【完結】は? 婚約破棄? ……いやあの、私たちそもそも婚約していなかった気が

小倉みち

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証拠

「しょ、証拠は!」


 殿下は叫んだ。

「私が宰相一家を殺そうとしたという証拠はどこにあるんですか!?」

「セシリア」


 国王陛下は私に視線を向ける。

「はい」

 私はポケットから録音機を取りだした。


 ピピッ。


『殿下、大丈夫ですか?』


 ガサゴソと音が聞こえる。

 その後、おそらくジョージ王子のものだろう、くぐもった唸り声が耳に入る。


『あ、あの女……っ』

『本当、ぶっ殺してやりましょうよ』

『王族である殿下をあそこまでコケにするなんて、マリアンヌ嬢の義姉とは、到底思えないですね』

『……せっかく、マリアンヌを手中に収めたというのに、あの女が邪魔をするせいで話が進まない!』

『そうですよ、殿下の婚約者という称号を持っているのに、それに加えてさらに殿下の愛を欲するとは。信じられないくらい強欲な女ですよ』


『で、どうします? あの計画』

 進めますか、と誰かが言う。

『うむ……』

『ここまで来るともう、そうするしかありませんよ。俺たちはちゃんと譲歩しましたしね』

『そうだ。こっちがわざわざ謝りに行ってやったのに、殿下の股間に蹴りを入れるなんて。恩を仇で返すようなもんですよーーどうしますか? 攻めますか?』

『そうだな』

 殿下が言った。


『我がマリアンヌのためだ。宰相一家には死んでもらおう。マリアンヌが天涯孤独になってしまうが、仕方がない』


 生徒たちは、その衝撃的な言葉に悲鳴をあげた。


 「なっ」


 まさか全部聞かれているとは思っていなかったのか、殿下は目を白黒させた。

 他の取り巻き連中も、殿下と同じように無様な姿を公衆の面前に晒している。



『あーあ、残念ですね、あいつ』

 別の誰かが言った。

『謝罪を受け入れれば、自分とその両親が殺されることもなかったのに』

『こっちが穏便にやろうとすると、すぐにああやって調子に乗るのが、あの女だ。ヒステリックで、うるさい。私の婚約者ということで直々に許してやったが、もう我慢の限界だ』


 ガタッと、立ち上がる音が聞こえる。

『いつしましょうか?』

『明日だ』


 殿下が言った。

『明日の夜なら、全員家にいるだろう。そこでマリアンヌ以外の全員を殺せ』

『承知いたしました!』


 ピッ。

 重苦しくなった空気の中、私の押したボタンの音が会場に響いた。


 私は彼らに向かっていった。

「さあ、これでもう言い逃れ出来ませんよーー殺人未遂犯さん?」

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