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暗いダンジョンの中で捨てられました──捨てる勇者あれば拾う妖精あり?
にぃ。『私のマジックポーチから、彼らの預かりものを返却します』──ちゃんと管理できるのかしら?
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⛺
私のマジックポーチから、彼らから預かっていたもの──外傷用軟膏や疲労回復ドリンク、不思議な鍵5本と寝袋4人分、お鍋や食器などの日用品なんかを取り出して、アレフとクリスのマジックザックに振り分ける。
キャロラインの予備のサニタリー用品はどうしよう…… 彼らに預けにくいよね?
しかも、必要になった時に、出せって言いにくいよね。
「かしなさいよ!」
頰を染めて目も眇め、ひったくるように受け取る紅焔の魔法使い。
キャロラインも、一応、小さな巾着袋を腰に1つ提げていて、魔術に使う触媒や薬品、小道具などを入れている。
そこへ、化粧品やサニタリー用品を突っ込んでいたが、巾着袋は口が閉まりきらなくなっていた。
「キャロライン、こちらに幾つか分け持とう」
「い、いいわよ。魔法に必要なものなの。戦闘が始まってから受け渡しなんて出来ないでしょ?」
赤面したまま、アレフ達に背を向けるキャル。
「キャル、荷物、大丈夫?」
「あ、ああ、あ、アンタに心配される筋合いはないわよ。技能もない無能平民のくせに無礼者ね」
「筋合いは……、さっきまでパーティメンバーだったじゃないの。心配しちゃだめ?」
ツンデレキャルは、ほんと、ちょっとしたことが素直に出来ないけど、いい子なんだよ?
「キャロライン、触媒や魔導具はともかく、化粧品は、朝晩だけでいいだろう? こちらへ」
有無を言わせない眼力で、クリスが手を出す。
キャロラインは渋々、サニタリー用品は見えないように突っ込み直しつつ化粧品ポーチを取り出し、クリスの差し出された手に載せる。
「他に、戦闘中に使わないものがあれば預かるよ」
「キャルの下gi……着替えは、クリスが持つの? アレフ?」
キャルの下着が詰まったレースがふんだんに使われた小さい巾着袋と、魔法使いのローブが入った綿の巾着袋を取り出して、ふたりの顔を見る。
「私のザックの方が、容量も多いし、時間経過もない。こちらで預かろう」
「あ、アレフ…… あ、ありが……と」
下着や着替えを預けるのは恥ずかしいのだろう、キャロラインの声がどんどん小さくなる。
「しかし、解せんなぁ。お前のその小さなポーチのどこにそれだけ詰まっていたのだ?」
「もしかしたら、コハクのポーチの方が、高性能なのかもしれないね」
眉を顰め、首を傾げるエドガーと、にっこり微笑んで、私のイチゴの形をした手のひらサイズのポーチを見つめるアレフ。
「よくわかんない。お祖母さんに貰ったの」
花の形をした乳白色の大小のビーズで繋いで肩から斜めにかけて、ポーチ部分は真っ赤なハートのイチゴの形をしている。
全体の赤も、種を模した黒や白の点も、ガラスのビーズである。可愛かろ?
「見た目が可愛いから、ちっちゃい頃から愛用してて、どんだけ入るか、いっぱいにしたことないの」
「コハクに、似合ってるよ」
「ありがとう。お気に入りなの」
今は、こんなに育ちがよくて人当たりの柔らかいアレフなのに、いざ魔物と戦う時はキリッとして、頼りになるパーティのリーダーなの。
オンオフがはっきりしてるのね、きっと。
私の持ち物は、ふたつだけ。
このイチゴ型のマジックポーチと、青い夜光石のキラキラしたマジックロッド──通称『癒しの夜光石の杖』で、衣装は、お祖母さんお手製の『ゆるっと寝間着みたいな部屋着ローブ』
これを着てると、身体が軽くなった気がして、疲れにくいの。
お薬とか、着替えとか、お鍋や簡易コンロ、ポットや寝袋、そういった必需品はみんなこのポーチに入ってる。おやつのクッキーやチーズなんかもね。
そして、言ってないけど、子供の頃からの愛用品ゆえに、ちっちゃな頃からのお宝も入ってる。
誰にも見られない、盗まれない、安心できる隠し場所だから。
「そうだ、思い出した。アレフ、おやつにクッキー焼いてきたの、みんなで食べて?」
レース飾りに縁をカットしたペーパータオルに包んで、リボンでしばったものを手渡す。
「ありがとう。コハクはお菓子を作るのがとても上手だからね、楽しみだ」
🌻
にこにこ
🌻
……なんだろう、今から、二年間共に戦ってきた仲間に捨てられてお別れすると言うのに、この和やかな雰囲気は。
これも、アレフの人柄かな。
まあ、いいや。
ポーチから、撥水布のポンチョを取り出し、頭から被った。
「少しでも、気配は断った方がいいよね」
野生の獣の多い森の中を歩く時に振り掛ける、ニオイ消しのスプレーをかけた。
「用意いいわね」
「私は、身を守る技能は持ってないからね、急に襲われた時に、どんくさそうだと真っ先に狙われたりして、みんなに迷惑かけないように、いつも使ってるよ」
「まあ、この中では一番どんくさいわよね」
荷物の振り分けも済んで、お互いに身支度を整えたのを見届けると、アレフ達三人は、ダンジョンの奥へ向かって進んでいった。
私のマジックポーチから、彼らから預かっていたもの──外傷用軟膏や疲労回復ドリンク、不思議な鍵5本と寝袋4人分、お鍋や食器などの日用品なんかを取り出して、アレフとクリスのマジックザックに振り分ける。
キャロラインの予備のサニタリー用品はどうしよう…… 彼らに預けにくいよね?
しかも、必要になった時に、出せって言いにくいよね。
「かしなさいよ!」
頰を染めて目も眇め、ひったくるように受け取る紅焔の魔法使い。
キャロラインも、一応、小さな巾着袋を腰に1つ提げていて、魔術に使う触媒や薬品、小道具などを入れている。
そこへ、化粧品やサニタリー用品を突っ込んでいたが、巾着袋は口が閉まりきらなくなっていた。
「キャロライン、こちらに幾つか分け持とう」
「い、いいわよ。魔法に必要なものなの。戦闘が始まってから受け渡しなんて出来ないでしょ?」
赤面したまま、アレフ達に背を向けるキャル。
「キャル、荷物、大丈夫?」
「あ、ああ、あ、アンタに心配される筋合いはないわよ。技能もない無能平民のくせに無礼者ね」
「筋合いは……、さっきまでパーティメンバーだったじゃないの。心配しちゃだめ?」
ツンデレキャルは、ほんと、ちょっとしたことが素直に出来ないけど、いい子なんだよ?
「キャロライン、触媒や魔導具はともかく、化粧品は、朝晩だけでいいだろう? こちらへ」
有無を言わせない眼力で、クリスが手を出す。
キャロラインは渋々、サニタリー用品は見えないように突っ込み直しつつ化粧品ポーチを取り出し、クリスの差し出された手に載せる。
「他に、戦闘中に使わないものがあれば預かるよ」
「キャルの下gi……着替えは、クリスが持つの? アレフ?」
キャルの下着が詰まったレースがふんだんに使われた小さい巾着袋と、魔法使いのローブが入った綿の巾着袋を取り出して、ふたりの顔を見る。
「私のザックの方が、容量も多いし、時間経過もない。こちらで預かろう」
「あ、アレフ…… あ、ありが……と」
下着や着替えを預けるのは恥ずかしいのだろう、キャロラインの声がどんどん小さくなる。
「しかし、解せんなぁ。お前のその小さなポーチのどこにそれだけ詰まっていたのだ?」
「もしかしたら、コハクのポーチの方が、高性能なのかもしれないね」
眉を顰め、首を傾げるエドガーと、にっこり微笑んで、私のイチゴの形をした手のひらサイズのポーチを見つめるアレフ。
「よくわかんない。お祖母さんに貰ったの」
花の形をした乳白色の大小のビーズで繋いで肩から斜めにかけて、ポーチ部分は真っ赤なハートのイチゴの形をしている。
全体の赤も、種を模した黒や白の点も、ガラスのビーズである。可愛かろ?
「見た目が可愛いから、ちっちゃい頃から愛用してて、どんだけ入るか、いっぱいにしたことないの」
「コハクに、似合ってるよ」
「ありがとう。お気に入りなの」
今は、こんなに育ちがよくて人当たりの柔らかいアレフなのに、いざ魔物と戦う時はキリッとして、頼りになるパーティのリーダーなの。
オンオフがはっきりしてるのね、きっと。
私の持ち物は、ふたつだけ。
このイチゴ型のマジックポーチと、青い夜光石のキラキラしたマジックロッド──通称『癒しの夜光石の杖』で、衣装は、お祖母さんお手製の『ゆるっと寝間着みたいな部屋着ローブ』
これを着てると、身体が軽くなった気がして、疲れにくいの。
お薬とか、着替えとか、お鍋や簡易コンロ、ポットや寝袋、そういった必需品はみんなこのポーチに入ってる。おやつのクッキーやチーズなんかもね。
そして、言ってないけど、子供の頃からの愛用品ゆえに、ちっちゃな頃からのお宝も入ってる。
誰にも見られない、盗まれない、安心できる隠し場所だから。
「そうだ、思い出した。アレフ、おやつにクッキー焼いてきたの、みんなで食べて?」
レース飾りに縁をカットしたペーパータオルに包んで、リボンでしばったものを手渡す。
「ありがとう。コハクはお菓子を作るのがとても上手だからね、楽しみだ」
🌻
にこにこ
🌻
……なんだろう、今から、二年間共に戦ってきた仲間に捨てられてお別れすると言うのに、この和やかな雰囲気は。
これも、アレフの人柄かな。
まあ、いいや。
ポーチから、撥水布のポンチョを取り出し、頭から被った。
「少しでも、気配は断った方がいいよね」
野生の獣の多い森の中を歩く時に振り掛ける、ニオイ消しのスプレーをかけた。
「用意いいわね」
「私は、身を守る技能は持ってないからね、急に襲われた時に、どんくさそうだと真っ先に狙われたりして、みんなに迷惑かけないように、いつも使ってるよ」
「まあ、この中では一番どんくさいわよね」
荷物の振り分けも済んで、お互いに身支度を整えたのを見届けると、アレフ達三人は、ダンジョンの奥へ向かって進んでいった。
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