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突然の来訪

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  一応両親の許しも得たということで、私はマリアンヌを家で保護することにした。


  そりゃもう、あんな状態で外へ出せばいつも以上に何するかわからないし。


「……ということで、あなたが元に戻るまで屋敷から一歩も出ないで頂戴」

「は!? 何それ、意味わかんないんだけど!」

  だろうな、と思う。

  だけど、こっちだってやらなきゃいけないことがある。

  一日中マリアンヌを見張れるほど、私は暇じゃない。

「それじゃ、よろしく頼むわ」

  私はマリアンヌ付きのメイドに声をかけ、彼女が了承の意を示してくれたのを確認して立ち去った。

「こ、この……! 悪役令嬢が! 自分の義妹を虐めるなんて最低よ、あんた!」


  これで元に戻ってくれればいいものの、もし戻らなかったらどうしようかしら。

  前のマリアンヌなら全然だけど、今の彼女を一生面倒見る気にはならない。


  私はもう一度自室に戻り、律儀に待っていただいた家庭教師に頭を下げる。

「すみません、お時間いただいて」

「いえいえ」

  彼女はそれだけ言って頭を下げた。


  とやかく詮索しないところが本当に良い。

  新しく雇い直して良かった。





「セ、セシリアお嬢様!」

  またかよ。

  私は大きくため息をついた。

  しばらくは大人しくしてくれると思っていたが、マリアンヌはしつこかった。毎日のように脱出を画策し、私を怒鳴りつけるのだ。

  性格が急変しても語彙力はあまり変わらないようで、「ヒロイン」「悪役令嬢」「乙女ゲーム」の三つの単語が彼女の話の主な言語だった。

「今度はなによ!」

  私は羽根ペンを机に置き、立ち上がりざまに叫んだ。

  扉の向こうから悲鳴が聞こえる。私の怒鳴り声に驚いたようだ。どうやらマリアンヌではないらしい。


  あら。

  マリアンヌかと勘違いして強く言いすぎてしまったわ。


  そう言えば声の主は、私のことを「セシリアお嬢様」と呼んでいた。それなのにマリアンヌだと思い込んでしまうほど、私は連日の争いに疲れているのかもしれない。

「ごめんなさい、マリアンヌだと思ったの。入っていいわよ」

「す、すみません。失礼します」

  扉を開け、メイドの一人が恐る恐るといった感じで中に入ってきた。

「それで、どうしたの?」

  私は疲れているから早く言え、と暗に諭す。

「そ、それがですねーー来ました。とうとう」

「誰が?」

  私は首を傾げる。

「その言い方だと、あまり良い人が来たわけじゃなさそうだけど」

「その通りです」

  メイドは私の顔を真っ直ぐに見据えて言った。

「来ました。あの馬鹿……いえ、ジョージ王子が」

「は?」

  え? なんで?
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