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第一章 辺境の町
第193話 戦闘中
しおりを挟む逃げてきた道筋で私達と鉢合わせし、びっくりしたのか一瞬動きが止まってしまったスモールトレント達。
焦ったように、すぐ根っ子を使ってピョンピョンと飛び跳ねながら、短い枝をバタバタ振り回して攻撃してきたっ。
うん、頑張って攻撃しているんだけど……届いてない。振り下ろした枝はリーチもスピードもなく、私達に当たることなく空振りしてしまい、ヨロけちゃってるね。
短い根っ子で踏ん張ろうとしてバランスを取り、なんとか転げないようにと必死でジタバタしているから隙だらけだし……う~ん。
――な、なんかその姿が魔物なのに可愛く見えてきて、困るんですけどっ。
ドジっ子みたいな戦い方に気が抜けそうになるけど、あんなでも魔樹の幼体なんだし油断しちゃ駄目だ。しっかり気合いを入れ直さなきゃ!
本来は物理攻撃じゃなく幻術攻撃が得意なはずなので、よっぽど相手に近づかないと命中しない短い枝での攻撃をしてくる内はあんまり脅威じゃない。スピードもないし。
当たっても根っ子と違って溶解液を出さないから、当たり所が悪くなければちょっと痛いだけで済むし。
それにラグナードに本体を倒されて慌てて逃げ出してきた個体達だからか、集団で連携して幻術を使うという、私達にとっては厄介な選択肢をとってこないんだよね。
むしろ、一体でも生き残ることに賭けているみたいで、他の個体が私達と戦い出したのに協力せず、その隙を突いて戦線から離れようと動き出すものもいる。
でも、こうしてバラバラに動くのならチャンスだ。
個別だと弱いし、本格的に逃げられる前に倒してしまおう。
スモールトレントも迷いの魔樹と同様に、魔鉄製の武器による物理攻撃と火魔法が有効だということなので、リノは新調した短剣で接近戦を、私は火魔法の『火弾』で逃げ出そうとする個体から先に遠距離攻撃をしかけながら、一体ずつ着実に数を減らしていった。
私達と彼とで、逃がさないように挟み撃ちにして討伐していき、やがて周りに動く小さな魔樹が居なくなり合流する。
動きは遅いのに、数が多かったので何体かは逃がしてしまった。それでもほぼ全て、討伐出来たと思う。
仕留めきれなかったのは残念だけど、まずは、全員の怪我がなかったことを喜ぼう。
「よしっ、終わったな」
「まだ後始末が残っているけどね」
「ですね……倒した魔樹と魔素溜まりの処理の方が大変そうです」
「この数だからな。手分けしてさっさとやるか」
あちこちに散らばったスモールトレントを迷いの魔樹の近くに集め魔石だけ抜き取ると、火魔法の『火炎噴射』と『消火』を使って、今後、新たな魔樹の苗床にならないように消し炭にしてしまう。
それから、迷いの魔樹が居座っていた魔素溜まりごと聖魔法で『浄化』し、土の中から聖魔水晶を取り出す。
ここまでしっかりした後始末をするには、どうしても留まる時間が長くなってくる。
必要なことなんだけど魔法もバンバン使っているし……やっぱりこうなっちゃうよね。
――まだ作業中なのに、他の魔物にロックオンされちゃいましたっ。
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