身に覚えのない浮気が原因で婚約破棄されました

小倉みち

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 殿下の中ではもう、その素晴らしく素敵な構想の中に、私という人間が組み込まれているらしい。


 殿下は鼻高々に、自分のアイデアがどれくらい素晴らしいのかということ、きっと大ヒットする、間違いなどという夢物語をうんざりするほど私に語って聞かせた。


 あまりにも鬱陶しいので、

「ヘーソウナンデスカ」

「スゴーイ」

 と、適当に相槌を打っていると、さすがの王子も私が話を聞いていないのを察したのか、ムッとした顔で、

「お前、本当可愛くないな。俺の婚約者のくせに」

 と、のたまう。


 は?

 あなたに可愛いと思われるために、私生きてるわけじゃないんですけど?


「そうですか、申し訳ございません」

 しかし反論すればまた面倒なことになるので、私は適当に流す。

「それより本気で殿下は、その、なんでしたっけ?」

「アパレルブランドだ!」

「……アパレルブランドをお作りに?」

「当然だろう――お前の家は身分が低いわりに、金だけはあるからな。出資させてやろうというのだ。喜ぶが良い。金をくれれば、俺が直々にデザインしたやった服を無料でプレゼントだ」


 ……いらない。

 心の底からいらない。


 マジで。


 私はこれ見よがしにため息をついた。


 だいたい、殿下のその癖――急にわけのわからん事業を思い立ち、見切り発車で進もうとする行動は、今に始まったことではない。


 この男は、本当にいろんなことをしでかしてくる。


 一番酷かったのは、レストラン経営だ。

 この男のケチが災いし、汚くて狭い店に態度の悪い店員、不味いご飯。


 もう散々だった。


 しかもこの男ときたら、問題は私に全部丸投げだ。


 さすがにレストランの件はどうしようもないので、

「第三王子がすみません」

 と、殿下の好感度を著しく下げながら謝り続けたけど。


 それにしても、アパレルブランド作る理由が、

「友達に褒められたから」

 って、なんなのよ。


 そりゃ誰だって褒めるでしょうよ。

 王子なんだから。


 お世辞の1つや2つで出世が決まるんだったら、みんないくらでも殿下のファッションセンス褒めるわよ。
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