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14話
しおりを挟む「ユニコーンの乙女の加護は、国に居るだけで得られるものですから、イザベラ様はどうかその心を持ったまま成長していただきたいものです」
≪イザベラは優しいからね~!≫
「あ、ありがとうございます……。では、わたくしはこれで失礼しますね」
ソファから立ち上がって頭を下げる。一緒にアリコーンもぺこっと頭を下げた。ランシリル様が「はい」と微笑み、わたくしたちは部屋に戻ることにした。……戻る時にも、ユニコーンの信者たちがアリコーンに向けてひれ伏していたから、なんとも言えない気持ちになった……。
「ヒューバート様、ジェレミー様、ありがとうございました。わたくしたちは、今日は休ませていただきますね」
「いえ、それではごゆるりとお休みください」
「何かあったら我々をお呼びください」
そう言ってわたくしに向けて頭を下げる二人……。わたくし、そんなに立派な人間じゃないのに……。
……これもユニコーンの乙女の扱いってことなのかなぁ……。
わたくしはネグリジェを取り出して着替えた。着替えは一人でも出来る。いや、大抵のことは一人でも出来る。子爵家の令嬢だったとはいえ、何もできない子になるよりは、とお母様が一人で出来ることはやること、と言って教えてくれたのだ。
そして、趣味らしい趣味もなく、友達と呼べるのもアリコーンくらいしか居ないわたくしの出来上がり。アリコーンは必ず家に遊びに来ていたから、あまり外で遊ぶこともなかったしね。お茶会もわたくしに招待状をくれる令嬢は居なかったし、ディラン殿下との婚約を発表されてからは、この世間知らずな子をどうやって取り入ろうか、と言うような視線をひしひしと感じていた。
わたくしの味方は家族とアリコーンだけ。そんな日々を過ごしていたの。
わたくしがユニコーンの乙女と言うことを隠していたから……と、言うよりはやっぱりアレよね。アリコーンと一緒に遊んでいたほうが楽しかったし……。
≪イザベラ、着替えた?≫
「ええ、目を開けて良いわよ」
こう言う時、アリコーンはとっても紳士だ。女の子の着替えを覗くのは絶対許されないこと! と目を閉じてくれる。……幼い頃から一緒に居るから、あんまりそう言うの気にしていないわたくしのほうがおかしいのかもしれないけれど……。
≪格好良い人たちだったね≫
「ヒューバート様とジェレミー様のこと?」
≪うん。強そうだった!≫
……アリコーンの格好いいは強そうな人ってことなのかしら。それはそれで可愛い思考だな、と思う。
≪ボクねぇ、ずっと乙女を守る強いユニコーンになりたかったんだ。突然変異で翼生えちゃってアリコーンになったけど! でも、いつかイザベラを乗せて空を飛んであげるね!≫
「ふふ、それは楽しみね。……ところで、アリコーン。ずっと気になっていたのだけど……あなたのお母様たちって……」
≪長生きだよ~。人間の一生って短いから、ボクもすぐにイザベラとお別れしなきゃいけなくなるのかなぁ……やだなぁ……≫
その長生きなユニコーン親子の子であるアリコーンって、一体何歳なのかしら……?
子どもっぽい言動だから幼い子だとずっと思っていたのだけど、アリコーンはわたくしが物心をつけた時から変わらない気がして……。
≪イザベラ?≫
「……何でもないわ。今日は疲れちゃったから休むね。おやすみなさい、アリコーン」
≪おやすみ、イザベラ!≫
わたくしはそう言ってベッドに潜り込んで目を閉じた。色々ありすぎて頭の中を整理するためにも休息が必要だ。子爵から男爵になったり、それによってお父様が研究が出来る! とかなり喜んでいた気がした。
……と言うか、ランシリル様とお父様が血縁関係にあったとは…………あ、待って、それじゃあわたくしもランシリル様と親戚ってことになるのでは……?
そんな考えがぐるぐると頭の中を巡っていたけれど、慣れない馬車での移動と転移魔法で疲れていたのだろう、気が付けばわたくしは夢の中に落ちていた――……。
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