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第115話 目論見通り
しおりを挟む諸外国からの客人もいるパーティーで国王の許可なく婚約破棄を言い渡し、冤罪を訴えたこと。
背後関係が怪しい女に、禁呪の魅了魔法をかける隙を与え、踊らされたこと。
隣国のスパイと繋がりを持ったこと。
彼らの人脈づくりに利用され、結果的に資金提供もしていたこと。
貴族階級の子息を人身売買するような売国奴達と、深く関与したこと。
ランシェル達の罪を、一つ一つ挙げていく公爵。
淡々と告げられていく罪状に、青くなる彼らを見ながら言った。
「これが、一国の王子とその側近達がしたことだよ。全く、犯罪のオンパレードだね?」
改めて己の罪を思い知らされ、言葉もない王子達。
「今回の件は、事が大きくなりすぎた。隠し通すことは無理だ。よって、事実は曲げて伝えられることになるだろう」
これから、王を交えて話し合いが行われる。
恐らく公式には、ランシェル王子達がやらかしたのは、禁忌魔法による一時的な錯乱によるものだと発表させられるだろう。
公爵に推察を交えてそう告げられると、目論見通りだと思ったようだ。
(やはり国は、優秀な自分達に重い罰は与えられないらしい……)
何とか穏便に収まりそうだと思い、リアンがホッとしたように表情を緩めた。
王子達も、緊張から解放されたように肩から力を抜いている。
そんな彼の変化を視線の先で確認した公爵は、この期に及んで特権意識の抜けない男達を皮肉げに眺めた。
(全く、フワフワとしたおめでたい頭をしているものだ。この面談も査定対象だというのに……呑気なことだねぇ?)
「安心したかい?」
だがそんなことは微塵も見せず、優しく微笑んでみせた。
若気のいたりだ、仕方がないな……というような大人の態度をとって……。
「だからと言って、陛下が君達に何の処罰も与えないとは思わないことだね」
「はい、叔父上。分かっております。これからは国のため、誠心誠意尽くします」
「……結構。その決意、忘れないように」
「はいっ」
君達が進むのは茨の道になるのだからね、と心の中で呟いたランスフォード公爵だった。
今回、サリーナを通じて隣国に取り込まれかけたことで、ランシェル王子の評判は地に落ちるだろう。
大国の次期国王としての素質に問題のある人物だと、侮られることも覚悟しなければならない。
だが、そんな彼を王位に据えることでメリットもある。
帝国に恩を売って、内部干渉を抑えられるという利点が……。
つまりハワード王国は、これをもって完全に実権を取り戻せる。
ランシェル王子の失態が今宵、外国からの客人達を前に晒されてしまい、国内の帝国派も揉み消すことも出来ない状態なのだ。
廃嫡ものの愚行は、あっという間に周辺国へと広まるだろう。
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対外的には面目を保てるのだから……。
不祥事を起こした王子をゆくゆくは王座に据えるという約束は、引き続き守られている。
王国にはまだ、帝国の影響力があると噂されることだろう。
国内の帝国派閥共々、大人しくするしかない。
ランスフォード公爵は、目論見通り進んだ今宵の成果に満足していた。
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