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巣作り出来ないΩくん
4.
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1年振りに、実家に帰っては来たけれど、ここにも僕の居場所はなかった。
発情期事故があったあの日、お父さんから二度と顔を見せるな。って言われていたから当然なんだけど……
この家でも、僕は家から外に出るのを許されていない。
誰かに見つかると、Ωなのに、番が出来たはずなのに、出戻ってしまったことがバレてしまうから……
近所の人に見つからないように、窓の近くに立ったり、姿を見られたりするのを禁止された。
僕がずっと使っていた部屋は、もうこの家にはなかった。
兄さんのお嫁さんの部屋になるのが決まっていたから……
だから、新しい部屋……階段下の小さな物置の隙間が僕の新しい部屋になった。
この部屋から出るのを許されているのは、家に誰も居ない時だけ……
お風呂もご飯も、家族みんなが寝静まった後に、残されている物を少しだけ食べさせて貰えた。
僕は居ちゃいけないから、ご飯を貰えるだけマシなんだと思う。
一応、母さんは心配して声を掛けてくれる。
ご飯も取り置いてくれるし、家族が誰も居ない時は話し掛けてくれる。
「貴方なんて産むんじゃなかった」「貴方がΩだったせいで、私がどれだけ恥をかかされたか……」「貴方のせいで、お父様に責められる」「Ωのくせに、出戻ってきて……恥晒し」
どんな言葉でも、無視しない母さんは優しい人だって、自分に言い聞かせた。
僕がΩなんかに生まれたのが悪い。
αじゃなきゃダメなのに……βにすらなれなかった、僕が悪いんだ……
父さんは僕が居ないモノとして扱った。
Ωだってわかったあの日から、父さんの中で、僕は存在しない。
αじゃなければ、この家にいる価値なんてないから……
Ωである僕は、この家では不要な存在価値すらないモノだから……
兄さんは、僕がΩだとわかったあの日からと差して変わらない。
αで優秀な兄さん。
家族みんなの自慢で、誰からも好かれる兄さん。
優しくて、カッコよくて、なんでもできる兄さん。
何をやってもダメな僕とは、正反対。
僕が帰って来たことに、一番嫌悪しているんだと思う。
お嫁さんに、僕の存在が知られちゃいけないから……
僕は、この家で唯一の汚点なんだって、教えられてきた。
第二の性がわかったあの日、僕がΩだって、わかったあの日……
僕は、家族じゃなくなった。
αに産まれて来られなかった出来損ない。
家族、唯一の汚点。
僕のフェロモンは甘ったるくて臭いらしい。
初めて発情期になってしまった日、家族に汚物を見る目で見られた。
αには、発情期なんて存在しないから……
Ωは淫乱で、αを誘惑する害獣のような存在だから……
誰にも好まれない、臭いフェロモンを撒き散らす存在でしかないから……
父さんも、母さんも、兄さんも……
僕のこの臭いのせいで嫌な顔をする。
番だった彼も、僕のニオイが嫌いだった。
誰にも好まれない、悪臭でしかない僕のニオイ。
Ω臭い、フェロモンのニオイ。
兄さんのお嫁さんが嫁いでくる日が決まった。
彼と別れて7ヶ月。
発情期が来るたびに罵られる。
番相手はもう居ないのに、捨てられたのに、彼を求めるようにフェロモンが出てくる。
抑制剤で抑えようとしても、部屋中にニオイが充満してしまい、廊下にも漏れ出てしまう。
身体の熱を開放することも出来なくて、苦しくて、悲しくて……
熱にうなされながら、何度も助けを求めた。
捨てられたΩなんかを、誰も助けてなんてくれないのに……
少しずつ、少しずつ、精神が蝕まれていくのを感じた。
久々に父さんが僕の居る部屋にやってきて、「Ω専用の精神治療医療病棟」と書かれたパンフレットを渡してきた。
【捨てられたΩの死処】って言われる、劣悪な環境の施設。
僕でも聞いたことのある、最悪の場所。
「二度と『桐ヶ谷の名を名乗るな』。お前がこの家の敷居を跨ぐことも許さん」
この家に帰って来て、最初で最後の父さんからの言葉。
この日、僕は家族からも捨てられた。
親子の縁も、兄弟の縁も、家族の縁も……
名字すらなくなってしまった。
この日、施設の前に放置されて、自ら足を運ぶしかなかった。
死ぬまでずっとひとりぼっち。
誰にも必要とされない僕にピッタリの場所。
でも、壊れ始めた心には、そんなのどうでも良かった。
もう何も感じたくなかった。
期待するのも、好きになるのも、寂しくなるのも……
ずっと、ずっと……そうだったから……
もう、全部疲れちゃった。
死ぬなら、早く死んでしまいたかった……
発情期事故があったあの日、お父さんから二度と顔を見せるな。って言われていたから当然なんだけど……
この家でも、僕は家から外に出るのを許されていない。
誰かに見つかると、Ωなのに、番が出来たはずなのに、出戻ってしまったことがバレてしまうから……
近所の人に見つからないように、窓の近くに立ったり、姿を見られたりするのを禁止された。
僕がずっと使っていた部屋は、もうこの家にはなかった。
兄さんのお嫁さんの部屋になるのが決まっていたから……
だから、新しい部屋……階段下の小さな物置の隙間が僕の新しい部屋になった。
この部屋から出るのを許されているのは、家に誰も居ない時だけ……
お風呂もご飯も、家族みんなが寝静まった後に、残されている物を少しだけ食べさせて貰えた。
僕は居ちゃいけないから、ご飯を貰えるだけマシなんだと思う。
一応、母さんは心配して声を掛けてくれる。
ご飯も取り置いてくれるし、家族が誰も居ない時は話し掛けてくれる。
「貴方なんて産むんじゃなかった」「貴方がΩだったせいで、私がどれだけ恥をかかされたか……」「貴方のせいで、お父様に責められる」「Ωのくせに、出戻ってきて……恥晒し」
どんな言葉でも、無視しない母さんは優しい人だって、自分に言い聞かせた。
僕がΩなんかに生まれたのが悪い。
αじゃなきゃダメなのに……βにすらなれなかった、僕が悪いんだ……
父さんは僕が居ないモノとして扱った。
Ωだってわかったあの日から、父さんの中で、僕は存在しない。
αじゃなければ、この家にいる価値なんてないから……
Ωである僕は、この家では不要な存在価値すらないモノだから……
兄さんは、僕がΩだとわかったあの日からと差して変わらない。
αで優秀な兄さん。
家族みんなの自慢で、誰からも好かれる兄さん。
優しくて、カッコよくて、なんでもできる兄さん。
何をやってもダメな僕とは、正反対。
僕が帰って来たことに、一番嫌悪しているんだと思う。
お嫁さんに、僕の存在が知られちゃいけないから……
僕は、この家で唯一の汚点なんだって、教えられてきた。
第二の性がわかったあの日、僕がΩだって、わかったあの日……
僕は、家族じゃなくなった。
αに産まれて来られなかった出来損ない。
家族、唯一の汚点。
僕のフェロモンは甘ったるくて臭いらしい。
初めて発情期になってしまった日、家族に汚物を見る目で見られた。
αには、発情期なんて存在しないから……
Ωは淫乱で、αを誘惑する害獣のような存在だから……
誰にも好まれない、臭いフェロモンを撒き散らす存在でしかないから……
父さんも、母さんも、兄さんも……
僕のこの臭いのせいで嫌な顔をする。
番だった彼も、僕のニオイが嫌いだった。
誰にも好まれない、悪臭でしかない僕のニオイ。
Ω臭い、フェロモンのニオイ。
兄さんのお嫁さんが嫁いでくる日が決まった。
彼と別れて7ヶ月。
発情期が来るたびに罵られる。
番相手はもう居ないのに、捨てられたのに、彼を求めるようにフェロモンが出てくる。
抑制剤で抑えようとしても、部屋中にニオイが充満してしまい、廊下にも漏れ出てしまう。
身体の熱を開放することも出来なくて、苦しくて、悲しくて……
熱にうなされながら、何度も助けを求めた。
捨てられたΩなんかを、誰も助けてなんてくれないのに……
少しずつ、少しずつ、精神が蝕まれていくのを感じた。
久々に父さんが僕の居る部屋にやってきて、「Ω専用の精神治療医療病棟」と書かれたパンフレットを渡してきた。
【捨てられたΩの死処】って言われる、劣悪な環境の施設。
僕でも聞いたことのある、最悪の場所。
「二度と『桐ヶ谷の名を名乗るな』。お前がこの家の敷居を跨ぐことも許さん」
この家に帰って来て、最初で最後の父さんからの言葉。
この日、僕は家族からも捨てられた。
親子の縁も、兄弟の縁も、家族の縁も……
名字すらなくなってしまった。
この日、施設の前に放置されて、自ら足を運ぶしかなかった。
死ぬまでずっとひとりぼっち。
誰にも必要とされない僕にピッタリの場所。
でも、壊れ始めた心には、そんなのどうでも良かった。
もう何も感じたくなかった。
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ずっと、ずっと……そうだったから……
もう、全部疲れちゃった。
死ぬなら、早く死んでしまいたかった……
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