濡れ衣で死刑執行されましたが、妖精王の加護で復活しました ~私の代わりに、妖精王が怒ってくれるみたいです~

小倉みち

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人間

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「も、もう一度……」

「ああ、そうだ」


 妖精王ははっきりとそう言う。

「お前を、もう一度お前として蘇らせることが、私には出来る」

「……」

「生き返れば、ヴィクトリア、お前を苦しめたすべての者に対しても復讐できるぞ。お前にはその権利が与えられたんだ」


 ありがたい申し出だった。

 死ぬのが怖かった昔の私なら、喜んでそれを受け入れたであろう。


 自分の幸福を噛みしめながら。


 ――だが。


「ありがたい申し出ですが」


 私はゆっくりと首を横に振る。

「お断りさせていただきますわ」

「……なぜだ?」


 妖精王の問いに、私は少しずつ言葉を紡いで答える。


「私は、公爵令嬢ヴィクトリアとして死ぬことが出来て良かったと思っていますから」


 私は今、心の底から死んで良かったと思っている。

 というか、生まれなければ良かったと後悔さえしている。


「私は、どうして公爵令嬢に生まれてしまったのか、そんなことをずっと考えていました」

「……」

「私がそうでなければ、いいえ、そもそも人間として生まれなければ、私はこんなに苦しむことはなかった」

「……」

「私はもう、良いのです。本当に」

「……世界の塵となっても?」

「はい」


 それで、苦しみから解き放たれるなら。


「世界の一部となって、物体としての個を失った方が、また『私』として生を受けるよりもよっぽど幸せだと思うんです」

「……復讐したいとは思わないのか?」


 復讐。


 私には、それがもはや遠い世界の言葉のようにしか聞こえない。


「怒りよりも、悲しみと絶望が勝っていますから」


 私は答えた。

「あの人たちの理不尽さに怒りを感じるよりも、もう何もしたくないんです」

「何も?」

「はい。もう何も」


 何も考えず、何も苦しまない「何か」になりたい。


「……そうか」


 しばしの沈黙のあと、妖精王はもう1つの提案をした。


「それなら、妖精となって永久のときを我らとともに暮らそうではないか。お前はもう、人間として生きなくてもよくなるぞ」

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