21 / 57
21
しおりを挟む「近付かないといけないような場面を思いつけませんわ。
お話ししないといけない事もありませんし。
仕事については「んん!!」……」
フィーが咄嗟に割り込み、アンネッタの言葉を遮る。
『あら』とアンネッタは優雅に自分の口元を手で覆った。
横ではネルローネがわなわなと怒りに震えて、ギリギリと歯噛みしている。
そのせいか、またも口調が残念な事になった。
「あんたねぇ……そんなバカげた伝言、ホイホイと持って来るんじゃないわよ!
頭はないの!?
考える脳がないの!!??
言われるまま動くだけなら、使用人に頼めば済むの!! いいえ、なんなら鳩でも犬でも、手紙を括りつけるだけで事足りるわ!!
仮にもあんたは側近でしょう!?
側近ならアレの行動が不味いってわかりなさいよ!!!
大体、普段からずっと何もかもアンネッタやわたしに押し付けてばかりで、あいつは何をしてるの!?
ちょっとその辺詳しく教えなさい!!」
ネルローネの剣幕に、思わず仰け反りかけたデービーだが、捻り上げられた腕に自分から変な力を加えてしまい、痛みに呻いた。
だがこれ以上単なるメッセンジャーを痛めつけた所で、何も得るものはない。
アンネッタとネルローネから許可を出され、無事解放されたデービーは、這々の体で逃げ去って行った。
疲れ切ったのか、ぐったりと顔色も悪く、アンネッタに申し訳なさそうにするネルローネを、先にミリリカと共に帰らせる。
それを見送ってからフィーとアンネッタの乗る馬車も動き出した。
ガラガラと規則正しく刻まれる車輪の音を聞きながら、フィーは口を開く。
「お嬢様、王陛下や王妃陛下からの御言葉もあり、王宮での執務が断り難く、またそれも試練の一つとお考えなのは存じております。
しかし、学院生徒会の仕事は、あくまで生徒会メンバーの仕事で、お嬢様が手出しする必要もありませんし、手出ししてはいけません」
このところ聞く事のなかったフィーからの小言に、アンネッタは目に見えて萎れた。
「ごめんなさい、つい……」
「困る人が居るかもしれないと、お考えになったのでしょうが、それなら困らせて差し上げなければいけないのです。
でなければ、彼等の成長を妨げる事になります。
そうして壁にぶち当たり、誰かの手を借りる事無く解決してこそ、大きく羽ばたけるのです!」
ハッとした様にアンネッタは顔を上げ、直ぐにその瞳を潤ませた。
「そ…そうね、本当にそうね。
わたくしったら……皆様が成長なさるチャンスを潰してしまう所だったのだわ!
あぁ、やっぱりフィーは凄いのね。
おかげで目から鱗が剥がれ落ちたかのように、気分が晴れやかよ」
フィーはにっこりと頷く。
(本当に素直で優しく成長して下さって、本当に素晴らしい…フィー自慢のお嬢様です。
あんなロクデナシ共に、お嬢様を食い潰させる訳にはまいりません。
精々困り果てて、自爆して下されば万々歳…)
アンネッタから視線を外し、少しばかり考え込んだ。
(………でも、とうとうゲームシナリオも動き出した。
逸脱はどう転ぶかわからないから、やんわり回避と言う路線に今のところ変更はないけど……そう言えば最終ボスを倒すために必要なモノを、そろそろ探さないといけないわね。
流石にあれはやんわりと回避~なんて言って、放置しとく訳にはいかない。
何とかしてヒドイン側の手に渡るのは阻止しないと……。
発見場所は何処だったかしら……)
それから数日、フィーとアンネッタの周辺は平穏な日が続いて居た。
少なくとも過日の様に、誰かが突撃してくると言う事もなく過ごせている。
ただ、やはりと言うか…エネオット達の噂は流れて始めていた。女性にウザ絡みしているとか何とか……。なんにせよ、あまり良い噂でない事は確かだが、その相手と言うのが誰なのかは、諸説あって良くわからない。
抜き打ち的に4組の教室を確認に行った事があるのだが、偶に所在がわからない事があり、相手がドニカである可能性も当然否定出来ない状況だ。
まぁ、ドニカだろうが誰だろうが、アンネッタと公爵家に害が及ばなければ問題ない。
アンネッタがエネオットに執着したり、恋心を抱いているなら兎も角、それは回避出来ている。
とは言え後手に回るのも癪なので、色々と補うべく行動しているところだ。
23
あなたにおすすめの小説
【本編完結】転生令嬢は自覚なしに無双する
ベル
ファンタジー
ふと目を開けると、私は7歳くらいの女の子の姿になっていた。
きらびやかな装飾が施された部屋に、ふかふかのベット。忠実な使用人に溺愛する両親と兄。
私は戸惑いながら鏡に映る顔に驚愕することになる。
この顔って、マルスティア伯爵令嬢の幼少期じゃない?
私さっきまで確か映画館にいたはずなんだけど、どうして見ていた映画の中の脇役になってしまっているの?!
映画化された漫画の物語の中に転生してしまった女の子が、実はとてつもない魔力を隠し持った裏ボスキャラであることを自覚しないまま、どんどん怪物を倒して無双していくお話。
設定はゆるいです
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
拾った年上侯爵が甘え上手すぎて、よしよししてたら婚約することになりました
星乃和花
恋愛
⭐︎火木土21:00更新ー本編8話・後日談8話⭐︎
王都の市場で花屋をしているリナは、ある朝――
路地裏で倒れている“美形の年上男性”を拾ってしまう。
熱で弱っているだけ……のはずが、彼はなぜか距離が近い。
「行かないで」「撫でて」「君がいると回復する」
甘えが上手すぎるうえに、褒め方までずるい。
よしよし看病してあげていたら、いつの間にか毎日市場に現れるようになり、
気づけば花屋は貴族の面会所(?)になっていて――
しかも彼の正体は、王都を支える侯爵家の当主だった!?
「君は国のために必要だ(※僕が倒れるから)」
年上当主の“甘え策略”に、花屋の心臓は今日ももたない。
ほのぼの王都日常コメディ×甘やかし捕獲ラブ、開幕です。
悪役令嬢?いま忙しいので後でやります
みおな
恋愛
転生したその世界は、かつて自分がゲームクリエーターとして作成した乙女ゲームの世界だった!
しかも、すべての愛を詰め込んだヒロインではなく、悪役令嬢?
私はヒロイン推しなんです。悪役令嬢?忙しいので、後にしてください。
【完結】私のことを愛さないと仰ったはずなのに 〜家族に虐げれ、妹のワガママで婚約破棄をされた令嬢は、新しい婚約者に溺愛される〜
ゆうき
恋愛
とある子爵家の長女であるエルミーユは、家長の父と使用人の母から生まれたことと、常人離れした記憶力を持っているせいで、幼い頃から家族に嫌われ、酷い暴言を言われたり、酷い扱いをされる生活を送っていた。
エルミーユには、十歳の時に決められた婚約者がおり、十八歳になったら家を出て嫁ぐことが決められていた。
地獄のような家を出るために、なにをされても気丈に振舞う生活を送り続け、無事に十八歳を迎える。
しかし、まだ婚約者がおらず、エルミーユだけ結婚するのが面白くないと思った、ワガママな異母妹の策略で騙されてしまった婚約者に、婚約破棄を突き付けられてしまう。
突然結婚の話が無くなり、落胆するエルミーユは、とあるパーティーで伯爵家の若き家長、ブラハルトと出会う。
社交界では彼の恐ろしい噂が流れており、彼は孤立してしまっていたが、少し話をしたエルミーユは、彼が噂のような恐ろしい人ではないと気づき、一緒にいてとても居心地が良いと感じる。
そんなブラハルトと、互いの結婚事情について話した後、互いに利益があるから、婚約しようと持ち出される。
喜んで婚約を受けるエルミーユに、ブラハルトは思わぬことを口にした。それは、エルミーユのことは愛さないというものだった。
それでも全然構わないと思い、ブラハルトとの生活が始まったが、愛さないという話だったのに、なぜか溺愛されてしまい……?
⭐︎全56話、最終話まで予約投稿済みです。小説家になろう様にも投稿しております。2/16女性HOTランキング1位ありがとうございます!⭐︎
【完結】王女様の暇つぶしに私を巻き込まないでください
むとうみつき
ファンタジー
暇を持て余した王女殿下が、自らの婚約者候補達にゲームの提案。
「勉強しか興味のない、あのガリ勉女を恋に落としなさい!」
それって私のことだよね?!
そんな王女様の話しをうっかり聞いてしまっていた、ガリ勉女シェリル。
でもシェリルには必死で勉強する理由があって…。
長編です。
よろしくお願いします。
カクヨムにも投稿しています。
追放令嬢、辺境王国で無双して王宮を揺るがす
yukataka
ファンタジー
王国随一の名門ハーランド公爵家の令嬢エリシアは、第一王子の婚約者でありながら、王宮の陰謀により突然追放される。濡れ衣を着せられ、全てを奪われた彼女は極寒の辺境国家ノルディアへと流される。しかしエリシアには秘密があった――前世の記憶と現代日本の経営知識を持つ転生者だったのだ。荒廃した辺境で、彼女は持ち前の戦略眼と人心掌握術で奇跡の復興を成し遂げる。やがて彼女の手腕は王国全土を震撼させ、自らを追放した者たちに復讐の刃を向ける。だが辺境王ルシアンとの運命的な出会いが、彼女の心に新たな感情を芽生えさせていく。これは、理不尽に奪われた女性が、知略と情熱で世界を変える物語――。
悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。
向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。
それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない!
しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。
……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。
魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。
木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ!
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる