夏の出口

木偶舞屋🌷

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 夕方、チャイムが鳴った。
 手の空いていた俺は、玄関先に立つ。扉の向こう側に待っていた井宮に、俺は思わず、本当に来たのか、とつぶやいてしまった。
「うっそ! ひど! 疑ってたの!?」
「ああ、いや、その」
 演技がかった井宮のリアクションに苦笑する。
「俺とたけの仲なのに」
「どういう仲だよ。そこまで仲良くないだろ」
「わー、ひどい、心が、ガラスのハートが」
「誰の心がガラスなんだよ、たっく」
「ひどーい、けんくん、ないちゃう~」
「大の大人に泣かれても困ってしまうがな」
「えへ、たけを困らせていくスタイルです」
「はいはい」
 ぶりっこぶっているときの彼は割と可愛い。若いころから、そうだったのだが、成人してもなお、可愛いというのはどういうことなのだろうか。
 けれど、こんがりと焼けた膚の上にタンクトップをはおっただけの、無防備な好青年。ちょっとそそるような格好はよしてもらいたいものだが――まあ、そんなことを指摘して引かれてしまうのは嫌だ。
「じゃ、これ、スイカ」
 やつは、俺に重たいものを持たせて、さっと靴を脱いだ。
「は!?」
「おっじゃましまーす」
「おいおいおい、これ!?」
「はいはい、ちゃんと持ってね。落としたら罰金一億円」
「て、あがるなよ!」
 母親が出て来た。
「あら、けんくん、久しぶり」
「ども。たけのお母さん、何バリバリじゃないですか」
「でしょ~!」
「あのお、バリバリって何ですか」
 俺ひとりだけ、話に入れない。
「んなもん、決まってるだろ!」
「ね~、お元気バリバリのバリバリです」
 知らんがな、そんなもん。
「つか、お前、なに人の母親とバリバリしてんだよ。なんで、それで通じてんだよ」
「だって、若者同士、けんくんとは通じちゃうのよ~」
「いや、母さん!?」
「じゃ、けんくん、老いぼれは置いておいて、麦茶出しますね」
「老いぼれ!? 俺、老いぼれなの!?」
「はあ、まったく、最近の若者といえば、枯れている男ばっかりで。ねえ、お母さん」
「ねえ、困っちゃうわ。わたしの息子なんて、ミイラだから」
「それ枯れてるっていうか、カピカピというやつでは!?」
「死後の世界の幸運を祈ってる暇あれば、今を生きなくちゃだよ、ねえ~」
「そうよねぇ、けんくん」
「いや、なんであんたら、変なところで通じてんのさ!!」
 彼は、手の行き届いたリビングではなく、実家を出たあとでもそのままに残っている俺の自室へとあがりこんだ。
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