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しおりを挟むアンネッタとケルナーを校舎まで送り、フィーとイメネアは本日特別に同行をお願いしたヤッセム・ヘダーの待つ場所へ急いだ。
彼は以前の話した通り公爵家の護衛騎士団長で、メイド長サリタの夫であり、料理長ビトールと先輩メイドのユーミの父親だ。
今日はフィーがアンネッタの授業中、ちょっと外に出かける為、昼食時の護衛の為に同行して貰っている。
ちなみに校舎への迎えはイメネアがしてくれる事になっていた。
その為、本日の昼食はアンネッタの兄であるケルナーも同席する予定である。
「「お待たせしました」」
「あぁ、ご苦労だったな」
ヤッセムからの労いに、イメネアが頬を染めてとても嬉しそうに返事をする。
実はケルナー付きのメイドである彼女は、オジ好き…と言うか年長者好きなのだ。
それもあってケルナー付きとされた。
彼女はまだ若造でしかないケルナーの事はアウトオブ眼中なので、次期公爵の醜聞になる事はないだろうと言う判断である。
勿論、どれほどオジスキィだと言っても、実際にヤッセムとどうこうなりたい等という願望はなく、単にオジ推しと言うだけだ。
ちなみにフィーもケルナー付きは検討された。
だが世話も護衛も兼任出来るフィーは、アンネッタの方に付けるべきだという判断が下された。
それにケルナーがフィーに対して挙動不審になる事があり、それも検討材料に加味された為、現在の形に落ち着いている。
「そ、そんなぁ♪
もう控室の方に移動します?
きゃぁ、どうしましょ。眼福だわ! 渋オジだわ!」
何時もの事なので、ヤッセムも苦笑を浮かべるだけだ。
フィーに至っては何の反応も返さない。
「では後の事はお願いします」
フィーがヤッセムとイメネアに深く頭を下げた。
流石にはしゃいでいる場合ではないと、イメネアが少し心配そうに尋ねてくる。
「ほんとに一人で外に行くの?
わたしも一緒した方が良いんじゃない?」
チラと名残惜しそうにヤッセムを見るイメネアだったが、フィーを心配しているのも本当の事のようだ。
イメネアだけでなく、ヤッセムも微かに表情を曇らせる。
「あまり治安の良い場所ではなさそうだから、せめて馬車を使ってはどうだろう?」
「お気遣いありがとうございます。
ですが馬車はいつ何が起こるかわかりませんから、学院に待機させておかねばなりません。
治安については良くはないでしょうが、悪くもない場所のようですので、問題ございません」
この話はここまでとばかりに、フィーは再び一礼して背を向けた。
そう、今日はドニカとナホミの事を、モーソー男爵家近くで調べてみる予定で動いている。
学院を後にしたフィーは、敷地を出た途端駆け出した。
モーソー男爵家は、学院からそれほど遠くないが、近くもない。
その為移動を速やかに終える為に走る事にしたのだ。
走り続けて暫くすると、街の風景も空気感も、徐々に変わって行く。
学院周辺は、授業内容に則してかなり敷地も広く取られており、一見自然豊かで建造物は少なく見える。
警備の為に障壁魔法が至る所にあり、警備兵も頻繁に巡回しているのだが、閑散として見えるのは仕方な事だろう。
その学院付近を抜けると、徐々に建造物が増え始める。
そこからは大通りを走ると迷惑になるので、裏路地に入って走る。
まだ朝早いと言って良い時間だが、既に活気を見せ始めている町や商店街を横目に、フィーはそのまま駆け続けた。
一度建物が途切れ、畑が広がる一帯を抜けると、再び建造物が見え始める。
だがさっきまでと違い、少し地味で古びた建物のように見える。
この辺りはあまり裕福とは言えない場所なのだろう。
そしてこの付近にモーソー男爵家はあった。
フィーは建物の影で、少し古びたワンピースを上から被り着る。
何故ならオファーロ公爵家のお仕着せでは、上等すぎて目立ってしまうからだ。
周囲を見回し、収納に手を突っ込んで買い物籠を取り出す。
それから何食わぬ顔で、通りに面した露店街を目指した。
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