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本章 ――魔導騎士団の見習い団員――
18、セレナの魔法?
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白銀の毛皮に覆われた大きな肢体を持つ狼の様な獣が、魔導騎士団の詰め所を目指して空を駆ける。
今まさに、魔導騎士団の仲間であるラルフ・フーシェの兄である冒険者と、街の少女を救助に向おうとしていた魔導騎士団の面々は、口を開けて空を見上げている。否が応でもその白銀の獣の異様なほどの大きな魔力に魔導士たちはその存在を感じ見上げてしまったのだ。
「なんだ? あれ」
誰かが、魔力を感じて見上げた空に大きな影を見つけ呟いた。その姿は、魔力がある程度高いものにしか認識できない様になっているようで、魔導騎士団の団員や他の騎士の一部の者にしか見えていないのだろう。近くにいる中央騎士団や、駆り出された近衛騎士団の一部は、空に浮いている数人にしか見えないことだろう。
そして、魔導騎士団の誰かが呟いた。
「…フェンリル!?」
それは神話にでてくる幻獣の名だ。妖精とも魔物とも言われる白銀の狼。その体は馬車よりも、家よりも大きいという。
「…あれは、ルイスとセレナ?」
「じゃぁっ!」
「あぁ あの白い獣の背に乗っているのはローレンと捜索依頼のでていた少女だろうな」
身体能力を上げて魔力で視力を強化した者は、シリウスの背を確認していた。確かにシリウスの背に乗るのは、セレナの治療後気を失なってしまった群青色の髪の青年であり魔導騎士団の仲間ラルフの兄であり上級冒険者のローレン・フーシェと、昨日から行方不明となっていた街の少女だ。彼等をシリウスの背に乗せセレナ達は魔導騎士団の詰め所へと戻ってきたのである。
「レナ、大丈夫か?」
「大丈夫だよっ……でも、ラジット小父様怒るかな?」
『元々話す予定だったんだし、居ないんだから怒らないんじゃない?』
『自分が、主の代わりに怒られる…』
「…そういう事じゃないのよシリウス…」
――もう、あたしの魔力もヤバイし……眠いな…
――シリウスの事、説明しなくちゃいけないよなぁ…
――…治療後の人を無造作にルーの風で移動させるのは……まずいと思ったんだもん
――しょうがないよね…
考え込むように難しい顔を見せるセレナは、風魔法で飛ぶルイスの腕にお姫様抱っこでも、俵の様に担ぐでもなく、子供を抱くようにルイスの片手に座るような形で胸の前に抱えられている。正面から抱きついてるような姿勢にも近いが、慣れ過ぎていて動じていないようだ。
空いている方の手で背を撫で、ルイスはできるだけ優しい声を出した。
「……大丈夫だ」
「…うんっ」
たった一言の励ましだが、セレナから見えるルイスの顔は何とでもしてやるというような自信に満ちている。その様子にセレナは、ヘニャリと顔と気持ちを緩めた。
――そうだね…
「ルーが信じてるなら、あたしも信じるっ」
魔導騎士団の結束は固い。特別皆が仲がいいと言う訳ではないが、安全や人の為に決められたことはきちんと守るし、人が触れられたくないことを深く探ってくることは無い。ルイスはシリウスが姿を現しても大丈夫だと。そう言ってここまで戻ってきたのだ。
空に見える大きな塊1つと小さな人影の様な2人分の影が、段々大きくなってくる。
「…ルイスだな」
「じゃぁ、抱えられてるのはセレナちゃんかっ」
「で、あの白いのは……仲間って事だなっ」
「かっこいいなぁ!?」
集まっていた面子がザワザワと互いの顔を見合わせているところへ、詰所から出てきた白いマントを着込んだオレンジ色の青年。アレクサンドロは空を見上げ、溜息と共に額を押さえた。
団員同士の噂話は止まらないが、他の騎士団の騎士達は状況が読めずポカンと空を眺めている。慌てて魔導騎士団以外の騎士団に所属する者を捜索対象者が無事で戻ってきたからと解散させた。
「あぁ……あれが、セレナちゃんの魔法か!?」
「セレナちゃん魔獣使いか!?」
「いや、4足歩行の魔獣が空飛ばねぇだろうっ」
「じゃぁ魔法? 魔法を使う獣って……妖精!?」
誰かがポツリとつぶやいた。だがその後の声に打ち消される。
「兄さんっ!!!!」
白いマントを纏った群青色の髪の少年は、叫ぶと共に煙にまみれて群青色のオオカミの姿に変わり居ても立っても居られないのか遠吠えをした。
「オンオンオーーン!!」
その叫び声に白銀の魔獣の背に乗る青年の頭に獣耳が現れピクピクと動き、ゆっくりと瞼を持ち上げると体を起こした。傍らに座り込んでいた少女が、慌てて青年に抱きつく。
「……ラ…ラルフ…?」
「オオカミのお兄ちゃんっ」
胸に飛び込んできた少女を難なくキャッチし抱き留めた群青色の髪の青年ローレンは、ボンヤリとあたりを見渡した。頬に冷たい風があたる。少女の三つ編みが風を受けて盛り上がり揺れている。そして、向こうの方に見える街の明かり。どうやら随分と高い位置から見下ろしている。――絶句である。
「オオカミのお兄ちゃんもう大丈夫だよっ
あのお兄ちゃんとお姉ちゃんが助けてくれたの」
少女が指差すそこに空中を飛ぶ朱色の髪の青年と、その腕に抱えられている金髪の娘。ローレンが体をお起こしたので、セレナは声をかけた。
「体の調子どうですか? 勝手に治療しちゃったんだけどおかしいところあります?」
瑠璃色の大きな目に見つめられ、ローレンはピンと耳を立て口ごもる。だがすぐに真朱色のつり目を見てホッと息吐き出した。
「……ローレン、解かるか?」
「…………ルイス? だよな?」
群青色の髪の隙間から見える真っ黒な目が、真ん丸になった。落ち着いてみると自分の状況よりも、ルイスが女性を腕に抱いていることに驚いているようだ。
「ああ」
「……え…抱…誰、だ?」
ローレンの問いにルイスは答えないが、セレナは慌てて名乗った。
「セレナです ルイスとラルフ君と一緒の魔導騎士団に所属しています」
「オオカミのお兄ちゃんっ、セレナちゃんすごいんだよっ あっという間にお兄ちゃんの傷治しちゃったんだからっ!」
少女の言葉に、はっとして自身の身を触ってみるローレン。そのまま言葉を失っている。それもそうだろう。少女には強がって見せていたが、木片が身体を突き抜けるほどの怪我を負っていたのだから。ローレンは言葉を失ったままだ。
『主、到着だっ』
魔導騎士団の皆が見守る中、セレナ達は訓練所の広い平らな芝生に降り立った。
「やっぱ、フェンリルだよな?」
誰かが呟いたその声にセレナはあいまいに微笑んだ。
フェンリルとは白銀の毛を持つ狼に姿の幻獣だ。よく似ているかもしれないがそれはフェンリルの方がシリウスに倣ってその姿を似せているだけだ。星獣であるシリウスの方がよっぽど力の強い存在である。どう説明するかとシリウスを見上げたセレナ。シリウスは、静かに佇むだけだ。
セレナの手を傍らに立ったルイスが優しく握り込んだ。
今まさに、魔導騎士団の仲間であるラルフ・フーシェの兄である冒険者と、街の少女を救助に向おうとしていた魔導騎士団の面々は、口を開けて空を見上げている。否が応でもその白銀の獣の異様なほどの大きな魔力に魔導士たちはその存在を感じ見上げてしまったのだ。
「なんだ? あれ」
誰かが、魔力を感じて見上げた空に大きな影を見つけ呟いた。その姿は、魔力がある程度高いものにしか認識できない様になっているようで、魔導騎士団の団員や他の騎士の一部の者にしか見えていないのだろう。近くにいる中央騎士団や、駆り出された近衛騎士団の一部は、空に浮いている数人にしか見えないことだろう。
そして、魔導騎士団の誰かが呟いた。
「…フェンリル!?」
それは神話にでてくる幻獣の名だ。妖精とも魔物とも言われる白銀の狼。その体は馬車よりも、家よりも大きいという。
「…あれは、ルイスとセレナ?」
「じゃぁっ!」
「あぁ あの白い獣の背に乗っているのはローレンと捜索依頼のでていた少女だろうな」
身体能力を上げて魔力で視力を強化した者は、シリウスの背を確認していた。確かにシリウスの背に乗るのは、セレナの治療後気を失なってしまった群青色の髪の青年であり魔導騎士団の仲間ラルフの兄であり上級冒険者のローレン・フーシェと、昨日から行方不明となっていた街の少女だ。彼等をシリウスの背に乗せセレナ達は魔導騎士団の詰め所へと戻ってきたのである。
「レナ、大丈夫か?」
「大丈夫だよっ……でも、ラジット小父様怒るかな?」
『元々話す予定だったんだし、居ないんだから怒らないんじゃない?』
『自分が、主の代わりに怒られる…』
「…そういう事じゃないのよシリウス…」
――もう、あたしの魔力もヤバイし……眠いな…
――シリウスの事、説明しなくちゃいけないよなぁ…
――…治療後の人を無造作にルーの風で移動させるのは……まずいと思ったんだもん
――しょうがないよね…
考え込むように難しい顔を見せるセレナは、風魔法で飛ぶルイスの腕にお姫様抱っこでも、俵の様に担ぐでもなく、子供を抱くようにルイスの片手に座るような形で胸の前に抱えられている。正面から抱きついてるような姿勢にも近いが、慣れ過ぎていて動じていないようだ。
空いている方の手で背を撫で、ルイスはできるだけ優しい声を出した。
「……大丈夫だ」
「…うんっ」
たった一言の励ましだが、セレナから見えるルイスの顔は何とでもしてやるというような自信に満ちている。その様子にセレナは、ヘニャリと顔と気持ちを緩めた。
――そうだね…
「ルーが信じてるなら、あたしも信じるっ」
魔導騎士団の結束は固い。特別皆が仲がいいと言う訳ではないが、安全や人の為に決められたことはきちんと守るし、人が触れられたくないことを深く探ってくることは無い。ルイスはシリウスが姿を現しても大丈夫だと。そう言ってここまで戻ってきたのだ。
空に見える大きな塊1つと小さな人影の様な2人分の影が、段々大きくなってくる。
「…ルイスだな」
「じゃぁ、抱えられてるのはセレナちゃんかっ」
「で、あの白いのは……仲間って事だなっ」
「かっこいいなぁ!?」
集まっていた面子がザワザワと互いの顔を見合わせているところへ、詰所から出てきた白いマントを着込んだオレンジ色の青年。アレクサンドロは空を見上げ、溜息と共に額を押さえた。
団員同士の噂話は止まらないが、他の騎士団の騎士達は状況が読めずポカンと空を眺めている。慌てて魔導騎士団以外の騎士団に所属する者を捜索対象者が無事で戻ってきたからと解散させた。
「あぁ……あれが、セレナちゃんの魔法か!?」
「セレナちゃん魔獣使いか!?」
「いや、4足歩行の魔獣が空飛ばねぇだろうっ」
「じゃぁ魔法? 魔法を使う獣って……妖精!?」
誰かがポツリとつぶやいた。だがその後の声に打ち消される。
「兄さんっ!!!!」
白いマントを纏った群青色の髪の少年は、叫ぶと共に煙にまみれて群青色のオオカミの姿に変わり居ても立っても居られないのか遠吠えをした。
「オンオンオーーン!!」
その叫び声に白銀の魔獣の背に乗る青年の頭に獣耳が現れピクピクと動き、ゆっくりと瞼を持ち上げると体を起こした。傍らに座り込んでいた少女が、慌てて青年に抱きつく。
「……ラ…ラルフ…?」
「オオカミのお兄ちゃんっ」
胸に飛び込んできた少女を難なくキャッチし抱き留めた群青色の髪の青年ローレンは、ボンヤリとあたりを見渡した。頬に冷たい風があたる。少女の三つ編みが風を受けて盛り上がり揺れている。そして、向こうの方に見える街の明かり。どうやら随分と高い位置から見下ろしている。――絶句である。
「オオカミのお兄ちゃんもう大丈夫だよっ
あのお兄ちゃんとお姉ちゃんが助けてくれたの」
少女が指差すそこに空中を飛ぶ朱色の髪の青年と、その腕に抱えられている金髪の娘。ローレンが体をお起こしたので、セレナは声をかけた。
「体の調子どうですか? 勝手に治療しちゃったんだけどおかしいところあります?」
瑠璃色の大きな目に見つめられ、ローレンはピンと耳を立て口ごもる。だがすぐに真朱色のつり目を見てホッと息吐き出した。
「……ローレン、解かるか?」
「…………ルイス? だよな?」
群青色の髪の隙間から見える真っ黒な目が、真ん丸になった。落ち着いてみると自分の状況よりも、ルイスが女性を腕に抱いていることに驚いているようだ。
「ああ」
「……え…抱…誰、だ?」
ローレンの問いにルイスは答えないが、セレナは慌てて名乗った。
「セレナです ルイスとラルフ君と一緒の魔導騎士団に所属しています」
「オオカミのお兄ちゃんっ、セレナちゃんすごいんだよっ あっという間にお兄ちゃんの傷治しちゃったんだからっ!」
少女の言葉に、はっとして自身の身を触ってみるローレン。そのまま言葉を失っている。それもそうだろう。少女には強がって見せていたが、木片が身体を突き抜けるほどの怪我を負っていたのだから。ローレンは言葉を失ったままだ。
『主、到着だっ』
魔導騎士団の皆が見守る中、セレナ達は訓練所の広い平らな芝生に降り立った。
「やっぱ、フェンリルだよな?」
誰かが呟いたその声にセレナはあいまいに微笑んだ。
フェンリルとは白銀の毛を持つ狼に姿の幻獣だ。よく似ているかもしれないがそれはフェンリルの方がシリウスに倣ってその姿を似せているだけだ。星獣であるシリウスの方がよっぽど力の強い存在である。どう説明するかとシリウスを見上げたセレナ。シリウスは、静かに佇むだけだ。
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