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・地下室調教編(Day7~)

三日目 4-2

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「うるせ! 違……っ!」
 反論しようとしたが、そのことばは、途中で途切れた。目の前で、自分の身体の変化を見せつけておいて、そのことばは効力を失っって途切れたのだ。
 何を言い返せばいい?
 でも、確実にあがっていく体温に、鼓動。これは隠しけれない。
「誰に触れられている?」
 わかりきったことを、この男はきいてくる。こたえずに唇を閉じていたら、髪を引っ張られた。
「誰だ?」
 有無をいわさぬ口調に辟易しながらも、青年は痛みに答えた。
「お前だろ?」
「その言い方は汚いな」
 渇いた音が部屋じゅうに響きわたった。藤滝が、青年の頬を打った音だった。
 頬がかっと燃えたようにひりつく。でもそれは、じんじんと余韻を残してゆっくりと消えていく。
「俺は口の利き方を考えとを言ったはずだが?」
「あいにく、いうことをきかない駄犬ともよばれているのでね」
 軽口をたたいた。
 このあと、どんな目に遭わされるのか、一瞬うかんだが、いってやれずにいられなかった。
 さあ、どう躾ける?
 藤滝から見て、青年はそう挑発するかのような顔をしていた。これだから、困る――。
「ご主人さまっ」
 隣にいた使用人が不安そうに彼に声をかけた。だが、当の男はそれに適当にあしらうと、男の視界には青年しかうつらなくなる。
「困ったやつだな……。俺のいぬ間に『』までたくわえこんでいる……」
 青年は、身じろぎをした。
 滝田に抱かれた・・・・ことがばれたのか。――いや、そんなことはない、はずだ。
 でも、青年を見て、彼は瞬時にわかるはずだ。精液で解除できる媚薬を投与しておいて、ここまで平然なはずはない。何かしらの方法で、それを青年が解除したのだ、という結論になる。
 胸に塗ってあったものは、自分のものを吐き出してそれで解除できたとしても、「内側」へ塗り込まれたものまでは自分でどうこうすることはできない。
 となると、誰かをたくわえこんだことになる。
「それがどうした?」
 また挑発している。藤滝は苦々しく思いながらも、青年を見下ろした。
「お前がそんなに俺のことを考えていてくれたとはな」
 軽口。
 だが、まだいい。
 青年には、その事実・・に対して、この男がどうくるのか、が問題だった。この男が、青年が勝手に男に抱かれていた事実に対して、そうこたえてくるのか。それとも、何も思わないのか――。
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