結婚させられたくないので魔導騎士団に入団しますっ!

モー子

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本章 ――魔導騎士団の見習い団員――

11-2

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 目の前の男からの問いに、セレナの肩がビクッと揺れる。自分が名乗ってもいなかったことに、少々慌てたのだ。

「もっ申し遅れましたっ わたし、セ…セレナ・スペンサーと申します。王国東部、ガーランド侯爵領の一部を任されておりますスペンサー男爵家の養女に迎えられてございます。この度成人し、男爵家を出て独り立ちすることとなりました。魔法は後方支援が主です。回復とか…えと…補助魔法で…… 剣の手ほどき設けておりますが、弓と鞭の攻撃も可能ですっ」

 ちっ貴族の息のかかったお嬢様かぁとでもいうように訝し気な表情をセレナに向けてくるオレンジ頭の男。

 ――スピカたちを隠してだと、説明がし辛いからなぁ……
 ――うまく説明できる文句考えとかなきゃいけなかったなぁ…
 ――攻撃は出来なくないけど、う~ん
 ――相手を傷つける魔法……苦手なのよね…
 ――うんっ 攻撃だけが魔法じゃないしっ
 ――補助魔法だって重要処あるでしょっ

 肩を縮こませ――大丈夫かなぁ――と、不安げな視線を目の前のオレンジ頭の男に向けるセレナ。セレナの視線を受け、男は目を隠す程長く伸びたオレンジ色の頭をグシャリと掻き、苦笑を漏らした。

 ――ガーランド侯爵家縁のスペンサー男爵家の養女ねぇ……
 ――スペンサー男爵家って、アイツの実家じゃんっ
 ――長期休みの度に急いで実家に帰るあいつに、許嫁でも待ってるのかって聞いて否定されたけど……
 ――って、この子、アイツの妹!? 
 ――いやがいるなんて話聞いてないぞ……?
 ――何か隠してるとは思ってたけど、めちゃくちゃめんどくさい事じゃないか!? 
 ――団長恨みますよぉ……はぁ

目の前に座り神妙な面持ちの娘をちらりと見る。

 ――養女って言うけど……似てるな…
 ――ってことは…本物? 
 ――変なことしたら、ってしないけど…あいつ、やばいよなぁ
 ――……確認が必要、だな…はぁぁ…

「…オレは、アレクサンドロ・グレンジャーだ。団長補佐の様なものだ。で、回復魔法といったが、それはどの程度なのだろうか」

 オレンジ色の前髪の間から翡翠の瞳が覗いてくる。

 ――どの程度って……?

「えと、切り傷・打撲・大抵の怪我だったら大体は…ただ骨や内臓までのものとなると、ちょっと時間がかかります。病気に関しては、まだそれほど診たことがないので…説明しろと言われても…まだなんとも…あっ、ラジット・ニコラウス団長の額の火傷くらいなら、その場で治せました」

 アレクサンドロの細い目が一瞬見開かれた。それに気づくことなく、すまなそうに眉を下げるセレナ。
 本来の巷で行われている回復魔法とは、傷口を塞ぎ、炎症――痣や打撲など――を緩和させたりする応急処置の様ものだ。病気は医師が診断して薬の処方が主で、魔法では患者の回復するための細胞を活性化させてやるくらいしかできないのが現状だ。
 回復魔法専門の魔導師になると、回復魔法に他属性の魔法をうまく組み合わせて体内の様子を窺ったり、その症状に合わせて温めたり冷やしたりもする。回復専門の魔導士ですら得手な者は応用が利くと言うが、出来るものは稀だと言われている。それこそ妖精と契約している者くらいだ。
 そして、セレナはそれ以外もできると簡単に言ってしまっている。自分の能力もよくわかっていないその様子に、アレクサンドロはふむと顎に手をあてた。

 ――大抵の怪我って大きくでたな…
 ――ふむ 通常の回復魔法と少々違いがある様だな…
 ――全くが偽りで魔法に明るくない者が団長のおふざけに付き合わされているのか?
 ――いや、話のほとんどが事実だとすれば……ねぇ
 ――あそこの血筋なら……ありえないことは何もないからなぁ…
 ――それともそれを解ったうえでのスペンサー男爵家を引き合いに出したのか……?
 ――入団の為に稀な魔法が使えるという虚言ということも……?

 ――さすが団長が持ってくる、案件だ……はぁ
 ――ただねぇ…稀なものを持ってるだけで生き残れる世界じゃないんだよね 魔導騎士団ここは…

 不安そうに肩と一緒に頭を下げているセレナの金髪の頭を見つめる。アレクサンドロは心の中で深い溜息をおとした。

 ――無害にしか見えないなぁ…

 ――このお嬢ちゃんが言う通りなら、とんでもなく規格外だ
 ――それこそ星獣様の加護のある星獣の姫の直系であるカークス公やルイス位の規格外な話しだ…
 ――アイツの実の妹で、スぺサー男爵家のというならない話ではないが…
 ――わざわざ養女だと偽る意味、無いよなぁ…なんとも判断しにくいなぁ

 名門ガーランド侯爵家の血を引くスペンサー男爵家の血筋となれば、魔導士としての箔が付く上テストなんて受けないでも魔導騎士団入りは確実にできるだろう。実力もさることながらそれを周りが許すかどうかなどは関係なく、本人の希望だとごり押しできる力がガーランド侯爵家にはあるのだから。

 チラリとアレクサンドロに視線を向けるセレナ。セレナはどう占星魔術を一般的な魔術として説明するのが解りやすいか其ればかりが気になっていた。

 ――屋敷の近くで崖崩れがあった時、重症の人は傷を治しても体力使うからしばらく寝込んでいたのよね…
 ――それに、これまで病気の人なんて周りに居なかったんだもの…
 ――他の人が治療する姿とか見たことないしなぁ…
 ――オフィなんて治療大好きだから、呼び出したら勝手に治療しちゃうんだもんなぁ…
 ――人を助ける事だから、問題ないっちゃ問題ないから許しちゃってるけど…
 ――やっぱり騎士団、騎士ともなると攻撃力が重視されるのかな…

 ――アレクさん、何か考え込んでるし……
 ――何かいけないこと言っちゃったかなぁ……?



 チラリとあげたセレナの視界に映るアレクサンドロも、考え込んだまま眉間にシワを寄せている。
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