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3章:紹介の儀

紹介の儀 その後 2-1

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「一体何をするつもりだい?」
「……慈善活動、かしら? 王妃サマ、一応やっているだろうけど……別の視点から、ね」

 エルヴィスは興味深そうにアナベルを見た。
 アナベルはもう一口ワインを口にすると、じっとエルヴィスを見つめる。
 見つめ合うこと数十秒。
 互いにプッと吹き出した。
 紹介の儀で張り詰めていた緊張感が、ようやく切れた気がする。
 アナベルはワイングラスをサイドテーブルに置くと、胸元に手を置いた。

「ところで、エルヴィス陛下。わたくしがどうしてここへ来たと思いますか?」

 ベッドから立ち上がり、エルヴィスに向けて背を向ける。

「……私は言ったはずだぞ?」

 エルヴィスもワイングラスをサイドテーブルに置いて、背を向けたままのアナベルへと近付き、その細い肩に手を置く。
 彼の体温を感じて、アナベルは顔を上げ、そろりと窺うように視線を移動させた。
 そっとアナベルを後ろから抱きしめる。アナベルは目を伏せて、それから彼の腕に自分の手を重ねた。

「――一度だけしか言わないから、よく聞いてね」

 ゆっくりと、アナベルが声を出す。

「――どうか、わたくしを陛下のものにして」

 ――身も心も、あなたのものに。
 エルヴィスは目元を細めて、それからぎゅっとアナベルを抱きしめる力を入れた。
 ゆっくりと力を抜いて、アナベルから少し離れると彼女はエルヴィスのほうへと体を向けて、それからふんわりと微笑んだ。

「――……」

 その笑みに、引き込まれるようにエルヴィスが手を伸ばし、アナベルの頬に触れた。
 緩やかに近付いて来るエルヴィスに、アナベルは静かに目を閉じた。
 思っていた場所ではなく、額に唇が落とされた。その感触にぱちり、と目を開けると、意地悪そうに目元を細めたエルヴィスと視線が合った。

「――っ」

 子ども扱いを受けているような気がして、アナベルは彼の頬を両手で包むと、エルヴィスは驚いたように目を大きく見開く。
 背伸びをして、自ら口付けしようとしたアナベルだが、身長差でうまくはいかなかった。
 エルヴィスが「――ちょっと待って」とアナベルの手を掴んでベッドへと座り、アナベルを自分の膝の上に乗せた。

「さあ、どうぞ?」

 からかうような、それでいて真剣さを含んだ声色でアナベルへ向けて目を閉じる。
 アナベルは、そっと彼の頬に手を添えて、ゆっくりと顔を近付けて唇を重ねた。
 それから、様子を窺うように離れると、エルヴィスはぐいっとアナベルの体を抱きかかえるように腰に手を置き、自分の元に引き寄せた。

「――後悔はしないな?」
「しない。だって、あたしが選んだの、あなたを」

 顔を赤らめながらも、しっかりとした口調でそう伝えるアナベルに、エルヴィスは「そうか」と口にして、アナベルの髪にキスをしてから、アナベルの体をベッドに倒し、唇を深く重ねた――……。
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