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ろくしょう!
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「アリーちゃーん、治癒師を連れてきたよー。マクシミリアンが熱を出すなんて、天変地異の前触れじゃないといいんだけどねー」
入ってきたのは案の定ラドフェン公爵だった。後ろには極限まで目を見開いた四天王がおり、急いで呼びつけられたに違いない治癒師は、筋肉の山に埋もれて生まれたての小鹿ばりにぷるぷる震えている。
彼らの目線の先にあるのは、滂沱の涙を流す女、その女の涙を指先で拭う男、そして膝枕。ラドフェン公爵が「あれれ~?」と目を光らせ、唐突な現場検証が始まった。
「マクシミリアンのやつ、ラブラブ膝枕中に他の女の話をしてアリーちゃんを泣かせたって? 馬鹿だねえ、女心がわかってないよねえ。でも本当に気にしなくていいんだよ? 夢に出てくる女神様なんて、モテない男が生み出した妄想の産物なんだから」
ラドフェン公爵が「謎はすべて解けた」とばかりにうなずく。滝のように流れていたアリーの涙が、一瞬で引っ込んだ。
曲解が曲解を生み、アリーの想像以上にわんぱくで逞しく育ってしまった。そこまで大きくなる必要性などまったく無いにもかかわらず。
「いえ、いえいえいえ、違うんです公爵様。それは大いなる誤解というもので……」
マクシミリアンを膝枕したまま、違います違います、とアリーは猛烈に首を左右に振った。ラドフェン公爵が目を細め、ぬるく微笑む。
「やりましたね、やりましたね殿下! アリーさんってばやっぱり照れてたんですよ、いきなり膝枕なんて好意を持っていないと絶対に出来ませんし!」
「アリーさんってばクールな顔の下で、ただならぬ熱情を確実に育てていたんですね。ボディタッチは愛情のサイン、今までは恥ずかしくて照れてしまっていただけなんですね!」
「あれだけワルツの特訓してくれたのだって、好きな男性を支えたいという気持ちの表れだったんですよ!」
「そもそも具合が悪い時に心配して気遣ってくれるのは脈ありのサインだって言いますし!」
「そ、そうか、やっぱりそうなのか。いや俺も、そうじゃないかなーとは思ったんだ!」
興奮しきった四天王たちが片膝をつき、アリー達を取り囲んで唾を飛ばす。マクシミリアンがアリーの太腿を枕にしたまま、右の拳を高々と掲げた。
「ありがとう皆、ありがとうアリー。ここから一気に大人の階段を駆け上り、王太子としてさらなる高みを目指すつもりだ」
なぜだ、一体どんな思考回路ならそんな結論に至るんだ。アリーは思わず額に手を当てた。本当は、頭を抱えてその場にうずくまりたかった。
頬を紅潮させるマクシミリアンの阿呆みたいに逆三角形の体をまじまじと眺める。ぐうの音も出ないほど荒唐無稽だった。もしかしたらアリーは現在進行形で夢を見ているのかもしれない。
<そうだ、これは夢だ。こんな圧倒的質量のムチっと硬い筋肉を持った王太子なんか、はなから存在しないんだ>
《アリー、現実を見て。なんというか、その、外堀が埋まった感があります。ほら、おばあちゃんたちの喜びようといったら。さっきまで死にかけてたのに、ため込んだ年金をライスシャワーのごとく振りまいてます》
《精霊界にも年金システムがあるのか……なんというか、破綻しなさそうで羨ましい》
《もちろん魔界にもありますよ、たっくんなら特別に加入させてあげてもいいですけど》
《ふむ、詳しく聞かせてもらおうか》
ふと見ればブローチたっくんが胸元に戻ってきていた。心の友二名がまったく頼りにならず、アリーの鼓動は嫌な感じに高鳴る。背中から嫌な汗がにじみ出て、膝と手が同時にぶるぶると震える。
<いやいやいや、今のマクシミリアンとどうこうなるということは、大胸筋の谷間で窒息死するのと同義、まさに常軌を逸した無理難題。親より先に死ぬなんて親不孝すぎるし、ジャンはどうなっちゃうの……!>
マクシミリアンに抱きしめられた自分を想像してみた。思いっきり鯖折りにされていた。
<不思議と嫌悪感は無い。無いけど、わたしに王太子妃なんか、到底務まらないってええ、主に耐久力的な意味でえええええっ!!!!>
《いや、そういう意味ならやっぱりアリー、マクシミリアンが乗っても大丈夫! あ、いかがわしい意味じゃありませんよ、アリーがいかに高性能かを表現しただけですからね?》
《どう考えてもいかがわしいだろうが。しかし我もまあ、正直適任だとは思う。王太子の肩を持つとかではなく、客観的な意見として》
あまりにも酷い裏切りを見た。眩暈がする。アリーはすうっと息を吸い込み、自分を落ち着かせるために「まだ慌てるような時間じゃない」と小さく首を振った。
男爵令嬢という身分なのにラドフェンという壁をクソほど簡単に突破できてしまった。しかし国王アガイルの壁、王妃ベルフィアの壁を乗り越えられるはずがない。
動揺しまくるアリーをよそに、周囲は盛り上がりまくっている。本当に、どうしてこうなった。
「あの、そろそろ治癒魔法をかけさせて頂いてもよろしいです……? 見た感じ知恵熱っぽいので、すぐ治ると思います……」
ずっと放置されていた治癒師が、おずおずと勇気ある声を上げた。
入ってきたのは案の定ラドフェン公爵だった。後ろには極限まで目を見開いた四天王がおり、急いで呼びつけられたに違いない治癒師は、筋肉の山に埋もれて生まれたての小鹿ばりにぷるぷる震えている。
彼らの目線の先にあるのは、滂沱の涙を流す女、その女の涙を指先で拭う男、そして膝枕。ラドフェン公爵が「あれれ~?」と目を光らせ、唐突な現場検証が始まった。
「マクシミリアンのやつ、ラブラブ膝枕中に他の女の話をしてアリーちゃんを泣かせたって? 馬鹿だねえ、女心がわかってないよねえ。でも本当に気にしなくていいんだよ? 夢に出てくる女神様なんて、モテない男が生み出した妄想の産物なんだから」
ラドフェン公爵が「謎はすべて解けた」とばかりにうなずく。滝のように流れていたアリーの涙が、一瞬で引っ込んだ。
曲解が曲解を生み、アリーの想像以上にわんぱくで逞しく育ってしまった。そこまで大きくなる必要性などまったく無いにもかかわらず。
「いえ、いえいえいえ、違うんです公爵様。それは大いなる誤解というもので……」
マクシミリアンを膝枕したまま、違います違います、とアリーは猛烈に首を左右に振った。ラドフェン公爵が目を細め、ぬるく微笑む。
「やりましたね、やりましたね殿下! アリーさんってばやっぱり照れてたんですよ、いきなり膝枕なんて好意を持っていないと絶対に出来ませんし!」
「アリーさんってばクールな顔の下で、ただならぬ熱情を確実に育てていたんですね。ボディタッチは愛情のサイン、今までは恥ずかしくて照れてしまっていただけなんですね!」
「あれだけワルツの特訓してくれたのだって、好きな男性を支えたいという気持ちの表れだったんですよ!」
「そもそも具合が悪い時に心配して気遣ってくれるのは脈ありのサインだって言いますし!」
「そ、そうか、やっぱりそうなのか。いや俺も、そうじゃないかなーとは思ったんだ!」
興奮しきった四天王たちが片膝をつき、アリー達を取り囲んで唾を飛ばす。マクシミリアンがアリーの太腿を枕にしたまま、右の拳を高々と掲げた。
「ありがとう皆、ありがとうアリー。ここから一気に大人の階段を駆け上り、王太子としてさらなる高みを目指すつもりだ」
なぜだ、一体どんな思考回路ならそんな結論に至るんだ。アリーは思わず額に手を当てた。本当は、頭を抱えてその場にうずくまりたかった。
頬を紅潮させるマクシミリアンの阿呆みたいに逆三角形の体をまじまじと眺める。ぐうの音も出ないほど荒唐無稽だった。もしかしたらアリーは現在進行形で夢を見ているのかもしれない。
<そうだ、これは夢だ。こんな圧倒的質量のムチっと硬い筋肉を持った王太子なんか、はなから存在しないんだ>
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ふと見ればブローチたっくんが胸元に戻ってきていた。心の友二名がまったく頼りにならず、アリーの鼓動は嫌な感じに高鳴る。背中から嫌な汗がにじみ出て、膝と手が同時にぶるぶると震える。
<いやいやいや、今のマクシミリアンとどうこうなるということは、大胸筋の谷間で窒息死するのと同義、まさに常軌を逸した無理難題。親より先に死ぬなんて親不孝すぎるし、ジャンはどうなっちゃうの……!>
マクシミリアンに抱きしめられた自分を想像してみた。思いっきり鯖折りにされていた。
<不思議と嫌悪感は無い。無いけど、わたしに王太子妃なんか、到底務まらないってええ、主に耐久力的な意味でえええええっ!!!!>
《いや、そういう意味ならやっぱりアリー、マクシミリアンが乗っても大丈夫! あ、いかがわしい意味じゃありませんよ、アリーがいかに高性能かを表現しただけですからね?》
《どう考えてもいかがわしいだろうが。しかし我もまあ、正直適任だとは思う。王太子の肩を持つとかではなく、客観的な意見として》
あまりにも酷い裏切りを見た。眩暈がする。アリーはすうっと息を吸い込み、自分を落ち着かせるために「まだ慌てるような時間じゃない」と小さく首を振った。
男爵令嬢という身分なのにラドフェンという壁をクソほど簡単に突破できてしまった。しかし国王アガイルの壁、王妃ベルフィアの壁を乗り越えられるはずがない。
動揺しまくるアリーをよそに、周囲は盛り上がりまくっている。本当に、どうしてこうなった。
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ずっと放置されていた治癒師が、おずおずと勇気ある声を上げた。
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