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初めて入る広くキラキラした綺麗な広い部屋
明らかに高そうな物がいっぱいあって、広くてふかふかのソファーが気持ち良さそうだった
お客様は、あの夢で見た通りのとても嫌な感じのキラキラをいっぱい付けたヒト族の偉い貴族の人だった
「物珍しいモノを飼われたんですな
それは、何用の奴隷ですかな?足も手も、翼すら満足にもない…愛玩用にも役に立ちそうにもないが…
辺境伯はよい御趣味をしているんですな」
お客様は、彼の膝の上に座らせて貰っているボクを、気持ち悪いモノを見ているような、不快だという顔を隠さずに見下すように見てくる
貴族の人に指図され、お連れの人が銀色の杯をお盆に乗せて恭しく彼に渡した
「これが例の酒か…
伯爵の領地ではこのようないい物が手に入るのですね」
彼は嫌味を全く解さず、持ち込まれた物を吟味している
まるでこの貴族の横暴な態度など気にしていないように
このままだと、あの夢のままになってしまう…
杯を手に取る彼に焦りだけが募る
どうにか止めようと、手を伸ばすも避けられ睨まれる
「ぅ、うぅ…」
毒だと伝えたくて声を出すも、不快だと言うように顔を顰め、ボクを邪魔だというように床に降ろそうとした瞬間、痛む身体でなんとか翼を動かして彼の手を叩き、杯を落とすことに成功した
「何をする!」
唸り声を上げ、罵声する声に身が縮む
首を横に振って飲んではダメだと伝えようとするも、わかって貰えそうにない
貴族の人も何か叫んでいるが、そんなことには気にも止めず、意を決して床に転がっている杯を手に取り、残っている中身の雫を一滴飲み込む
その瞬間、喉が焼ける痛みに息が詰まり、苦し気な声が漏れてしまう
「ング、ふっ…ぁっ…」
ほんの少しなのに、喉が焼け爛れたのかちゃんと呼吸が出来なくて苦しい
「えほっゲホッゲホッ…」
咳と一緒に血が溢れ出し、目が霞んでくる
「ルリっ!!?」
彼の顔は青褪め、驚いてボクの方に駆け寄ってくる
ボクの吐いた血で綺麗な服が汚れるのも厭わず、抱き抱えてくれ、慌てたように周りに控えている人に声を掛けている
「早く医者を!!水を持って来い」
目を開けているのも辛く、今にも意識がなくなりそうになるも、彼の手のひらに指で「毒、飲まないで」とだけ書き力尽きるように意識を手放した
三日三晩、生死を彷徨って眠っていたらしい
目を覚ましても身体が重たく、思うように動かない
顔だけ動かしてみると、ボクの手をギュッと握ったままベッドにうつ伏せになって眠る彼がいた
ぐっすり眠っている彼の耳が時折ピクピク動くのを見てつい笑みが溢れてしまう
良かった…
ちゃんと生きてる
手、あったかい…
あの夢が変わってよかった…
ホッと安堵し、彼が生きていることに安堵して見つめていると、彼がゆっくりと目を覚ました
疲れが残っているのか、隈が酷くやつれているように見える
「………」
声を出そうとするも、まだ喉が焼けるように痛くて声が出せない
まだ眠そうだったのに、ボクと目が合った瞬間、眠気も吹き飛んだのか目を見開いて抱き締めてくれた
「ルリッ!!よかった…本当に…」
ボクの顔を見て今にも泣き出しそうな顔で安堵している彼につい笑みが溢れてしまう
「何故あんな無茶を…本当に、死ぬかもしれなかったんだぞ」
あんなに嫌われていたはずなのに、心配してくれるのが嬉しくてつい笑ってしまう
良かった…
この人が生きてて…
ボクは別にどうなっても良かったけど、この人が心配してくれるなら、生きててよかった…
「…………」
声を出そうにもやはり喉の痛みから声は出ず、安心させようと彼の頭を撫でる
真っ黒で堅そうに見えていたけど、手入れがしっかりされているのか思っていたよりもずっと柔らかく、サラサラした髪につい気持ち良くなり、何度も何度も頭を撫でる
「人が死ぬほど心配していたのに、はぁ……お前は呑気だな…」
呆れた声で文句を言ってくるも、頭を撫でるのは嫌ではないのか、耳が撫でやすいように垂れてくれている
「お前のお陰で命拾いした。本当にありがとう。だが、もうあんな無茶をしないでくれ…」
今にも泣き出しそうな彼がボクの胸に頭を預けてくる
その様子がなんだかすごく愛おしくて、頭を撫でながら頷いた
声を掛けたいのに、喋れないのはツラいな…
どれくらいそうしていただろう
穏やかな時間が流れていた
彼の柔らかい髪を撫でながらずっとこの時間が続くばいいと思っていた
コンコン
軽いノック音が聞こえ、執事さんが声を掛けてくる
彼は飛び起きるように離れ、扉のところで何か話している
険しい顔で話しをしている様子から、あの貴族の人のことだと想像する
「ルリ、オレは少し出掛けてくる。夜には戻るから良い子で待っていろよ」
そのまま出て行くのだと思っていたが、彼はボクの方にきて額に触れるだけのキスをしてくれる
その行為がなんだか照れ臭くて、困ったようにコクンと頷くと彼は安心したように微笑み、ボクの頭を撫でてから部屋を出て行った
彼に触れられたところがなんだかあったかい
今までしてこんな風に触れて貰ったことがないからかな…
明らかに高そうな物がいっぱいあって、広くてふかふかのソファーが気持ち良さそうだった
お客様は、あの夢で見た通りのとても嫌な感じのキラキラをいっぱい付けたヒト族の偉い貴族の人だった
「物珍しいモノを飼われたんですな
それは、何用の奴隷ですかな?足も手も、翼すら満足にもない…愛玩用にも役に立ちそうにもないが…
辺境伯はよい御趣味をしているんですな」
お客様は、彼の膝の上に座らせて貰っているボクを、気持ち悪いモノを見ているような、不快だという顔を隠さずに見下すように見てくる
貴族の人に指図され、お連れの人が銀色の杯をお盆に乗せて恭しく彼に渡した
「これが例の酒か…
伯爵の領地ではこのようないい物が手に入るのですね」
彼は嫌味を全く解さず、持ち込まれた物を吟味している
まるでこの貴族の横暴な態度など気にしていないように
このままだと、あの夢のままになってしまう…
杯を手に取る彼に焦りだけが募る
どうにか止めようと、手を伸ばすも避けられ睨まれる
「ぅ、うぅ…」
毒だと伝えたくて声を出すも、不快だと言うように顔を顰め、ボクを邪魔だというように床に降ろそうとした瞬間、痛む身体でなんとか翼を動かして彼の手を叩き、杯を落とすことに成功した
「何をする!」
唸り声を上げ、罵声する声に身が縮む
首を横に振って飲んではダメだと伝えようとするも、わかって貰えそうにない
貴族の人も何か叫んでいるが、そんなことには気にも止めず、意を決して床に転がっている杯を手に取り、残っている中身の雫を一滴飲み込む
その瞬間、喉が焼ける痛みに息が詰まり、苦し気な声が漏れてしまう
「ング、ふっ…ぁっ…」
ほんの少しなのに、喉が焼け爛れたのかちゃんと呼吸が出来なくて苦しい
「えほっゲホッゲホッ…」
咳と一緒に血が溢れ出し、目が霞んでくる
「ルリっ!!?」
彼の顔は青褪め、驚いてボクの方に駆け寄ってくる
ボクの吐いた血で綺麗な服が汚れるのも厭わず、抱き抱えてくれ、慌てたように周りに控えている人に声を掛けている
「早く医者を!!水を持って来い」
目を開けているのも辛く、今にも意識がなくなりそうになるも、彼の手のひらに指で「毒、飲まないで」とだけ書き力尽きるように意識を手放した
三日三晩、生死を彷徨って眠っていたらしい
目を覚ましても身体が重たく、思うように動かない
顔だけ動かしてみると、ボクの手をギュッと握ったままベッドにうつ伏せになって眠る彼がいた
ぐっすり眠っている彼の耳が時折ピクピク動くのを見てつい笑みが溢れてしまう
良かった…
ちゃんと生きてる
手、あったかい…
あの夢が変わってよかった…
ホッと安堵し、彼が生きていることに安堵して見つめていると、彼がゆっくりと目を覚ました
疲れが残っているのか、隈が酷くやつれているように見える
「………」
声を出そうとするも、まだ喉が焼けるように痛くて声が出せない
まだ眠そうだったのに、ボクと目が合った瞬間、眠気も吹き飛んだのか目を見開いて抱き締めてくれた
「ルリッ!!よかった…本当に…」
ボクの顔を見て今にも泣き出しそうな顔で安堵している彼につい笑みが溢れてしまう
「何故あんな無茶を…本当に、死ぬかもしれなかったんだぞ」
あんなに嫌われていたはずなのに、心配してくれるのが嬉しくてつい笑ってしまう
良かった…
この人が生きてて…
ボクは別にどうなっても良かったけど、この人が心配してくれるなら、生きててよかった…
「…………」
声を出そうにもやはり喉の痛みから声は出ず、安心させようと彼の頭を撫でる
真っ黒で堅そうに見えていたけど、手入れがしっかりされているのか思っていたよりもずっと柔らかく、サラサラした髪につい気持ち良くなり、何度も何度も頭を撫でる
「人が死ぬほど心配していたのに、はぁ……お前は呑気だな…」
呆れた声で文句を言ってくるも、頭を撫でるのは嫌ではないのか、耳が撫でやすいように垂れてくれている
「お前のお陰で命拾いした。本当にありがとう。だが、もうあんな無茶をしないでくれ…」
今にも泣き出しそうな彼がボクの胸に頭を預けてくる
その様子がなんだかすごく愛おしくて、頭を撫でながら頷いた
声を掛けたいのに、喋れないのはツラいな…
どれくらいそうしていただろう
穏やかな時間が流れていた
彼の柔らかい髪を撫でながらずっとこの時間が続くばいいと思っていた
コンコン
軽いノック音が聞こえ、執事さんが声を掛けてくる
彼は飛び起きるように離れ、扉のところで何か話している
険しい顔で話しをしている様子から、あの貴族の人のことだと想像する
「ルリ、オレは少し出掛けてくる。夜には戻るから良い子で待っていろよ」
そのまま出て行くのだと思っていたが、彼はボクの方にきて額に触れるだけのキスをしてくれる
その行為がなんだか照れ臭くて、困ったようにコクンと頷くと彼は安心したように微笑み、ボクの頭を撫でてから部屋を出て行った
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