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恋人ごっこ
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昼休み。
パンを買って教室に戻ると、自分の席にアイツが座っていた。
「……お前、また勝手に座ってんのかよ。」
サイコはいつもの調子で、首をかしげて微笑む。
「うん。君の匂いがするからネ。」
「……は?」
思わず固まる。
パンを持ったまま立ち尽くす不破をよそに、サイコは机に頬杖をついて、その様子を見上げていた。
胸の奥で、何かが跳ねる。
ただの冗談にしては、やけに生々しい言い方。
それなのに、声はやけに穏やかだった。
いつもと同じ。
しかし、今日は……距離が近い。
昼食の後も。
廊下ですれ違った際に肩がかすめた。
プリントを手渡すとき、サイコの指先が不破の指に、ふわっと触れた。
わざとなのか、偶然なのか。
判断がつかない曖昧さが、やけに神経に触る。
背中に熱を感じる。
ふと振り返れば、またサイコがこっちを見ていた。
そんなことが、何度も続いた。
……気のせいじゃ、ない。
「なぁ……お前、ちょっと近すぎんだよ。」
耐えきれず、つい口にする。
けれどサイコは、まったく悪びれずに口を開いた。
「そう? でも、君は逃げないネ。」
喉が詰まりかけた。
反論の言葉が出てこない。
確かに、逃げなかった。
いや、逃げられなかった。
肩が触れても、指が重なっても、そのまま受け止めて。
ほんの一瞬の出来事に、心がこんなにも引っかかることを、不破自身がいちばん戸惑っていた。
(……なんなんだよ、これ)
(なんで、こんなに気になる)
(あいつの声が、仕草が、笑い方が)
(俺……まさか)
脳裏に浮かびかけた言葉に、自分でストップをかける。
わけがわからないまま顔を上げた時、サイコと目が合った。
サイコは変わらず、まっすぐにこちらを見ていた。
その視線に、咄嗟に目をそらす。
心臓がドクン、と跳ねる音がした。
放課後、家に帰っても、その感触は胸に残っていた。
肩のぬくもり。
指先の触れた感覚。
目を逸らした時、サイコがどんな表情をしていたのか。
見られなかったことが、やけに悔やまれた。
その夜。
机にひらいたサイコのノートには、こんな文字が綴られていた。
不破くんと居ると、あったかい。
だけど近づき過ぎると、火傷しそうで少し怖い。
パンを買って教室に戻ると、自分の席にアイツが座っていた。
「……お前、また勝手に座ってんのかよ。」
サイコはいつもの調子で、首をかしげて微笑む。
「うん。君の匂いがするからネ。」
「……は?」
思わず固まる。
パンを持ったまま立ち尽くす不破をよそに、サイコは机に頬杖をついて、その様子を見上げていた。
胸の奥で、何かが跳ねる。
ただの冗談にしては、やけに生々しい言い方。
それなのに、声はやけに穏やかだった。
いつもと同じ。
しかし、今日は……距離が近い。
昼食の後も。
廊下ですれ違った際に肩がかすめた。
プリントを手渡すとき、サイコの指先が不破の指に、ふわっと触れた。
わざとなのか、偶然なのか。
判断がつかない曖昧さが、やけに神経に触る。
背中に熱を感じる。
ふと振り返れば、またサイコがこっちを見ていた。
そんなことが、何度も続いた。
……気のせいじゃ、ない。
「なぁ……お前、ちょっと近すぎんだよ。」
耐えきれず、つい口にする。
けれどサイコは、まったく悪びれずに口を開いた。
「そう? でも、君は逃げないネ。」
喉が詰まりかけた。
反論の言葉が出てこない。
確かに、逃げなかった。
いや、逃げられなかった。
肩が触れても、指が重なっても、そのまま受け止めて。
ほんの一瞬の出来事に、心がこんなにも引っかかることを、不破自身がいちばん戸惑っていた。
(……なんなんだよ、これ)
(なんで、こんなに気になる)
(あいつの声が、仕草が、笑い方が)
(俺……まさか)
脳裏に浮かびかけた言葉に、自分でストップをかける。
わけがわからないまま顔を上げた時、サイコと目が合った。
サイコは変わらず、まっすぐにこちらを見ていた。
その視線に、咄嗟に目をそらす。
心臓がドクン、と跳ねる音がした。
放課後、家に帰っても、その感触は胸に残っていた。
肩のぬくもり。
指先の触れた感覚。
目を逸らした時、サイコがどんな表情をしていたのか。
見られなかったことが、やけに悔やまれた。
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