教え上手な龍のおかげでとんでもないことになりました

明日真 亮

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第2章 風の大龍穴編

36 ルフトリーフと模擬試合②

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 リーフさんを相手にどのように戦うべきかなと考えていたけど、とにかく右足の出血がひどい。
 僕も簡単な治癒魔法は母上から習っているけど、こんな傷を一瞬で治す魔法は使えない。それならこうするしかないよね。僕は空間に右手を突っ込んで、ルシアが食料と一緒に用意してくれていたポーションを取り出して右足に振りかけた。するとどんどんと深い傷口が塞がっていく。

「そうだったな。レアンデル殿は時空間魔法の使い手。収納空間から効果の高いポーションを取り出したのか」

 その様子を見ていたリーフさんは、一段警戒を高めたようだった。

 僕は治療をしたあとすぐに魔力で槍を形づくる。そして頭の中でファイアーランスと唱えて、リーフさん目がけて一斉に飛ばした。威力を中程度に抑えた20本の炎の槍だ。

「くっ! 無詠唱のファイアーランスをこんなに放てるのか!」

 巧みに躱すリーフさんだったが、さすがに20本全ては躱しきれず、何本かが命中し、右腕と胴体の一部に軽くない火傷を負わせることができた。そしてタイミングを逃さないよう間合いを詰めて剣で足を狙った。
 僕が剣を横に薙ぎ払うと、リーフさんは猛スピードで空中に浮かび斬撃を躱した。

 ……そうだった。飛べるんだった。

「ふぅ。今のはかなりあせったぞ。火魔法の攻撃もレベルが高く、その直後を狙う冷静さ。少年とは思えない戦闘能力だ。持って生まれた戦いのセンスが伺える」
「小さな頃から僕を鍛えてくれた人の教えが染み付いてるだけだと思います。優しいけど、鬼教官でしたから」

 僕の頭の中にはセバスとの特訓の日々が思い浮かんでいた。

「その人はかなりの腕前なのだろうな。君の動きを見ていると分かる。……しかし勝負はこれからだ。残り時間は少ない。私の全力で相手しよう」

 リーフさんが僕にそう告げた瞬間、美形男子のリーフさんは龍形態に転体した。輝く黄色の鱗が印象的なスラッとした細身の龍だ。
 さっきの僕の攻撃で与えたダメージは回復してるみたいだな。見た限り傷一つないし。

「龍族本来の力をみせるとしよう」

 リーフさんは宙に浮かぶと、口元に魔力が集中していく。口を開くと同時に、ものすごい力を帯びた風のブレスが一直線に向かってくる。
 これは避ける暇もない! 僕は瞬時に判断してミスリルのマントに全力の魔力を流してブレスを受けた。

 ブレスが衝突した衝撃で数十メートル吹き飛ばされてしまった。全身に激痛が走る。マントのおかげで即死こそ免れることができたけど、受けたダメージは尋常ではない。
 僕はもう一本ポーションを取り出して、急いで飲み干す。完全回復にはほど遠いけど、あと一度反撃できる程度には回復した。
 まもなく模擬試合開始から20分が経つ頃だろう。僕ができる最大の攻撃のチャンスは今しかない。僕はリーフさんの身体にマーキングのための魔力を流す。

「――時空間魔法か!」

 リーフさんがマーキングに気付いたようだけど、すでに準備は終わった。

「次元断!!」

 リーフさんの胴体をマーキングした次元断が発動する。龍族固有の特徴なのかも知れないけど、魔法攻撃に対する抵抗力が強い。龍形態のときは更に上がるようだ。決着をつけるために魔力枯渇を恐れず最大の魔力を込めた次元断は見事に空間を断裂させた。

「よし! 成功だ!」

 時間が巻き戻ると聞いたから、思い切り次元断を使うことができた。そうじゃないと模擬試合で使えるような加減が利く魔法じゃないし。

 僕はリーフさんの方を見つめていると、

「えっ! リーフさんがいない!?」

 空間は間違いなく断裂している。マーキングした場所はリーフさんの胴体の位置にピッタリ合っていたはずだ。

「おしかったな」

 鋭い痛みが走った瞬間、僕のお腹からは爪が生えていた……。
 いや、正しくは僕の背後に回り込んだリーフさんの爪による攻撃が、背中から腹部を貫いていた。

『勝者はルフトリーフ! ちょうど時間だ。巻き戻るぞ』

 ルシアの声が響くと、僕とリーフさんは模擬試合が始まるときの位置に移動しており、傷一つない状態に戻っていた。もちろん次元断のあとの魔力枯渇もない。

「ガハハハハッ! 非常に面白い試合であったな! リーフ良くやった。あとで褒美をやるとしよう」
「ありがとうございます」
「レアンデルも惜しい結果だったな。しかしリーフ相手にあそこまで戦えるとは正直驚いたぞ。時空間魔法は今から覚えていくのだろうが、火魔法も剣もしっかりと研鑽を積んでいるのだな」
「いえ、無我夢中で戦っていただけで、恥ずかしながら最後はどうやって負けたのかもよく分からなかったです」

 褒めてもらえるのは嬉しいんだけど、全体的にどのような戦いが出来たのか、上手くイメージできないでいた。

『レアンデルは色々と疑問も残っているようだな。それでは大龍穴に戻ってから説明してやることにしよう。みんな戻るぞ。転移!』

 ルシアが魔法を使うと、ヴァン様の塔の頂上に戻っていた。時間が巻き戻って疲れも何もないはずなのに、僕は模擬試合での精神的な疲労をズッシリと感じていた。
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