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本章 ――魔導騎士団の見習い団員――
17-3
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「凄まじかったんだね…」
「そうだな……ローレンらしき姿はないな」
小屋であったであろう丸太の残骸。丸太は組まれて残っているところもあるが、折れてバラバラになっている木片になっているモノがほとんどだ。
小屋の中にあったものらしき布やランプの残骸や割れたガラスも一緒に散らばっているところを見ると、小屋ごと飛ばされここに落ち、落ちた衝撃で小屋が倒壊したのかと推測された。
『酷いわね…』
「女の子とローレンさんはどこに?」
幸いなことに、誰かが大けがをしたような様子はその場に見てとれなかった。とりあえず詰所に飛ばされていた小屋を見つけた事をルイスに報告しに行ってもらう事にした。普段であれば星獣を向かわせてもいいのだが、まだ周りに星獣のことが知れていないのでスピード優先の今日は難しいだろう。説明する時間が惜しい。
「じゃぁ、オレが行くけどセレナは無茶すんなよっ!!」
「はーい」
『姫の事は、わたしが見てるわっ』
しぶしぶと一度詰所への連絡に戻るルイスを見送るセレナとスピカ。そして、セレナは改めてスピカに魔力を受け渡し、あたりを捜索することに。
「ねぇ、まずは小屋が飛んできた時の事わからないかな? あと、ローレンさんじゃなくて、女の子を探してみてっ」
『……そうね』
セレナの一言に、スピカは大きく頷いた。先ほどから群青色の髪の青年を捜索していて見つからなかったのだ。セレナに言われてみれば、ローレンは獣人ということなので青年の姿でいるとは限らないのだ。
セレナから貰った魔力を糧に、小さな妖精の如き乙女が小さな手を伸ばして木に触れ目を閉じ辺りの木々に語りかけ捜索に集中している。
黙り混んで数分、その可愛らしい目をパチリと開き、スピカは直ぐにセレナに視線を向ける。
『姫っ!!』
スピカが手を伸ばしてきたので、セレナはその手ごとスピカの体ごと手で包み込んだ。そこからスピカからの情報が流れ込んでくる。
昨夜、丸太小屋が強風に飛ばされてきた処だ。
地面に小屋がぶつかる瞬間、そこから群青色の毛に包まれた獣が女の子を背に乗せ飛び出してきた様子。
小屋は地面に叩きつけられて、崩壊した。
暴風が巻き上げたものが群青色の体に何度かぶつかっている。
大きな木の根元で嵐を避ける為群青色の獣は、毛皮に包まれた体で少女を守っていた。
映像というか断片的なモノクロで砂がかかった様な荒い画像がセレナに流れ込んできていた。そして、その後息を飲む光景が流れ込んでくる。
ふたりに忍び寄る数個の影だ。
嵐が去り、疲れからかウトウトしてしまった2人を起こしたのは魔獣の唸り声だった。
傷ついた体から血のにおいが、魔物を誘い出してしまったのかもしれなかった。
少女を背に庇い戦闘を避ける群青色の獣は、木の上に跳ねて飛び乗り、自分達を取り囲んでいる魔獣の群れの隙を突いて逃げだした。
それを追う魔獣はダイアウルフの群の様だった。
瑠璃色の目が真剣さを帯び、眉間にしわがよる。スピカがセレナの手の平ですくっと立ち上がった。目を合わせて頷き合う。
「道を辿ろう」
『そうね』
ルイスを待っている事も考えたが、これは一刻を争うかもしれないのだ。怪我をしていれば癒さなくては手遅れになってしまうかもしれない。微かに向こうから血の臭いが漂ってきている気がするのだ。
スピカを通して木々の記憶を詠みながら道なき道を進んでいく。
魔獣との戦闘。少女を背に庇いながらのやり取り、そして怪我をしながらも、敵を数匹倒して行った。良く見ればそこら辺に戦闘の跡があり、倒されたであろう魔獣の魔石が転がっている。魔石は冒険者ギルドに持っていけば、討伐報酬が貰える。それを生業にしている冒険者が、知らないはずはないのだ。
――魔石を拾う余裕もなかったって事……
そして、再び逃走。武器を持っていないようで、獣の姿から人に変じることは無かった。その姿は、ボロボロで痛々しくも木に記憶されていた。
スピカを通して木から伝わってくる情報に、セレナにも焦りが見えてくる。そのまま走り森を突き進み、木々が開けたところにでる。視界が開ければ、その先は崖のようだ。
崖手前の少しひらけた場所。そこにも魔石が転がっている。
崖の手前に生えている大木が、崖から落ちる群青色の毛の獣とその背に乗る少女を見ていた。
「そんなっ!!」
『っ!!』
セレナとスピカは崖に駆け寄った。スピカは空かさず地面に手を当て生き物の気配を探索する。谷底よりも手前に2つの生き物を確認する。少しホッとしたが、それでもここから3階建ての建物の高さ程落ちたところだ。2つの気配の内、1つは大きいが薄くゆらゆらと揺れている。今すぐにでも崖を飛びおりそうなセレナの首根っこを、手のひらサイズの乙女が羽をバタつかせ必死にとどめた。
『ルーを待ちましょう』
「…スピカはルーに、この場所を伝えてきてっ!」
振り向いた瑠璃色の目は真剣だ。だが、彼女を守っていると普段から自負している羽を生やした小さな乙女の星獣は素直に従えるわけがない。
「あたしは、蔓を使って彼等の場所まで降りる」
『姫っ』
拒否をするスピカの声色に、瑠璃色の目に涙が滲む。
「だって、気配がおかしいっ ダメって言わないで、怪我をしているかもしれないんだよっ!!
そこにいるのよっ! 放って置けないよっ」
「そうだな……ローレンらしき姿はないな」
小屋であったであろう丸太の残骸。丸太は組まれて残っているところもあるが、折れてバラバラになっている木片になっているモノがほとんどだ。
小屋の中にあったものらしき布やランプの残骸や割れたガラスも一緒に散らばっているところを見ると、小屋ごと飛ばされここに落ち、落ちた衝撃で小屋が倒壊したのかと推測された。
『酷いわね…』
「女の子とローレンさんはどこに?」
幸いなことに、誰かが大けがをしたような様子はその場に見てとれなかった。とりあえず詰所に飛ばされていた小屋を見つけた事をルイスに報告しに行ってもらう事にした。普段であれば星獣を向かわせてもいいのだが、まだ周りに星獣のことが知れていないのでスピード優先の今日は難しいだろう。説明する時間が惜しい。
「じゃぁ、オレが行くけどセレナは無茶すんなよっ!!」
「はーい」
『姫の事は、わたしが見てるわっ』
しぶしぶと一度詰所への連絡に戻るルイスを見送るセレナとスピカ。そして、セレナは改めてスピカに魔力を受け渡し、あたりを捜索することに。
「ねぇ、まずは小屋が飛んできた時の事わからないかな? あと、ローレンさんじゃなくて、女の子を探してみてっ」
『……そうね』
セレナの一言に、スピカは大きく頷いた。先ほどから群青色の髪の青年を捜索していて見つからなかったのだ。セレナに言われてみれば、ローレンは獣人ということなので青年の姿でいるとは限らないのだ。
セレナから貰った魔力を糧に、小さな妖精の如き乙女が小さな手を伸ばして木に触れ目を閉じ辺りの木々に語りかけ捜索に集中している。
黙り混んで数分、その可愛らしい目をパチリと開き、スピカは直ぐにセレナに視線を向ける。
『姫っ!!』
スピカが手を伸ばしてきたので、セレナはその手ごとスピカの体ごと手で包み込んだ。そこからスピカからの情報が流れ込んでくる。
昨夜、丸太小屋が強風に飛ばされてきた処だ。
地面に小屋がぶつかる瞬間、そこから群青色の毛に包まれた獣が女の子を背に乗せ飛び出してきた様子。
小屋は地面に叩きつけられて、崩壊した。
暴風が巻き上げたものが群青色の体に何度かぶつかっている。
大きな木の根元で嵐を避ける為群青色の獣は、毛皮に包まれた体で少女を守っていた。
映像というか断片的なモノクロで砂がかかった様な荒い画像がセレナに流れ込んできていた。そして、その後息を飲む光景が流れ込んでくる。
ふたりに忍び寄る数個の影だ。
嵐が去り、疲れからかウトウトしてしまった2人を起こしたのは魔獣の唸り声だった。
傷ついた体から血のにおいが、魔物を誘い出してしまったのかもしれなかった。
少女を背に庇い戦闘を避ける群青色の獣は、木の上に跳ねて飛び乗り、自分達を取り囲んでいる魔獣の群れの隙を突いて逃げだした。
それを追う魔獣はダイアウルフの群の様だった。
瑠璃色の目が真剣さを帯び、眉間にしわがよる。スピカがセレナの手の平ですくっと立ち上がった。目を合わせて頷き合う。
「道を辿ろう」
『そうね』
ルイスを待っている事も考えたが、これは一刻を争うかもしれないのだ。怪我をしていれば癒さなくては手遅れになってしまうかもしれない。微かに向こうから血の臭いが漂ってきている気がするのだ。
スピカを通して木々の記憶を詠みながら道なき道を進んでいく。
魔獣との戦闘。少女を背に庇いながらのやり取り、そして怪我をしながらも、敵を数匹倒して行った。良く見ればそこら辺に戦闘の跡があり、倒されたであろう魔獣の魔石が転がっている。魔石は冒険者ギルドに持っていけば、討伐報酬が貰える。それを生業にしている冒険者が、知らないはずはないのだ。
――魔石を拾う余裕もなかったって事……
そして、再び逃走。武器を持っていないようで、獣の姿から人に変じることは無かった。その姿は、ボロボロで痛々しくも木に記憶されていた。
スピカを通して木から伝わってくる情報に、セレナにも焦りが見えてくる。そのまま走り森を突き進み、木々が開けたところにでる。視界が開ければ、その先は崖のようだ。
崖手前の少しひらけた場所。そこにも魔石が転がっている。
崖の手前に生えている大木が、崖から落ちる群青色の毛の獣とその背に乗る少女を見ていた。
「そんなっ!!」
『っ!!』
セレナとスピカは崖に駆け寄った。スピカは空かさず地面に手を当て生き物の気配を探索する。谷底よりも手前に2つの生き物を確認する。少しホッとしたが、それでもここから3階建ての建物の高さ程落ちたところだ。2つの気配の内、1つは大きいが薄くゆらゆらと揺れている。今すぐにでも崖を飛びおりそうなセレナの首根っこを、手のひらサイズの乙女が羽をバタつかせ必死にとどめた。
『ルーを待ちましょう』
「…スピカはルーに、この場所を伝えてきてっ!」
振り向いた瑠璃色の目は真剣だ。だが、彼女を守っていると普段から自負している羽を生やした小さな乙女の星獣は素直に従えるわけがない。
「あたしは、蔓を使って彼等の場所まで降りる」
『姫っ』
拒否をするスピカの声色に、瑠璃色の目に涙が滲む。
「だって、気配がおかしいっ ダメって言わないで、怪我をしているかもしれないんだよっ!!
そこにいるのよっ! 放って置けないよっ」
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