夏の出口

木偶舞屋🌷

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 ひどい言い方だと思うが、それは事実である。
 こんなアホとバカの塊みたいな男が、どうしてか、やけに色っぽく思えてしまうのだ。意識しないようにして、必死に暮らしていた。あの日、あの若かったときは――。
「ん、どした?」
 急に黙り込んだ俺に対して、彼が不思議そうに俺をのぞきこんでくる。
「わっ!」
 ちらりと彼の服、胸部分が大きく開いてみえて、胸元が見えてしまっている。
「おい、いきなりどうした? 叫ぶなよ」
 変なものを見る目で見られているが、俺にだってお前に言いたいことがある。いきなり胸を見せるな、胸を。
「まあ、そういや、お前ってそういうやつだったよなあ~」
「は?」
「昔も急に叫んだり赤くなったりしてたっけな~」
「は?」
 彼は、にやりと微笑んだ。
「今、真っ赤だぜ?」
 この顔にやられているのだ。
「ところで、今年はどうする?」
「は?」
 彼は、俺の隣に腰を下ろした。ちびちびと麦茶のグラスに口を付けながら言う。
「今、帰って来たってことは、間に合ったじゃんか」
「へ?」
「――お祭り。行かないの?」
「あー」
 そうだ。すっかり忘れていた。
 この地区の祭りの日はお盆の前だった。
「ちょうど、二日後だけど? つか、その前に帰っちゃう?」
「いや――」
「じゃ、行くか!」
「はあ!?」
「若者に戻ったつもりで、楽しく射的しようぜ!」
 ぱっと明るい顔になった彼はねだるように俺をみあげた。
「嘘つけ。何が楽しくだ。お前の腕前のひどさは俺が知ってる」
「だからだよ! 景品取ってくれるやつをそばに置きたいじゃん」
「……そうですか」
「ね、行こ! 行けるんだったら、行こうぜ!」
「お前なぁ」
 急にはしゃぎだした彼は可愛い。だが、いくらこいつが可愛いからと言って、ホイホイつられるのもなんだかいやだ。
「ね、頼む!」
 彼は俺を御神体か何かのように、合掌して頭をさげてきた。
 おがまれても、まず胸チラをどうにかしてほしいものだ。



「あらま、もう帰っちゃうの?」
 玄関先で出ていこうとした彼にうちの母親が声をかける。
「うん、お邪魔しました」
「あら~、寂しいわね」
「でも大丈夫! お祭り一緒に行くって約束してくれたから!」
 くそ、また、こいつ、勝手なことを言い出した。
「はあ!? 誰が!?」
「俺が、今、決めたの。たけは俺と祭いくでしょ」
「いかん!」
「あら、そうなの~、よかったわね~」
「母さん! そこのらないで!」
「と、いうことで、お邪魔しました~。じゃ、その日の夕方、迎えにいくから、浴衣準備しとけよ!」
「誰が浴衣だ!」
 甚兵衛だろ。
 と、つっこみそうになって、さすがにそれもないなーと思った。
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