【完結】婚約破棄されたユニコーンの乙女は、神殿に向かいます。

秋月一花

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35話

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「初代のユニコーンの乙女は、神様に頼んで自分とユニコーンの死後、魂を細かく分けたんだって。ユニコーンに愛される少女の助けになれたらって……。魂に惹かれているのかはわからないけど、選ばれていた少女には彼女の魂が宿り、ユニコーンにも初代の魂が宿っていた……らしいよ。まぁ、それも現在のユニコーンの乙女――つまり、イザベラとボクで最後みたいだけど……」
「わたくしたちが、最後の……」

 ……だから、この杖を託してくれたのかしら……?
 杖を握っていると、何だか力が溢れて来るの。……きっと、初代のユニコーンの乙女は本当にユニコーンのことが大切だったんだわ……。

「……でもね、彼らとボクは違う」
「リアン?」
「ユニコーンと乙女の関係って、大体ユニコーンが乙女に対して親のような守り方をしていたんだ。父親のように娘を守る……そんな関係。ボクらと人間の寿命は違うし、中には本気で好きになって添い遂げようとした人たちもいる。……物語になったのは、きっとそう言う人たち。……ボクは、後者なんだ」

 ユニコーンの乙女が居ると、国が豊かになるというのは……ユニコーンの親心だったのかしら……? そして、確かに物語のモデルとなる人たちもいるのだろう。娘を豊かな国ですくすくと……って考えていたのかもしれない。情に深いな……って考えていたら、リアンはわたくしに真剣な目を向けながらそう言った。
 ――後者。それは……、リアンが、わたくしと添い遂げたいと言うこと……なの……?

「……イザベラが好きだよ。……ずっと好きだったんだ……」
「……リアン……。ありがとう、リアン。とても嬉しいわ……」
「ど、どうしたの、イザベラ、泣かないで……」

 慌てたようなリアンの声に、わたくしは自分の頬に触れる。ハンカチを取り出してそっと涙を拭い微笑みを浮かべる。リアンとこうして話せること、それがとても嬉しくて……、リアンの言葉が心の中に沁み込んでいく。
 おろおろとしているリアンに、わたくしは手を伸ばして彼の手をぎゅっと握った。

「イザベラ?」
「……わたくし、リアンが好きよ。大好き。――大好きなの……」

 わたくしの言葉に、リアンは目を大きく目を見開いて、それから言葉を噛み締めるようにぎゅっと目を閉じると、すぐに目を開けて頬を赤く染めた。

「本当? 本当に?」
「ええ。わたくしが添い遂げたいと思うのは、あなただけ……」

 ぱぁっとリアンの表情が明るくなる。そして、感極まったかのように、ぎゅうっとわたくしを抱きしめた。わたくしもリアンを抱きしめる。ドキドキと胸が高鳴るのを感じて、わたくしの頬も赤くなっただろうな、と思った。
 そっと静かに離れて、今度はゆっくりと顔が近付いて来る。唇と唇が触れそうになって、慌てて目を閉じた瞬間――……。

「イザベラ! アリコーン様が目覚めたって本当かい!?」

 お父様が大きな音を立てて、わたくしの部屋の扉を開けた。
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