BUDDY-0-

TERRA

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BUDDY-0-MONSTER

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この世界にはもう、音というものがほとんど残っていなかった。
波の満ち引きも、車のエンジンも、子どもの笑い声も。
吹きすさぶ風は砂を運び、鉄と塩の錆びた匂いが空気に焼きついている。
廃墟と瓦礫のあいだを、ひとつの影が歩いていた。

リカルド。
そう呼ばれていた男は、もはや人の姿ではなかった。
黒い外套はところどころ裂け、膨れ上がった肉体は獣のように歪んでいた。
皮膚は灰に近い色に変色し、背中には未発達な翼の残骸がこびりつくように突き出していた。
眼は鷹のごとく鋭く光り、耳は鋭角に尖っている。
その歩みは、地を這う獣に近かった。
何ヶ月も抑制剤を口にせず、この姿のままでただ、生き延びていた。
目的も、言葉も、記憶さえも。もはや、曖昧だった。

ただひとつ、狩るべき対象の匂いだけは失っていなかった。
彼の視線が、遠くの煙に留まる。
瓦礫の中に、血のにおいが混じっている。
獣のような唸り声。
本能が反応するより先に、足が地を蹴っていた。

廃工場の残骸、その裏手の路地で、三体の異形が蠢いていた。
どれも、かつて兵器として造られ、廃棄されたキメラの末裔。
それはリカルド自身と同類であり、同時に敵だった。

触手に巻かれていたのは、小さな少年だった。
白いシャツは引き裂かれ、金色の髪が血に濡れている。
まだ生きている。
その命の灯に、なぜかリカルドのなかの何かが疼いた。

次の瞬間、地を裂く衝撃音が鳴った。
戦闘というよりも、処刑だった。
リカルドは走るというより跳躍し、最初のキメラの頭部を砕いた。
骨が軋み、肉が飛散する。
獣の触手が向かってくるが、彼の鋭い爪がそれを切り裂く。
翼の残骸は使い物にならなくとも、脚力と反射だけで充分だった。

二体目は牙を剥いたが、すでに視界の外から爪が喉を裂いていた。
残る一体が悲鳴を上げる。
だが、その音さえも一撃で終わる。
裂かれた肉、飛び散る血、砂と混ざり、周囲は死の匂いで満たされた。

リカルドは荒い呼吸のまま立ち尽くす。
血で濡れた脚が、瓦礫に沈む。
ただ、眼だけが少年を見据えていた。

少年は怯えていなかった。
むしろ、見つめ返してくる眼差しは、驚きよりも安心に近いものだった。

リカルドは身をかがめ、少年の体に手を伸ばした。
人ではないその手に、少年が小さくうなずいた。
少年の体温は、かすかに震えていたが、それでも彼を拒まなかった。
小さな手が、血に汚れた自分の手を、そっと握っていた。
それは命を奪う手ではなく、命を受け取る手だった。

リカルドのなかで、どこかが軋んだ。
理性か、本能か。
だが、確かに何かが、もう一度動き出していた。
灰の中に、わずかな光が灯る音がした。

世界が、静かに回り始めていた。
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