One Night Lovers

TERRA

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Night & Day

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朝の空気は静かだった。  
まだ慣れない部屋。  
家具は揃っているのに、どこか空間が落ち着かない。  

先嶺はキッチンのカウンターの前に立ち、ぼんやりとマグカップを指先でなぞっていた。  
新しい生活。  
男性との同居。  
それが「恋人としての時間」であることに、まだ実感が持てない。  

「コーヒー、飲みます?」  

ふいに後藤の声が響く。  
スウェットの裾を軽くまくり、ポットから細く湯を注ぐその仕草は妙に自然だった。  

「……うん。」  

何気なく答える。  
けれど、言葉を発した瞬間、胸の奥が妙にざわついた。  

マグカップが目の前に置かれる。  
温かな湯気が立ち上がり、柔らかな香りが広がる。  
先嶺はゆっくりと手を伸ばし、カップを持ち上げようとした。  

その時。  
後藤の指先が、ほんの一瞬、先嶺の手の甲に触れる。  

たったそれだけのことなのに、思わず動きを止めてしまう。  

「……あ、ごめん。」  

先嶺は小さく言う。  
けれど、声が僅かに掠れていたのが自分でも分かった。  

後藤は何も気にした様子もなく、軽く微笑む。  

「大丈夫っすよ。」  

その柔らかい声が、妙に耳に残る。  

カップを持ち上げ、一口飲む。  
けれど、コーヒーの温度がどこか遠くに感じられた。  

「これが、恋人の生活なのか?」  

ふとそんなことを考える。  

まだ、この関係に馴染めていない。  
けれど、それを後藤は何も言わず、ただ自然に「二人の日常」として過ごしている。  

そのことに、胸の奥で微かな熱が広がる。  

そして先嶺は、初めて少しだけ目を伏せた。  
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