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よんしょう!
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<ひとつわかった。聖女ミアは、ただ逆ハーレムを形成して喜んでいるだけの女ではなかった>
アリーはぐっと拳を握り締めた。
ミアはまだ、マクシミリアンとラドフェン公爵の関係性の変化を知らないはずだ。
彼女は王太子を魅了する気満々だったし、さらに王位継承の確執のある王弟まで魅了しようとした。つまり絶対に両立しないはずの「王太子妃」と「女公爵」、どちらもの座を狙おうとしたことになる。
<もしかしてミアは、色んな可能性を掴み取りにかかっているの? あの子の目標とするところが『地位』であるのなら、道筋はどこかで分岐すると考えるのが自然……>
アリーの脳内に、弟のジャンが夢中になって読んでいた『アドベンチャーブック』が思い浮かんだ。
読む側の選択によって、ストーリーの展開と結末が変わるように作られていて、読むというよりは遊ぶという感覚の方が強い。
物語はいくつもの段落にわけられていて、各段落には番号がついている。
読者はそれを頭から順番に読むのではなく、段落の末尾で「●●なら③へ」「××なら⑦へ」というふうに、複数の行き先を任意選択しながら進んでいくのだ。
多種多様に変化するストーリーが面白くて、ジャンは夢中になって読んでいた。
わりと目玉の飛び出るお値段がしたが、嫡男にメロメロな祖父母が『二分の一成人』、つまり10歳のお誕生日に買ってくれた。ちなみにオランドリアの男性の成人は20歳、女性は18歳だったりする。
<ミアはどう考えても、自分を主人公だと思ってる。あの子が現時点で、複数の結末に向かって進んでいる点は、アドベンチャーブックと同じ……>
遊び感覚で男性陣を落としまくり、死生観無視のチートな治癒魔法を連発しているのは、もしかしてミアにとって『オランドリア王国での人生』は遊びでしかないからなのか。
そう考えると、腹の底で怒りと困惑、恐怖、焦りなどが複雑に混ざり合って、得体のしれない震えが背筋を駆け上がってきた。
<アドベンチャーブックではどのルートを選んだとしても、絶対に通過するイベントっていうのがあったわ。まあ進んでいるストーリーによって、若干変化はあったけど……>
ジャンがしきりに勧めてくれたのと、遊んでみたら非常に面白かったので、アリーもアドベンチャーブックを読み込んでいる。
聖女ミアがアドベンチャーブック感覚で生きている──という推測は、当たらずとも遠からずな気がした。
<次にあの子が華々しく出てくるのは、来月の大舞踏会で間違いない。公爵令嬢アリーシアの処刑って、アドベンチャーブック内のイベントとして考えると、わりと序盤だったのかも……>
アリーは心の声にガードをかけていないので、今までの思考は黒点とブローチたっくんに届いているはずだ。しかし「頭がおかしくなったのか?」という声は聞こえてこない。
<マクシミリアン、ラドフェン公爵、ジェフリー、マーティン、スティーブン、クリス、前世で兄だったグランツ公爵家嫡男、あと隣国エルバートの王太子と第二王子……>
過去9回の人生で、聖女ミアに心酔していた人々の顔を思い浮かべる。国王陛下とか宰相様とか、その他にも権力者はいっぱいいたが、ミアは面食いっぽいので顔面偏差値が高い人だけピックアップしても、かなりの人数だ。
<でも、この人生は過去9回とは違う。ミアにとっては、思い通りに行かない世界になっている>
なぜか必ず聖女ミアに目の敵にされ、処刑されまくってきた公爵令嬢アリーシアは存在しない。
<ラドフェン公爵が耳にした『なんで女公爵ルートが開かないのかしら』『養女にしたいって言うはずなのに』っていうミアのつぶやき。もしあの子の中にアドベンチャーブック的なものがあるなら、ズレが生じるたびに何かをつぶやくに違いない>
《アリー、今あなた『ミアを挑発してやる』って思ってますね?》
《ご主人、我もくっついている部分が熱いぞ。体内で炎が燃えているな?》
黒点とたっくんのつぶやきに、アリーは心の中で「うん」とうなずいた。
<聖女ミアは治癒魔法はすごいけど、頭はあまりよくないから。彼女がこうなるって思ってる展開とのズレが生じると、そのたびにぽろっと何かをつぶやくと思うの。それを拾い集めれば、わかってくることがあるかもしれない。スティラ様の身の安全は確保されたし、わたし、ちょっと前に出てみることにする>
アリーは誇り高く顔を上げて、スティラを挟んで会話に花を咲かせているマクシミリアンとラドフェン公爵を見つめた。「ん?」と覇王がこちらを見る。
「どうした、アリー」
「殿下、ひとつ我儘を申し上げてよろしいでしょうか。お給料から差っ引いていただいて構いませんので、もう一着ドレスを仕立てたいのです。殿下のクラバットとおそろいの、深紅のドレスを」
アリーがそういうと、マクシミリアンは太い眉をちょっとあげて、それから「おそろい」と嬉しそうな表情になった。
アリーはぐっと拳を握り締めた。
ミアはまだ、マクシミリアンとラドフェン公爵の関係性の変化を知らないはずだ。
彼女は王太子を魅了する気満々だったし、さらに王位継承の確執のある王弟まで魅了しようとした。つまり絶対に両立しないはずの「王太子妃」と「女公爵」、どちらもの座を狙おうとしたことになる。
<もしかしてミアは、色んな可能性を掴み取りにかかっているの? あの子の目標とするところが『地位』であるのなら、道筋はどこかで分岐すると考えるのが自然……>
アリーの脳内に、弟のジャンが夢中になって読んでいた『アドベンチャーブック』が思い浮かんだ。
読む側の選択によって、ストーリーの展開と結末が変わるように作られていて、読むというよりは遊ぶという感覚の方が強い。
物語はいくつもの段落にわけられていて、各段落には番号がついている。
読者はそれを頭から順番に読むのではなく、段落の末尾で「●●なら③へ」「××なら⑦へ」というふうに、複数の行き先を任意選択しながら進んでいくのだ。
多種多様に変化するストーリーが面白くて、ジャンは夢中になって読んでいた。
わりと目玉の飛び出るお値段がしたが、嫡男にメロメロな祖父母が『二分の一成人』、つまり10歳のお誕生日に買ってくれた。ちなみにオランドリアの男性の成人は20歳、女性は18歳だったりする。
<ミアはどう考えても、自分を主人公だと思ってる。あの子が現時点で、複数の結末に向かって進んでいる点は、アドベンチャーブックと同じ……>
遊び感覚で男性陣を落としまくり、死生観無視のチートな治癒魔法を連発しているのは、もしかしてミアにとって『オランドリア王国での人生』は遊びでしかないからなのか。
そう考えると、腹の底で怒りと困惑、恐怖、焦りなどが複雑に混ざり合って、得体のしれない震えが背筋を駆け上がってきた。
<アドベンチャーブックではどのルートを選んだとしても、絶対に通過するイベントっていうのがあったわ。まあ進んでいるストーリーによって、若干変化はあったけど……>
ジャンがしきりに勧めてくれたのと、遊んでみたら非常に面白かったので、アリーもアドベンチャーブックを読み込んでいる。
聖女ミアがアドベンチャーブック感覚で生きている──という推測は、当たらずとも遠からずな気がした。
<次にあの子が華々しく出てくるのは、来月の大舞踏会で間違いない。公爵令嬢アリーシアの処刑って、アドベンチャーブック内のイベントとして考えると、わりと序盤だったのかも……>
アリーは心の声にガードをかけていないので、今までの思考は黒点とブローチたっくんに届いているはずだ。しかし「頭がおかしくなったのか?」という声は聞こえてこない。
<マクシミリアン、ラドフェン公爵、ジェフリー、マーティン、スティーブン、クリス、前世で兄だったグランツ公爵家嫡男、あと隣国エルバートの王太子と第二王子……>
過去9回の人生で、聖女ミアに心酔していた人々の顔を思い浮かべる。国王陛下とか宰相様とか、その他にも権力者はいっぱいいたが、ミアは面食いっぽいので顔面偏差値が高い人だけピックアップしても、かなりの人数だ。
<でも、この人生は過去9回とは違う。ミアにとっては、思い通りに行かない世界になっている>
なぜか必ず聖女ミアに目の敵にされ、処刑されまくってきた公爵令嬢アリーシアは存在しない。
<ラドフェン公爵が耳にした『なんで女公爵ルートが開かないのかしら』『養女にしたいって言うはずなのに』っていうミアのつぶやき。もしあの子の中にアドベンチャーブック的なものがあるなら、ズレが生じるたびに何かをつぶやくに違いない>
《アリー、今あなた『ミアを挑発してやる』って思ってますね?》
《ご主人、我もくっついている部分が熱いぞ。体内で炎が燃えているな?》
黒点とたっくんのつぶやきに、アリーは心の中で「うん」とうなずいた。
<聖女ミアは治癒魔法はすごいけど、頭はあまりよくないから。彼女がこうなるって思ってる展開とのズレが生じると、そのたびにぽろっと何かをつぶやくと思うの。それを拾い集めれば、わかってくることがあるかもしれない。スティラ様の身の安全は確保されたし、わたし、ちょっと前に出てみることにする>
アリーは誇り高く顔を上げて、スティラを挟んで会話に花を咲かせているマクシミリアンとラドフェン公爵を見つめた。「ん?」と覇王がこちらを見る。
「どうした、アリー」
「殿下、ひとつ我儘を申し上げてよろしいでしょうか。お給料から差っ引いていただいて構いませんので、もう一着ドレスを仕立てたいのです。殿下のクラバットとおそろいの、深紅のドレスを」
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