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3章:紹介の儀

紹介の儀 その後 4-2

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「……アナベル様は本当に、ミシェル様がお好きなのですね」

 嬉しそうに微笑むメイドたちに、アナベルは照れたようにはにかんで肯定のうなずきを返した。

「ミシェルさんはあたしの剣舞の師匠でもあったし、いろいろなことを教えてくれた恩人なの。あたしを娘のように可愛がってくれて……」

 ――最期まで、アナベルのことを気に掛けていたミシェルのことを思い出し、アナベルは口を閉じた。
 アナベルにとってミシェルは、一番尊敬できる人であり、姉であり、母だった。

「……王妃サマは、一体どれだけの人を不幸にして来たのかしらね……」

 ミシェルのことを思い出し止めていた手を動かす。

「――終わらせなくちゃいけないわ」

 顔を上げて意志の固い強いまなざしでメイドたちを見るアナベル。そのまなざしに、メイドたちは射貫いぬかれたように息を飲む。

「……はい、アナベル様。終わらせましょう」

 メイドの言葉に、アナベルは笑みを浮かべた。

「――そして、始めましょう。脅威きょういのない暮らしを」

 アナベルの言葉に、メイドたちも微笑みを浮かべる。
 王妃イレインの噂話を集め、その話が確かかどうかを確認する。地道ではあるが、証拠を掴むためにも一歩ずつ進んでいくしかない。

(――それに、いざとなったらあたしの魔法がある)

 ――幻想の魔法。これをうまく利用できれば、役に立つだろうと考えて、ペンを置いた。

「……それにしても、なんだかこの内容の噂って、まるで怖い話のようね……」

 書き込んだ紙を見て、げっそりとした表情を浮かべるアナベル。

「そうですね。噂だから脚色きゃくしょくが強くなっているのかもしれません」
「実際はどうかわからないものね……」
「事実は小説より奇なり、かもしれませんよ?」
「これ以上の可能性もあるとは、考えたくないわぁ……」

 じっと紙を見つめるアナベルに、メイドたちは「休憩しましょう」とお茶を用意する。手際よく淹れられたお茶を渡されて、アナベルが一口飲んだ。ほう、と息を吐くと、リラックス出来たような気がした。

「美味しい……」
「ありがとうございます。お茶を淹れるのは得意なんです」

 自慢気に胸を張るメイドに、アナベルは「すごいわねぇ」と声を漏らす。

「何年もお茶を淹れ続けた成果ですわ」

 と、嬉しそうに微笑むメイドに、アナベルは「なるほど」と納得した。
 自分の剣舞だって、最初の頃はとても見せられるものではなかった。
 だが、練習に練習を重ねた結果、人々をせるものになったと自負している。

(あたしに出来ること――……)

 アナベルはもう一度ペンをとり、紙に向かい合う。真っ白な紙に今後やりたいことを書き込んでいくと、メイドたちは興味深そうにそれを見ていた。
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