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第一章 辺境の町
第178話 幻術耐性の魔道具
しおりを挟む早ければ明日からラグナードと合流するかもしれないので、まずは迷いの魔樹対策用に、幻術耐性の魔道具を買う。
先日、店主のマールさんに、パーティーメンバー連れて近々再訪すると約束していたのだが、思いの外早く向かうことになった。
メイン通りから一本外れた道を少し進んですぐのところに、お店がある。
お昼の時間帯だからか、ちょうど他にお客さんがいなかった事もあり、カウンターからすぐマールさんが出て来てくれた。迷いの魔樹討伐の話すると、喜んで相談にのってくれた。
さすがにこの町で長年、冒険者相手の商売をしているだけあってお詳しい。
奴らは、季節を問わず突発的に森の浅い部分まで出て来るらしく、毎年装備の整っていない新人冒険者が何人か犠牲になっているんだとか。
一度確認されると場合によっては侵略の期間が長引く可能性もあり、たとえすぐ収束したとしても森での活動を続ける限りはいつ出くわしてもおかしくないらしい。
手頃な値段で売っている使い捨ての魔道具より、効果が弱くとも継続的に使えるものを選んだ方がいいとのこと。
パーティーメンバーに人族以外の種族がいる場合は、サポートを受けられるからって。
「幻術耐性+1上昇」でも、あまり近くまで行かなければ十分役に立つとアドバイスしてくれた。
リノは他にも魔力と持久力に不安があるので、MP回復アイテムがあれば欲しいと言っていた。
ここしばらく乾燥させた水玉茸を毎日食べているので調子がいいらしいけど、魔力総量が増える訳ではないからね。
私の魔法の補助がなければ長時間の活動はまだ難しいとのことで、負担を減らす為にも自己強化をしたい、と。体力や持久力はMPに依存するからね。
幻術耐性とMP回復のどちらも重要だし、先に買うのはどっちにすべきか迷っていて、マールさんに相談したかったみたい。
「お嬢ちゃんが考えているよりずぅっと、人族は迷いの魔樹の幻術に弱いんだ。足手まといになりたく無いなら、まずは魔力の補強より幻術対策の魔道具を買っといた方がいい」
「……確かに今日、私は幻術に掛かったのを気付けませんでした。あらかじめローザに教えて貰っていたにも関わらずです。大分離れていたのに、抵抗出来なかったって……」
「そうだろ?」
あの時、本人には術に掛かっているという自覚が全く無かったんだよね。
特に何か匂いがするとか幻を見せられて誘われたとか具体的なものはなく、自然と意識が自分から切り離されて曖昧になっていく感じだったらしい。らしいと言うのはその曖昧さにさえ気づけて無かったから。
私も彼女が少しフラついた時にハッとして、とろんっとなった目を見て初めて幻術に掛かったんじゃないか……と気づけたぐらい。
それまでは正気に見えてたし、正確にどの時点で幻術の影響を受けたのかは分からなかったけど。手を繋いでなかったら、はぐれていたかもしれない……。
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