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序章
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先ほど乾物屋の露店で友人の為に買っておいた干し肉を、金髪の娘はサイドポーチから取り出し蒼い毛の犬の前に差し出した。
すると、真っ黒でまん丸の目がもっとまん丸になった。鼻をひくつかせ蒼い毛の犬はそれを一口かじるともぐもぐと噛みしめ、咀嚼した。そしてかじり付いた残りを一旦下に置くと、頭を持ち上げ黒くまん丸の目を娘に向け、その手をペロリと小さな舌でなめた。その後、地面に一度置いた干し肉をもう一度口に咥えると、それを食べずに震えていた体をよろよろと起こし森の方を見た。
その様子に娘はクスリと笑みをもらす。
「おかわりもあるわよ? それは、あなたが食べたら? 」
顔を持ち上げた蒼い毛の犬に袋にたくさん入った干し肉を見せてやる。ひと口齧った残りの干し肉を咥えているその口からだらりとよだれが垂れた。
一心不乱に干し肉を平らげていく蒼い毛の犬。
「……お腹、空いてたんだね」
そのふわふさの蒼い頭を撫でながら 娘は目を細めた。
蒼い毛に包まれた耳が、気持ちよさそうに垂れている。
「ごめんね…巻き込んじゃったまみたいで…… 怖かったよね…」
そのタイミングで蒼い毛の犬はブルブルと体を震えさせた。それをすかさず撫でてやる。
「……かわいいわね 蒼い毛のワンちゃん?」
『それは、狼じゃないかしら?』
耳元で、戻ってきたスピカら囁く。
「そうなの? じゃあ、蒼い毛のオオカミさんね」
再び頭を撫でるとまん丸な黒い目が娘を見上げ、またその手をペロリと舐める。出してやった分の干し肉を平らげた蒼い犬に、残りの干し肉が入った袋をリボンで結わきその体にくくりつけてやった。
「誰か、待っているんでしょ? 」
「ウォンッ」
「仲良く分けるてね……約束っ」
蒼い毛の犬もとい、狼は何度か振り返りながら森の方へと消えていった。
真っ黒でまん丸の目、珍しい蒼い毛の狼だった。
――あんな色の狼もいるのね
――きれいな色だったなっ
狼を見送った後娘は、まだ尚揉めている友人2人へと目をやった。そこは、地面がはがれ、辺りの木々が折れ、近くの小屋の屋根が剥がれかかり、そこかしこが燻った煙を上げている。
『そこから退くんだっ』
『お主がどくのだ』
『いいから引っ込めばいいんだっ』
『これを取り戻したのは、ボクだ』
『いーや、オレだ』
『ふざけるなっ! 引っ込むのはそっちだ』
『なんだとぉ!!』
――普段は離れたところにいるから、あたしもうっかりしてたけど……はぁ
――どうしてこの2人は、何でもかんでも競い合っちゃうかなぁ…はぁ
娘のお気に入りであるキャスター付きの大きなカバンの周りを、白く輝く焔と渦を巻いた風が飽きもせず衝突し合っている。
――ついさっきまで、快晴だったのに……はぁ
「ピスケス、ちょっと魔力を頂戴」
『……(コクン)』
ピスケスから水の魔力を受け取ると、娘は深い息を吐き出し腰に掛けてあった柄を握り受け取った魔力をとおした。柄から魔力が形を得て水の鞭がグネグネとのびていく。
”バチーンッ”
地面を叩けば、魔力の鞭が唸り大きな音を響かせた。そして娘は、すぅっと息を吸い込み腹に力を入れた。
「ふ~た~り~と~も~っ!!」
『『!?』』
「いいかげんにしなさ~いっ!!」
”バッチーン!!!!”
ビックンと肩を揺らす輝く焔を纏った金髪の男と、薄い蒼の長い髪の水瓶を抱えた男。
2人は、そろってそろりと娘の方に振り向いた。
「……まだやるの?」
すると、真っ黒でまん丸の目がもっとまん丸になった。鼻をひくつかせ蒼い毛の犬はそれを一口かじるともぐもぐと噛みしめ、咀嚼した。そしてかじり付いた残りを一旦下に置くと、頭を持ち上げ黒くまん丸の目を娘に向け、その手をペロリと小さな舌でなめた。その後、地面に一度置いた干し肉をもう一度口に咥えると、それを食べずに震えていた体をよろよろと起こし森の方を見た。
その様子に娘はクスリと笑みをもらす。
「おかわりもあるわよ? それは、あなたが食べたら? 」
顔を持ち上げた蒼い毛の犬に袋にたくさん入った干し肉を見せてやる。ひと口齧った残りの干し肉を咥えているその口からだらりとよだれが垂れた。
一心不乱に干し肉を平らげていく蒼い毛の犬。
「……お腹、空いてたんだね」
そのふわふさの蒼い頭を撫でながら 娘は目を細めた。
蒼い毛に包まれた耳が、気持ちよさそうに垂れている。
「ごめんね…巻き込んじゃったまみたいで…… 怖かったよね…」
そのタイミングで蒼い毛の犬はブルブルと体を震えさせた。それをすかさず撫でてやる。
「……かわいいわね 蒼い毛のワンちゃん?」
『それは、狼じゃないかしら?』
耳元で、戻ってきたスピカら囁く。
「そうなの? じゃあ、蒼い毛のオオカミさんね」
再び頭を撫でるとまん丸な黒い目が娘を見上げ、またその手をペロリと舐める。出してやった分の干し肉を平らげた蒼い犬に、残りの干し肉が入った袋をリボンで結わきその体にくくりつけてやった。
「誰か、待っているんでしょ? 」
「ウォンッ」
「仲良く分けるてね……約束っ」
蒼い毛の犬もとい、狼は何度か振り返りながら森の方へと消えていった。
真っ黒でまん丸の目、珍しい蒼い毛の狼だった。
――あんな色の狼もいるのね
――きれいな色だったなっ
狼を見送った後娘は、まだ尚揉めている友人2人へと目をやった。そこは、地面がはがれ、辺りの木々が折れ、近くの小屋の屋根が剥がれかかり、そこかしこが燻った煙を上げている。
『そこから退くんだっ』
『お主がどくのだ』
『いいから引っ込めばいいんだっ』
『これを取り戻したのは、ボクだ』
『いーや、オレだ』
『ふざけるなっ! 引っ込むのはそっちだ』
『なんだとぉ!!』
――普段は離れたところにいるから、あたしもうっかりしてたけど……はぁ
――どうしてこの2人は、何でもかんでも競い合っちゃうかなぁ…はぁ
娘のお気に入りであるキャスター付きの大きなカバンの周りを、白く輝く焔と渦を巻いた風が飽きもせず衝突し合っている。
――ついさっきまで、快晴だったのに……はぁ
「ピスケス、ちょっと魔力を頂戴」
『……(コクン)』
ピスケスから水の魔力を受け取ると、娘は深い息を吐き出し腰に掛けてあった柄を握り受け取った魔力をとおした。柄から魔力が形を得て水の鞭がグネグネとのびていく。
”バチーンッ”
地面を叩けば、魔力の鞭が唸り大きな音を響かせた。そして娘は、すぅっと息を吸い込み腹に力を入れた。
「ふ~た~り~と~も~っ!!」
『『!?』』
「いいかげんにしなさ~いっ!!」
”バッチーン!!!!”
ビックンと肩を揺らす輝く焔を纏った金髪の男と、薄い蒼の長い髪の水瓶を抱えた男。
2人は、そろってそろりと娘の方に振り向いた。
「……まだやるの?」
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