そんなに別れたいとおっしゃるなら、承知いたしました

小倉みち

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部屋

 殿下の部屋は、城の最上階にあった。


 ウォルターに案内してもらい、私は部屋の扉を2回ノックする。


「誰だ?」

「私です。殿下の婚約者であり、公爵が娘スカーレットでございます」

「入れ」


 扉を開けようともしないのか、この王子は。


 私は困惑して、ウォルターの顔を見上げる。

 彼も困ったような表情で、首を傾げていた。


「どうした? 早く入れ。俺を待たせるつもりか」

「……大変申し訳ございません。失礼いたします」




 セシル殿下の部屋は、色んな物で溢れ返っていた。

 もともとあまり整理整頓が得意ではなかったが、学園で騒ぎを起こすようになってから、部屋の汚さにさらに拍車がかかっていた。


 町で手に入れたのだろう、庶民の間で流行っているゲームやキックボード、ベースボールのグローブなど、おもちゃが散乱している。

 部屋の奥の方にある机には、全く使われた形跡のない教科書とノート、筆記用具。

 いつ使ったのかわからないグラスなどの食器類。

 
 見た瞬間げんなりしたが、ただ、昔私がプレゼントしたものが棚に飾られてあるのを確認して、少し気分が元に戻った。


 良かった。

 まだ殿下は、私のことを大切に思ってくれているんだわ。


「ウォルター、もう良いぞ。戻れ」


 部屋にいたセシル殿下は、ウォルターにそう命令した。


「えっ、あ、はあ……。ですが」


 ウォルターは私に視線を向ける。

 どうやら彼も、何か嫌な予感を覚えたらしい。


「俺はスカーレットと話があるんだ」

「……私には聞かれたくないことですか?」

「婚約者同士の話だ。部外者であるお前には関係ないだろう」

「……承知いたしました」


 去り際ウォルターは、小声で私に、

「私は部屋の外で待機していますので」

 と、耳打ちした。


 

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