前世の記憶を持つ者もいるからな。もしかすると、マリアンヌの前世は異世界かもしれない」
「異世界、ですか?」
「ああ。それを急に思い出し、マリアンヌは混乱したのではないか?」
「そうよ、そうに決まっていますわ」
お母様はお父様の話に同調した。
「セシリア、マリアンヌの様子をきちんと見てくれないかしら? 記憶の混乱で性格が変わってしまったのなら、うちでしっかり療養しないといけないもの」
お母様にそう言われ、私は頷く他なかった。
「わかりましたわ。私は長女ですもの。マリアンヌのことをきちんと見ますわ」
平和ボケした両親は納得したようだが、私は一抹の不安を消せないでいた。
記憶の混乱で性格が急に変わってしまったのなら、どうしてあんなに元気なのだろうか。
私が良く聞く前世の記憶が復活しましたみたいな話は、大抵その記憶を頭が処理しきれずに倒れたり、熱が出たりするものだけれど。
私の義妹には、そんな様子は毛頭感じなかった。
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