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最期
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春になった
戦争は起こらなかった
今でも、隣国は友好的な貿易関係にあるらしい
街は今日も平和で、来週には春のお祭りがあるらしい
みんな楽しみにしてるのがわかって、ボクも嬉しくなる
窓から入ってくる風が気持ち良くて、ベッドに居ながら外を感じられる
身体が動かなくなって、目を開けているはずなのに霞んで見えない時が増えた
薬の効果もあり、起きている時間も日に日に減っていった
手は枯れ枝のように痩せ細り、少し強く握っただけで折れてしまいそうになる
ペンを握る力もなくて、つま先にインクを付けて文字を書いた
眠る時間が長くなったと同時に、夢を見る時間も増えた
起きている時間は出来るだけ詳しく夢の内容を残すようにした
良い夢も、悪い夢も、出来るだけ多く
悪い夢が現実にならないように…
自分でも、もうすぐ終わりが来るのがわかるようになってきた
彼が褒めてくれた羽根はもうない
名前の由来にしてくれた髪も、白くなってしまった
身体が何も受け付けなくて、ただただ眠い
でも、少しでも長く彼を見ていたかった
彼の声ももう聞こえない
でも、いつも耳元で「愛してる」と囁いてくれている気がした
最後に見た夢は、彼が同じ狼族の綺麗な女性と沢山の子どもたちに囲まれている幸せそうな光景
その場にボクはいけないけど、彼がひとりぼっちにならないことに心から安堵した
しあわせになってね
早くボクのことは忘れてね
たくさん、しあわせになって
もし、また、生まれ変われたなら、ボクのこと見付けてね…
アナタの為なら、何度でも何度でも、夢を見るから…
「愛してる」最後に伝えたい言葉を指差し、そのまま静かに醒めない眠りにつく
ボクも最後はしあわせになれたよ
いつも共に過ごした丘の上に小さなお墓が作られた
そのお墓には毎日色とりどりの花が添えられ、しあわせそうに、だけど寂しげな顔で丘から見える街を眺め佇む狼族の男がいた
「ルリの予知夢も外れる時はあるんだよ
オレには、お前しか居ないから…ずっと、ルリだけを愛し続けるよ」
果ての領地には厄災を回避する為の分厚い本がある
本に書かれた厄災を事前に対処出来る為、この領地には末永く平穏が訪れた
ただ、領主は生涯独身を貫き、血を繋ぐことは出来なかった
彼がしたことは、唯一愛した青い羽根を紋章に加えることだけだった
戦争は起こらなかった
今でも、隣国は友好的な貿易関係にあるらしい
街は今日も平和で、来週には春のお祭りがあるらしい
みんな楽しみにしてるのがわかって、ボクも嬉しくなる
窓から入ってくる風が気持ち良くて、ベッドに居ながら外を感じられる
身体が動かなくなって、目を開けているはずなのに霞んで見えない時が増えた
薬の効果もあり、起きている時間も日に日に減っていった
手は枯れ枝のように痩せ細り、少し強く握っただけで折れてしまいそうになる
ペンを握る力もなくて、つま先にインクを付けて文字を書いた
眠る時間が長くなったと同時に、夢を見る時間も増えた
起きている時間は出来るだけ詳しく夢の内容を残すようにした
良い夢も、悪い夢も、出来るだけ多く
悪い夢が現実にならないように…
自分でも、もうすぐ終わりが来るのがわかるようになってきた
彼が褒めてくれた羽根はもうない
名前の由来にしてくれた髪も、白くなってしまった
身体が何も受け付けなくて、ただただ眠い
でも、少しでも長く彼を見ていたかった
彼の声ももう聞こえない
でも、いつも耳元で「愛してる」と囁いてくれている気がした
最後に見た夢は、彼が同じ狼族の綺麗な女性と沢山の子どもたちに囲まれている幸せそうな光景
その場にボクはいけないけど、彼がひとりぼっちにならないことに心から安堵した
しあわせになってね
早くボクのことは忘れてね
たくさん、しあわせになって
もし、また、生まれ変われたなら、ボクのこと見付けてね…
アナタの為なら、何度でも何度でも、夢を見るから…
「愛してる」最後に伝えたい言葉を指差し、そのまま静かに醒めない眠りにつく
ボクも最後はしあわせになれたよ
いつも共に過ごした丘の上に小さなお墓が作られた
そのお墓には毎日色とりどりの花が添えられ、しあわせそうに、だけど寂しげな顔で丘から見える街を眺め佇む狼族の男がいた
「ルリの予知夢も外れる時はあるんだよ
オレには、お前しか居ないから…ずっと、ルリだけを愛し続けるよ」
果ての領地には厄災を回避する為の分厚い本がある
本に書かれた厄災を事前に対処出来る為、この領地には末永く平穏が訪れた
ただ、領主は生涯独身を貫き、血を繋ぐことは出来なかった
彼がしたことは、唯一愛した青い羽根を紋章に加えることだけだった
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こういう作品、大好きです。
世に生み出してくださり、ありがとうございます。
星野 夜空さん、読んでくださりありがとうございます。
こういう話も大好きで、こっそり書いていました。
感想まで書いて下さり、本当にありがとうございます。
桃多さん、たくさん読んでくださり、本当にありがとうございます。
メリバというか、ルリにとっては満足なハッピーエンドなんですよね。
なかなか受け入れて貰えないお話にのに、コレまで読んで貰えて、感想まで(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)
ありがとうございます。
涙が止まりません 本当にどうしよ…家で読んで居て良かった 幸せになって欲しかった(╥﹏╥)健気過ぎて…何時も素敵なストーリーをありがとうございます🥹
ピスケさん、いつも感想を書いてくださりありがとうございます。
感想を貰えるとまた色々書こうって勇気をもらえます。ありがとうございます。