結婚させられたくないので魔導騎士団に入団しますっ!

モー子

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本章 ――魔導騎士団の見習い団員――

13-2

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「セレナ、ルイス、いるか?」

 聞き覚えのある声に、セレナは慌ててたたずまいを直すと扉へと手をかけた。すかさずシリウスが寝ていた3人を咥え背に乗せ、奥の部屋へ放り込んだ。それに合わせて、セレナは扉を開ける。そこには思った通りの白いマントに身を包んだ長身の男性。フードを外しているのでオレンジ色の髪がフワフワと揺れている。

「アレクさん」
「あぁ、片付けているところ悪いな、ちょっといいか?」

 訪ねてきたのはアレクサンドロだ。その手にはいくつかの書類とカタログの様なものが握られている。そして付いてきたらしい従者の装いの者が廊下に抱えていたものを降ろしていく。魔導騎士団専属の従者らしい。

「使っていない家具をもらってきた。いいものがあったら使ってくれ。要らなかったら廊下に出しておいていい。まとめて片付けるから」
「ありがとうございます」

「…片付いてるな、テーブルとソファ入れちまうか? それと、書類があるんでサインくれ」
「ありがとうございます どうぞ、入ってください」

 入団と入寮の書類らしい。2間続きの部屋の入り口に近い方の部屋に、持ってきてくれたソファとテーブルを置いてもらい、そこに向い合わせで座る。アレクサンドロを残し荷物を運んでくれ従者はすぐに退室した。

「ルイスは、随分セレナの連れと仲がいいんだな」

 アレクサンドロつぶやきに、セレナはビクリと肩を揺らした。従者が出て行く時扉を閉めた反動で開いてしまったのか、風で開いてしまったのか奥の部屋へ続く扉が開いて、その奥でフワフワの毛玉と一緒に眠っているルイスが見えてしまっている。
 
 ――もっとうまく隠してほしかったよ、シリウス…

「警戒しなくていい。試験の後、妖精の話を言いかけたね…答えられることだけでいい少し質問していいかい?」
「…はい」

 部屋の奥からルイスと星獣の規則正しい寝息が聞こえてくる。

「大丈夫だ。さっきも言ったが、オレは君の義理の兄とされるヒューバートと友人だ。数多の夜這いや…いや夜だけではないな…昼間からヒューの部屋に忍び込んで全裸でベッドにもぐりこんでいる子女を何度追い払った事か……はぁ」
「お……お世話になってます…」

 疲れたように遠い目をするアレクサンドロに、セレナは眉を下げてペコリと頭を下げた。アレクサンドロは頭振る。

「いやそんな話じゃないんだ。話したように、ヒューとは親密な中だと思っている。そんな訳で君の家の事情にも少し耳に入っている。もちろん、他言するつもりはない……君はの愛し子という線でいくのかい?」
「えと……」

 茶化している雰囲気は一切なく、真剣な表情のアレクサンドロ。翡翠の目がオレンジ色の髪の隙間からセレナをまっすぐと見つめている。

 ――笑ってごまかせる雰囲気じゃない…

「いい方を変えよう。君の魔法は、特殊なものが多そうだ。妖精のせいにしてしまうのが妥当だとオレも思う」
「っ……!?」
「…で端的に言うと、団長の指示かい?」

 矢継ぎ早に言葉を投げかけられ、セレナは素直に首を横に振った。

「…いいえ 特別言葉で言われたわけではないんです ただラジット団長がと強調して話していたので…」
「……そうした方がいいと、自分で判断したのか」

「はい…ラジット団長は妖精の事は名言にしないで、必要に迫られた時は仕事で組む人にだけ。それも他言無用の魔法契約をしてから…と進められてました」
「うん……とりあえず、今度からそうした方がいい」

 柔らかく微笑むアレクサンドロに、セレナの緊張も少しだが解かれたようだ。僅かに笑みが漏れる。

「で、ここからは俺の独り言なんで、返事はしなくていいから聞いてほしい」

 アレクサンドロの表情は真剣そのものだ。セレナは素直にうなずいた。

「ヒューから、養女の妹がいると聞いたことは無い ただ、ヒューの言葉の端々に下に弟か妹がいるとは思っていた……きっとその子をヒューが溺愛しているという事もね」
「え…」

 表情が固まってしまったセレナに、アレクサンドロは真剣な表情からいつものように目を細めた。

「…恐がらなくていい 君を怯えさせたらヒューが怖すぎるし、人に言うつもりはないから。事情は分からないが、必要なことなんだろう? ……ただ、君がここに居るって事は、ヒューが今にも飛んできてもおかしくない状況のはずだ…そうだろ…? 」
「……」

 金色の頭がコクリと縦に揺れる。目下の問題でもあった。実は、不意に会いに行って驚かそうと思い、事情を知っていて兄の近くにいるしし座のレオには、黙っているように言ってあった。だが、簡単に王都のガーランド侯爵邸に尋ねる事は避けた方がいいようだった。そうなると、兄に直接説明する機会を設けなければならない。突如どこかですれ違い、又は遠目に目を合わせ、『セリーナっ!!』と叫ばれた上に抱き上げられてしまっては、誤魔化しようがなくなりそうなのだ。セリーナという名は、上位貴族の一部にバレてしまっているようなのだから――。

 セレナの様子にアレクサンドロは眉間にしわを寄せた。

「ヒューにはまだ、知らせてないんだね?」

 再び、金色の頭がコクリと縦に揺れる。それを受けて、アレクの表情が固まった。顔から少しずつ血の気が引いていっているようだ。予想はしていたようだが、ショックを受けているのだろう。それはそうだろう。セレナの兄であるヒューバートの性格を正しく理解していれば、彼の身内に対しての溺愛は濃すぎるのだ。ただ巻き込まれてしまっただけの親友にさえ、妹の近くにいたというだけで、嫉妬で殺意を向けてきそうなほどに――。

 ――絶対、八つ当たりされる…
 ――勘弁してくれよ…

 黙っていたことが知れれば、何をされることか――。

「…はぁ……オレは君がヒューの妹だなんて知らなかった…気が付かなかった…何も知らない……だか残念なことに、オレはヒューに隠し事が成功したためしがない…だから、オレが前に兄上に事情を説明しておいてくれると助かるんだが…手紙なら、オレが直接届けてもいい…っ!!」 
「うぅ……すみません…」 

 懇願するように、セレナに頼むと頭を下げるアレクサンドロの態度に、はたして自分の兄は自分のいないところでどんな人間なのだろうと、セレナの背中をぬるい汗がつたい落ちた。

 ――そう言えば、ルーですらヒュー兄様に逆らえないのよね…
 ――……近くにいるんだもんっ、会いたいなぁ

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