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よんしょう!
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裏山に移動するに際して、筋肉特戦隊たちはそれぞれ闇の使徒を呼び出した。ちなみに呼ばれて飛び出てきた闇の五天王たちの第一声は「え、こわ」だった。
やはり闇の使徒の美意識的に、筋肉特戦隊たちの圧倒的な筋肉量と四方八方に放射される濃さは「アウト」だったらしい。
ビビりまくる闇の五天王を動かしたのは 黒点の「お給料の査定に響きますよ」というひと言だった。人間界同様、魔界も世知辛いらしい。
こっちの四天王たちがそれぞれの婚約者を転移陣で運び、アリーとスティラは当然ながらマクシミリアン(が呼び出した闇の使徒イベル)の転移陣で、まばたきする間に裏山に移動した。
事前に入念な準備をしていたらしく、地面にはレジャーシートが敷かれ、そこらじゅうの木々にランタンが吊り下げてある。キャンプファイヤーのために組み上げられた薪に向けて、マクシミリアンが手をかざした。
「火の精霊、勇敢で美しい老女よ──あそこにぶわっと火をつけて欲しいです!」
何とかカッコよくしようとする努力の垣間見える呼びかけに、火のレジェンドがどっこらしょと出てくる。
高齢者らしい初動のわりに、繰り出された炎は高火力だった。ぼんっと爆発するように火柱が立ち上る。
勢いよく枯れ枝が燃え始め、火の粉が空高く舞い上がった。西翼の裏山の空気が一気に熱を帯びる。四天王、そしてその婚約者たちからキャッキャウフフと歓声が上がった。
山頂でワルツもなんなので、全員でマイムマイムを踊るなどして親交を深めた。
アリーもスティラも、元親友たちも気合いの入ったドレス姿。はっきり言って異様な光景だが、汚れても水魔法で簡単に綺麗にできるので問題ない。
「アリー、とても素敵だ。その贅肉のない引き締まった体、まるで研ぎ澄まされた刃。夜空の星よりも美しい」
マクシミリアンが頬を染め、キャンプファイヤーで炙った串焼きの肉を十本、花束のようにして差し出してきた。
<褒め言葉が陳腐だしズレてるし、そんなに食べられないし>
過去9回のマクシミリアンの洗練された物腰、捧げてくれた詩や歌や花、そんなものは望むべくもない。日常生活を送るうえで不必要なほどの筋肉量と引き換えに、彼は甘ったれたものを一切合切捨て去ったのだろう。
「ありがとうございます。えーっと、とりあえずスティラ様と1本ずつ頂きますね。はい、スティラ様。まだ熱いのでふーふーしてくださいね」
「わーい、いただきまーす」
スティラが目を輝かせて、あむっと肉にかぶりつく。
アリーはそれを見届けてから、現在は貧乏男爵令嬢であるアリーからしてもワイルドすぎる野外料理に、開き直ってあーんと口を開けた。
「……美味しい」
「そ、そうか! 数日前に、皆でイノシシを捕まえて血抜きしておいたんだ。水の精霊が協力してくれてな、塩水で何度も丁寧に洗ったから、臭みが全くないだろう!」
「そうですか、ご自分たちで捕まえたんですか。塩コショウだけでも、とっても美味しいです」
もはや引くとか驚くのを通り越して、微笑ましくすら思える。純粋に女性陣を喜ばせたくて頑張っちゃったんだろうし、精霊たちの力を借りて下処理し、火を通しているのだから衛生面も問題なさそうだし。
他の面々はカップル席(レジャーシート)に座り、イチャラブ展開を繰り広げ中だ。四天王たちがかいがいしく肉やらじゃがいもやらを捧げる姿は微笑ましいし、それを笑顔で受け取る元親友たちの胆力がすごい。
<さすが、9歳以降の急激な方向転換を、戸惑いつつも見守ってきただけのことはあるわ……>
過去9回の人生では、マクシミリアン9歳、公爵令嬢アリーシア7歳で必ず婚約が調っていた。四天王カップルたちも、後に続くようにバタバタ婚約が決まったはずだから、どのカップルも付き合いは相当長い。
聖女ミアを仲間はずれにしただの、足を引っかけて転ばせただの、階段に細工をして転落させただの、清々しいまでの冤罪でアリーシアが死刑執行された後、元親友たちも決して幸せな結末は迎えなかったはずだ。
<守りたい、彼女たちのあの笑顔。そもそも前回までが聖女ミアに都合が良すぎたのよ。そりゃ呼び出して頬の一つもぶん殴ってやりたいって思ってたけど、実際にはやってないし>
吹っ掛けられた罪状のどれもこれもが嘘だったのに、過去のアリーシアにはそれを払拭することができなかった。
「わー、お兄様たちの絵姿集、おもしろーい。これとこれ、まったく顔が違うねー」
スティラの言葉にアリーははっと我に返った。スティラが串焼き肉を頬張りながら、マリリンが持ってきてくれた筋肉特戦隊たちの成長記録をめくっている。
胸に付けたブローチもどきのたっくんがうずうずしているので、アリーも「どれどれ」と絵姿集を覗き込んだ。
<マクシミリアンが王太子になった6歳からの全員集合の記録かあ。あったなあこんなの>
7歳、8歳、9歳までの5人の絵姿は、公爵令嬢の遺産として残っているのと寸分たがわない。だが10歳からいきなり地獄の様相を呈していた。
誰が見ても漏れなくドン引きする作画の変わりっぷり。線の細い王子様たちは、9歳の誕生日を境に夢を見始めて修業を始めたという話だが、よく考えたら彼らの研鑽を一体誰が支えたのだろう。
「どのお兄様たちも、ぜーんぶカッコいいね!」
途中からコンセプトがおかしくなっている絵姿集を見ながら、スティラがにっこり微笑んだ。端的に言って天使だし懐が深いし、そんな主君が誇らしい。しかし若干視力が心配になってくる。
「殿下たちって、9歳からいきなり山籠もりしたわけではないですよね。最初にトレーニングを始めた頃って、どなたかの手助けがあったんですか?」
「ああ、もちろん。父上や母上、それに周囲の大人たちは、俺が乱心したと血の涙を流す勢いで止めにかかったが、叔父であるラドフェン公爵だけは理解があった。彼が面白がって、あれこれトレーニング機器を買い集めてくれなかったら、今の俺たちは無い」
ラドフェン公爵! アリーが目をむいた瞬間、遠くの方で「スティラちゃーん」と呼ぶ声がした。
ものすごくはっきりした空耳かな? と思ったが、声はどんどん近づいてくる。
「スティラちゃーん、後見人の叔父さんが来ましたよー! もう、せっかく西翼に会いに来たのに、なんで裏山なんかにいるんですかっ!」
ひょいひょいと軽快な足取りで、飛び跳ねるように山を登ってくる御仁がいる。アリーは高速で過去9回の記憶をさらった。顔立ちに声、髪型、服装、そのすべてがラドフェン公爵であることを示している。だがその筋肉量は、清々しいほどに違っていた。
やはり闇の使徒の美意識的に、筋肉特戦隊たちの圧倒的な筋肉量と四方八方に放射される濃さは「アウト」だったらしい。
ビビりまくる闇の五天王を動かしたのは 黒点の「お給料の査定に響きますよ」というひと言だった。人間界同様、魔界も世知辛いらしい。
こっちの四天王たちがそれぞれの婚約者を転移陣で運び、アリーとスティラは当然ながらマクシミリアン(が呼び出した闇の使徒イベル)の転移陣で、まばたきする間に裏山に移動した。
事前に入念な準備をしていたらしく、地面にはレジャーシートが敷かれ、そこらじゅうの木々にランタンが吊り下げてある。キャンプファイヤーのために組み上げられた薪に向けて、マクシミリアンが手をかざした。
「火の精霊、勇敢で美しい老女よ──あそこにぶわっと火をつけて欲しいです!」
何とかカッコよくしようとする努力の垣間見える呼びかけに、火のレジェンドがどっこらしょと出てくる。
高齢者らしい初動のわりに、繰り出された炎は高火力だった。ぼんっと爆発するように火柱が立ち上る。
勢いよく枯れ枝が燃え始め、火の粉が空高く舞い上がった。西翼の裏山の空気が一気に熱を帯びる。四天王、そしてその婚約者たちからキャッキャウフフと歓声が上がった。
山頂でワルツもなんなので、全員でマイムマイムを踊るなどして親交を深めた。
アリーもスティラも、元親友たちも気合いの入ったドレス姿。はっきり言って異様な光景だが、汚れても水魔法で簡単に綺麗にできるので問題ない。
「アリー、とても素敵だ。その贅肉のない引き締まった体、まるで研ぎ澄まされた刃。夜空の星よりも美しい」
マクシミリアンが頬を染め、キャンプファイヤーで炙った串焼きの肉を十本、花束のようにして差し出してきた。
<褒め言葉が陳腐だしズレてるし、そんなに食べられないし>
過去9回のマクシミリアンの洗練された物腰、捧げてくれた詩や歌や花、そんなものは望むべくもない。日常生活を送るうえで不必要なほどの筋肉量と引き換えに、彼は甘ったれたものを一切合切捨て去ったのだろう。
「ありがとうございます。えーっと、とりあえずスティラ様と1本ずつ頂きますね。はい、スティラ様。まだ熱いのでふーふーしてくださいね」
「わーい、いただきまーす」
スティラが目を輝かせて、あむっと肉にかぶりつく。
アリーはそれを見届けてから、現在は貧乏男爵令嬢であるアリーからしてもワイルドすぎる野外料理に、開き直ってあーんと口を開けた。
「……美味しい」
「そ、そうか! 数日前に、皆でイノシシを捕まえて血抜きしておいたんだ。水の精霊が協力してくれてな、塩水で何度も丁寧に洗ったから、臭みが全くないだろう!」
「そうですか、ご自分たちで捕まえたんですか。塩コショウだけでも、とっても美味しいです」
もはや引くとか驚くのを通り越して、微笑ましくすら思える。純粋に女性陣を喜ばせたくて頑張っちゃったんだろうし、精霊たちの力を借りて下処理し、火を通しているのだから衛生面も問題なさそうだし。
他の面々はカップル席(レジャーシート)に座り、イチャラブ展開を繰り広げ中だ。四天王たちがかいがいしく肉やらじゃがいもやらを捧げる姿は微笑ましいし、それを笑顔で受け取る元親友たちの胆力がすごい。
<さすが、9歳以降の急激な方向転換を、戸惑いつつも見守ってきただけのことはあるわ……>
過去9回の人生では、マクシミリアン9歳、公爵令嬢アリーシア7歳で必ず婚約が調っていた。四天王カップルたちも、後に続くようにバタバタ婚約が決まったはずだから、どのカップルも付き合いは相当長い。
聖女ミアを仲間はずれにしただの、足を引っかけて転ばせただの、階段に細工をして転落させただの、清々しいまでの冤罪でアリーシアが死刑執行された後、元親友たちも決して幸せな結末は迎えなかったはずだ。
<守りたい、彼女たちのあの笑顔。そもそも前回までが聖女ミアに都合が良すぎたのよ。そりゃ呼び出して頬の一つもぶん殴ってやりたいって思ってたけど、実際にはやってないし>
吹っ掛けられた罪状のどれもこれもが嘘だったのに、過去のアリーシアにはそれを払拭することができなかった。
「わー、お兄様たちの絵姿集、おもしろーい。これとこれ、まったく顔が違うねー」
スティラの言葉にアリーははっと我に返った。スティラが串焼き肉を頬張りながら、マリリンが持ってきてくれた筋肉特戦隊たちの成長記録をめくっている。
胸に付けたブローチもどきのたっくんがうずうずしているので、アリーも「どれどれ」と絵姿集を覗き込んだ。
<マクシミリアンが王太子になった6歳からの全員集合の記録かあ。あったなあこんなの>
7歳、8歳、9歳までの5人の絵姿は、公爵令嬢の遺産として残っているのと寸分たがわない。だが10歳からいきなり地獄の様相を呈していた。
誰が見ても漏れなくドン引きする作画の変わりっぷり。線の細い王子様たちは、9歳の誕生日を境に夢を見始めて修業を始めたという話だが、よく考えたら彼らの研鑽を一体誰が支えたのだろう。
「どのお兄様たちも、ぜーんぶカッコいいね!」
途中からコンセプトがおかしくなっている絵姿集を見ながら、スティラがにっこり微笑んだ。端的に言って天使だし懐が深いし、そんな主君が誇らしい。しかし若干視力が心配になってくる。
「殿下たちって、9歳からいきなり山籠もりしたわけではないですよね。最初にトレーニングを始めた頃って、どなたかの手助けがあったんですか?」
「ああ、もちろん。父上や母上、それに周囲の大人たちは、俺が乱心したと血の涙を流す勢いで止めにかかったが、叔父であるラドフェン公爵だけは理解があった。彼が面白がって、あれこれトレーニング機器を買い集めてくれなかったら、今の俺たちは無い」
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