40 / 95
本章 ――魔導騎士団の見習い団員――
11、クラーワ王国魔導騎士団
しおりを挟む
魔物は、命あるモノの淀みから生まれるといわれている。王都近くの魔の森や峠、洞窟などは要注意とされているが、いってしまえば生さえあればどこでも発生するともいえる。さすがに結界の張られている王都内で発生したという事態は今まで報告にあがっていないようだ。魔の森に隣接する王城の北西側でさえ結界内であれば安全と言える。結界を1歩出てしまえば、言わずもがなであるのだが。
魔物の発生が身近なところにある為か、この王国に生活する者達は戦う術を学ぶ者が多くいる。ある者は拳や剣を磨き、ある者は癒しを学び、ある者は知恵を練る。
更に、魔力のある者は魔法を磨いた。質のいいエレメントの湧くこの国には、殆どの民が魔力を持って生まれてくる為、幼少から魔法を学び生活に魔法が用いられることは多い。だが、闘うためにはより多くの魔力と才能、知識、忍耐が必要とされ、その数は多くはない。
そうして王国の人々は、互いを補いあって生きていくのだ。
クラーワ王国では魔力を多く持つ者を保護し、魔法を磨いている。集め鍛え上げ中からより優秀な魔導士から魔導騎士団なるものを古くからつくっている。
その魔術の精鋭が集まる魔導騎士団の戸を、1人の娘が叩いた。
朝陽を浴びた年頃の娘の金色の髪は、光をまとい輝きを増している。柔らかい風がその見事な金糸と、娘の金糸を結わいた瑠璃色のリボンをふわりと揺らした。
「……えと、おじゃまします……アレクさんいらっしゃいます?」
門番に案内してもらいたどり着いた魔導騎士団の本部。少し手前で別れた門番の騎士は勝手に入っていいと言っていた。簡単に開いてしまった扉の中に滑り込むと、娘は建物の中を見渡した。
天井の高い作りに、腰の位置くらいまでの壁は板張りで、その上部は均等感覚に光を取り込む大きな窓。深く茶色い板はオークの木だろう。板の無い壁や天井は白い漆喰が塗られていて、広い空間には木製の柱が点在し建物を支えている。並べられている木製のテーブルとイス。カウンターもあり、その先には厨房らしい空間が見て取れる。食事を提供しているであろうこのホールはこの建物の中心なのかもしれない。奥には階段や扉が数個あり、事務所と書かれた札や医務室と書かれた札がかけられている。階段はオープンスペース――そこにもテーブルと椅子がある――の2階に繋がるものと、上階に繋がるものがあるようだ。
カウンターに座って朝食を食べていた様子の体格のいい男が、セレナの声を聴きふり返った。昨日駅の出口で幼馴染をさらった男とよく似たオレンジ色の髪の男だった。
*
*
*
「それでは、お嬢さんはこの騎士団に所属したいと?」
目の前に座るのは、引き締まった筋肉を持ち、体格が良く、年上のように感じるオレンジ色の髪の青年。青年は翡翠のようなグリーンの目を細めてセレナを見る。その手にはセレナが手渡したこの魔導騎士団の団長からの推薦が書かれたメモの切れ端が渡されている。アレクへと書かれた其の一枚のメモを目にした時のこの男の表情は、とっても微妙なものだったのは言うまでもない。
――思いっきり溜息付いたもんね……
――『今度はなんだ…』とか言ってたけど……、
――ラジット小父様、いつもこんな事してるのかしら?
本来書いてくれてた正式に扱ってくれそうな入団許可書を破いて改めて推薦文を書いてくれたのだが、そうと知らなければその辺のメモに適当に書いたようにも見える。そう受け取られてしまった場合、そのメモは若い娘に強請られてラジットが適当に書いてやったもので、本気では無いモノと捉えられ兼ねないかもしれないのだ。目の前の男の目は、熱を灯さない呆れた色を乗せている。
「ええ」
――普段通りだと月に一度の入団試験らしいから…
――特別にすぐに入団テストを受けられるようにって書いてもらったけど……
――普通に門をたたいた方がよかったのかなぁ…
けしてバカにしているのではないと思いたい目の前の男からの視線に、セレナはにっこりと笑みを返した。その余裕とも、考え無しともとれるセレナの笑みにオレンジ頭の男は余計に表情を歪めた。
――ひやかしか、本気か…
――いや、団長の冗談という可能性も…
――もしかしたら、この娘の実力を見極められるか自分を試しているのかっ!?
――それか、誰かが化けているとか!?
オレンジ頭の男の目の前にいるのは、何とも線も細く華奢なお嬢さんだ。その上肌の色も白い。とてもではないが体を鍛えているとは思えない。本気にはとても見えないのかもしれない。男の視線はセレナを探っているのだろう。
――いやぁ……
――どこをどう見ても、ふつうのお嬢さんだよなぁ…
――ともすれば、箱入りのお嬢さんだ
――でもなぁ……確かに団長の文字だし、残存する魔力も団長のものだ…
――う~ん……もう少し、様子をみてみるか?
セレナから渡されたただのメモの様な紹介状を掲げてみたり、曲げてみたり、逆さに持ってみたり、いろいろして、オレンジ頭の男の翡翠の目は訝し気に細まったったままだ。
――大抵の厄介事はオレに押し付けんだもんなぁ……団長恨みますよぉ~
「……はぁ…で、お嬢さんはどんな獲物でと戦うんですかね? あぁ後、お名前をうかがっても?」
翡翠の目は細めたまま、片方の眉だけ吊り上げたその表情は、やはりバカにしているのかもしれない。
魔物の発生が身近なところにある為か、この王国に生活する者達は戦う術を学ぶ者が多くいる。ある者は拳や剣を磨き、ある者は癒しを学び、ある者は知恵を練る。
更に、魔力のある者は魔法を磨いた。質のいいエレメントの湧くこの国には、殆どの民が魔力を持って生まれてくる為、幼少から魔法を学び生活に魔法が用いられることは多い。だが、闘うためにはより多くの魔力と才能、知識、忍耐が必要とされ、その数は多くはない。
そうして王国の人々は、互いを補いあって生きていくのだ。
クラーワ王国では魔力を多く持つ者を保護し、魔法を磨いている。集め鍛え上げ中からより優秀な魔導士から魔導騎士団なるものを古くからつくっている。
その魔術の精鋭が集まる魔導騎士団の戸を、1人の娘が叩いた。
朝陽を浴びた年頃の娘の金色の髪は、光をまとい輝きを増している。柔らかい風がその見事な金糸と、娘の金糸を結わいた瑠璃色のリボンをふわりと揺らした。
「……えと、おじゃまします……アレクさんいらっしゃいます?」
門番に案内してもらいたどり着いた魔導騎士団の本部。少し手前で別れた門番の騎士は勝手に入っていいと言っていた。簡単に開いてしまった扉の中に滑り込むと、娘は建物の中を見渡した。
天井の高い作りに、腰の位置くらいまでの壁は板張りで、その上部は均等感覚に光を取り込む大きな窓。深く茶色い板はオークの木だろう。板の無い壁や天井は白い漆喰が塗られていて、広い空間には木製の柱が点在し建物を支えている。並べられている木製のテーブルとイス。カウンターもあり、その先には厨房らしい空間が見て取れる。食事を提供しているであろうこのホールはこの建物の中心なのかもしれない。奥には階段や扉が数個あり、事務所と書かれた札や医務室と書かれた札がかけられている。階段はオープンスペース――そこにもテーブルと椅子がある――の2階に繋がるものと、上階に繋がるものがあるようだ。
カウンターに座って朝食を食べていた様子の体格のいい男が、セレナの声を聴きふり返った。昨日駅の出口で幼馴染をさらった男とよく似たオレンジ色の髪の男だった。
*
*
*
「それでは、お嬢さんはこの騎士団に所属したいと?」
目の前に座るのは、引き締まった筋肉を持ち、体格が良く、年上のように感じるオレンジ色の髪の青年。青年は翡翠のようなグリーンの目を細めてセレナを見る。その手にはセレナが手渡したこの魔導騎士団の団長からの推薦が書かれたメモの切れ端が渡されている。アレクへと書かれた其の一枚のメモを目にした時のこの男の表情は、とっても微妙なものだったのは言うまでもない。
――思いっきり溜息付いたもんね……
――『今度はなんだ…』とか言ってたけど……、
――ラジット小父様、いつもこんな事してるのかしら?
本来書いてくれてた正式に扱ってくれそうな入団許可書を破いて改めて推薦文を書いてくれたのだが、そうと知らなければその辺のメモに適当に書いたようにも見える。そう受け取られてしまった場合、そのメモは若い娘に強請られてラジットが適当に書いてやったもので、本気では無いモノと捉えられ兼ねないかもしれないのだ。目の前の男の目は、熱を灯さない呆れた色を乗せている。
「ええ」
――普段通りだと月に一度の入団試験らしいから…
――特別にすぐに入団テストを受けられるようにって書いてもらったけど……
――普通に門をたたいた方がよかったのかなぁ…
けしてバカにしているのではないと思いたい目の前の男からの視線に、セレナはにっこりと笑みを返した。その余裕とも、考え無しともとれるセレナの笑みにオレンジ頭の男は余計に表情を歪めた。
――ひやかしか、本気か…
――いや、団長の冗談という可能性も…
――もしかしたら、この娘の実力を見極められるか自分を試しているのかっ!?
――それか、誰かが化けているとか!?
オレンジ頭の男の目の前にいるのは、何とも線も細く華奢なお嬢さんだ。その上肌の色も白い。とてもではないが体を鍛えているとは思えない。本気にはとても見えないのかもしれない。男の視線はセレナを探っているのだろう。
――いやぁ……
――どこをどう見ても、ふつうのお嬢さんだよなぁ…
――ともすれば、箱入りのお嬢さんだ
――でもなぁ……確かに団長の文字だし、残存する魔力も団長のものだ…
――う~ん……もう少し、様子をみてみるか?
セレナから渡されたただのメモの様な紹介状を掲げてみたり、曲げてみたり、逆さに持ってみたり、いろいろして、オレンジ頭の男の翡翠の目は訝し気に細まったったままだ。
――大抵の厄介事はオレに押し付けんだもんなぁ……団長恨みますよぉ~
「……はぁ…で、お嬢さんはどんな獲物でと戦うんですかね? あぁ後、お名前をうかがっても?」
翡翠の目は細めたまま、片方の眉だけ吊り上げたその表情は、やはりバカにしているのかもしれない。
0
あなたにおすすめの小説
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
〖完結〗旦那様には出て行っていただきます。どうか平民の愛人とお幸せに·····
藍川みいな
恋愛
「セリアさん、単刀直入に言いますね。ルーカス様と別れてください。」
……これは一体、どういう事でしょう?
いきなり現れたルーカスの愛人に、別れて欲しいと言われたセリア。
ルーカスはセリアと結婚し、スペクター侯爵家に婿入りしたが、セリアとの結婚前から愛人がいて、その愛人と侯爵家を乗っ取るつもりだと愛人は話した……
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全6話で完結になります。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
三回目の人生も「君を愛することはない」と言われたので、今度は私も拒否します
冬野月子
恋愛
「君を愛することは、決してない」
結婚式を挙げたその夜、夫は私にそう告げた。
私には過去二回、別の人生を生きた記憶がある。
そうして毎回同じように言われてきた。
逃げた一回目、我慢した二回目。いずれも上手くいかなかった。
だから今回は。
助けた騎士団になつかれました。
藤 実花
恋愛
冥府を支配する国、アルハガウンの王女シルベーヌは、地上の大国ラシュカとの約束で王の妃になるためにやって来た。
しかし、シルベーヌを見た王は、彼女を『醜女』と呼び、結婚を保留して古い離宮へ行けと言う。
一方ある事情を抱えたシルベーヌは、鮮やかで美しい地上に残りたいと思う願いのため、異議を唱えず離宮へと旅立つが……。
☆本編完結しました。ありがとうございました!☆
番外編①~2020.03.11 終了
【完結済】隣国でひっそりと子育てしている私のことを、執着心むき出しの初恋が追いかけてきます
鳴宮野々花@書籍4作品発売中
恋愛
一夜の過ちだなんて思いたくない。私にとって彼とのあの夜は、人生で唯一の、最良の思い出なのだから。彼のおかげで、この子に会えた────
私、この子と生きていきますっ!!
シアーズ男爵家の末娘ティナレインは、男爵が隣国出身のメイドに手をつけてできた娘だった。ティナレインは隣国の一部の者が持つ魔力(治癒術)を微力ながら持っており、そのため男爵夫人に一層疎まれ、男爵家後継ぎの兄と、世渡り上手で気の強い姉の下で、影薄く過ごしていた。
幼いティナレインは、優しい侯爵家の子息セシルと親しくなっていくが、息子がティナレインに入れ込みすぎていることを嫌う侯爵夫人は、シアーズ男爵夫人に苦言を呈す。侯爵夫人の機嫌を損ねることが怖い義母から強く叱られ、ティナレインはセシルとの接触を禁止されてしまう。
時を経て、貴族学園で再会する二人。忘れられなかったティナへの想いが燃え上がるセシルは猛アタックするが、ティナは自分の想いを封じ込めるように、セシルを避ける。
やがてティナレインは、とある商会の成金経営者と婚約させられることとなり、学園を中退。想い合いながらも会うことすら叶わなくなった二人だが、ある夜偶然の再会を果たす。
それから数ヶ月。結婚を目前に控えたティナレインは、隣国へと逃げる決意をした。自分のお腹に宿っていることに気付いた、大切な我が子を守るために。
けれど、名を偽り可愛い我が子の子育てをしながら懸命に生きていたティナレインと、彼女を諦めきれないセシルは、ある日運命的な再会を果たし────
生まれ育った屋敷で冷遇され続けた挙げ句、最低な成金ジジイと結婚させられそうになったヒロインが、我が子を守るために全てを捨てて新しい人生を切り拓いていこうと奮闘する物語です。
※いつもの完全オリジナルファンタジー世界の物語です。全てがファンタジーです。
※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。
今日結婚した夫から2年経ったら出ていけと言われました
四折 柊
恋愛
子爵令嬢であるコーデリアは高位貴族である公爵家から是非にと望まれ結婚した。美しくもなく身分の低い自分が何故? 理由は分からないが自分にひどい扱いをする実家を出て幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱く。ところがそこには思惑があり……。公爵は本当に愛する女性を妻にするためにコーデリアを利用したのだ。夫となった男は言った。「お前と本当の夫婦になるつもりはない。2年後には公爵邸から国外へ出ていってもらう。そして二度と戻ってくるな」と。(いいんですか? それは私にとって……ご褒美です!)
十六歳の妹の誕生日、私はこの世を去る。
あいみ
恋愛
碌に手入れもされていない赤毛の伯爵令嬢、スカーレット。
宝石のように澄んだ青い髪をした伯爵令嬢、ルビア。
対極のような二人は姉妹。母親の違う。
お世辞にも美しいと言えない前妻の子供であるスカーレットは誰からも愛されない。
そばかすだらけで、笑顔が苦手な醜い姉。
天使のように愛らしく、誰からも好かれる可愛い妹。
生まれつき体の弱いルビアは長くは生きられないと宣告されていた。
両親の必死に看病や、“婚約者の献身的なサポート”のおかげで、日常生活が送れるようになるまで回復した。
だが……。運命とは残酷である。
ルビアの元に死神から知らせが届く。
十六歳の誕生日、ルビアの魂は天に還る、と。
美しい愛しているルビア。
失いたくない。殺されてなるものか。
それぞれのルビアを大切に思う想いが、一つの選択をさせた。
生まれてくる価値のない、醜いスカーレットを代わりに殺そう、と。
これは彼女が死ぬ前と死んだ後の、少しの物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる