無垢な少年が愛玩用合成獣に改造される話

良音 夜代琴

文字の大きさ
1 / 6

1.

しおりを挟む
物心付いた時、ボクは既に商品だった。

手首と足首に麻の紐が巻かれていて、ボクの前にも、後ろにも、ボクと同じような子供達が一列に繋がれていた。

生まれてからの歳は良く分からなくて、誰にも教えられないまま、やっと人なりの言葉を話せるようになった頃だった。
親とか、兄弟が居たような記憶はどこにもなかったけれど。少なくともボクがこうして生きてるって事は、どこかにボクを産んだ人が居たって事なんだろう。
家族と言うのは、そんな遠いイメージでしかなかった。

とにかくいつもお腹がすいていて、あんまり難しい事は考えられなかった。

繋がれている子供達には、時々買い手がついた。
それは大抵、体格の良い男の子や、可愛い女の子で、背も低く、痩せっぽちのボクはいつまでも売れ残っていた。

そんなボクを、商人のおじさんが見下ろして
「所詮、拾い物か……」
と呟いた。

……拾い物?

ボクは、道端に落ちていたの?
ボクには、他の子みたいな、お父さんとか、お母さんはいないの……?

疑問が胸に湧き上がる。
けれど、商人のおじさんに話しかけた子供はいつも、その手にしている細い棒で叩かれてしまうのを知っていたので、ボクは黙っていた。
「維持費もかかるし、そろそろバラすか」と口にしながらおじさんが去って行く。
その後ろ姿をぼんやりと見つめていたボクの顎に、手がかかる。
くいっと顎を引かれて、強制的に顔を上げさせられる。

ボクの顔を覗き込む、見知らぬ男の人……。

紫色の髪を、肩の下でゆるやかに結んだその人は、眼鏡越しに微笑を浮かべたまま、ボクの顔をじっと見ていた。
親指の腹で、丁寧にボクの顔にこびりついていた泥を落とすと、細めていた目を一瞬うっすらと開いて、
「悪くないですね」
と呟いた。

ぽかんとしているボクの背中側に男の腕が回される。
男の人は、ボクの背骨に沿って指を這わせた。
「ひゃわぁぁぁあああぁあ!?」
思わず声を上げてしまったボクに、男の人は満足そうに頷いてみせた。
「反応も良いですね」
いつの間にか男の人の隣に、商人のおじさんが立っている。
子供を逃がしたり、連れ去られたりしないよう、おじさんはいつもお客さん達を見張っていた。

男の人は、商人のおじさんを振り返ると、いくらかのお金を手渡した。
たったそれだけで、ボクは縄を解かれた。

あっという間だった。


ここから抜け出すことが、あの、死を待つ列から抜け出すことが、こんなに簡単だったなんて。

考えた事もなかった。
ここ以外のどこかに、ボクが行けるなんて。


ボクの手を引いて、ボクの前を歩く、真っ白な上着の男の人……。

ボクはこの瞬間から、この人の物になった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中  二日に一度を目安に更新しております

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

処理中です...